第37期竜王戦(主催:読売新聞社)はランキング戦が進行中。1月15日(月)には1組の菅井竜也八段―伊藤匠七段戦が関西将棋会館で行われました。対局の結果、三間飛車対居飛車の熱戦を122手で制した伊藤七段が好スタートを切りました。

初対戦は「相石田流」

前期の竜王挑戦を受け5組からのジャンプアップを果たした伊藤七段は本局が1組デビュー戦。対する菅井八段は斎藤慎太郎八段を破っての登場です。両者の初手合となった対局は菅井八段の先手三間飛車に伊藤七段が居飛車持久戦で対抗する構図に進展しました。

駒組みの猶予を手にした菅井八段は攻撃陣の拡充に注力。石田流に組み替えたのは左辺一帯を支配する構想ですが、実戦はこれに対し伊藤七段が玉頭方面から手を作ったことで右辺一帯が主戦場に。伊藤七段は続いて飛車を3四の地点に振り直して手段を求めます。

伊藤七段が接近戦制す

中盤戦を振り返った菅井八段が自信なしと認めたように、伊藤七段の積極策が奏功し盤上は徐々に居飛車ペースに。1筋から端の逆襲を果たした伊藤七段は着々と先手玉への寄せの網を絞ります。千日手含みのやりとりののちに終盤の決め手が待っていました。

秒読みに追われる伊藤七段ですが最後は読み切っていました。角のタダ捨てで敵玉を危険地帯におびき寄せてから質駒の金を手にしたのが妙手順。この金を取り返すと先手玉には即詰みが生じます。終局時刻は21時32分、菅井八段の投了で熱戦に幕が引かれました。

一局を振り返ると双方の飛車の活躍の違いが明暗を分ける結果に。先手の飛車は最後まで7六の地点に残ったままでした。勝った伊藤七段は次局で木村一基九段と対戦します。

水留啓(将棋情報局)

  • 伊藤七段は直近10戦全勝、年度勝率78%と絶好調をキープ(写真は第52期新人王戦三番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

    伊藤七段は直近10戦全勝、年度勝率78%と絶好調をキープ(写真は第52期新人王戦三番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)