2023年3月31日にリリースした3枚目のアルバム『PORTALS』が全米2位を記録し、そのアルバムを引っ下げたワールド・ツアーが話題を呼んでいるメラニー・マルティネス。待望の来日公演がもうすぐやって来る。2012年のアメリカの人気TVオーディション番組『THE VOICE』の出演をきっかけにデビュー。音楽だけでなく、映像、ビジュアルでも自分のアートと物語を形にして、大ヒットしたデビュー・アルバム『CRY BABY』で、新時代のオルタナティブ・ポップ・スーパースターとしてカルト的人気を博したメラニー。『PORTALS』は死についてのコンセプト・アルバムとなり、新たな世界観、ビジュアル、音楽性を打ち出し、メラニーのアイコンであるキャラクターのCRY BABYも新たに生まれ変わることとなった。
ーもうすぐ来日しますが、今回のライブが日本では初となりますよね。どのようなライブにしたいと考えていますか?
オーディエンスとつながるための安全なスペースを作りたいと考えています。このライブの目標は、みなさんを異次元の体験に連れて行くことです。死、再生、変容といったテーマにアクセスしてもらって、魔法のようなビジュアルを通じて、みなさん自身が美しいものを創造できるようにインスピレーションを与えたいと思っています。
Melanie Martinez - VOID (Live from Lollapalooza Brazil 2023)
ー特に日本で見たいもの、訪れたい場所、経験したいことなどはありますか?
食たいもの、美味しいスイーツはたくさんありますね。私が一番楽しみにしているのは、庭園や自然の美しいところに行くことです。
ー最新アルバム『PORTALS』は、死と再生、その永遠のループがテーマになっていますが、このテーマを追求しようと思ったきっかけ、インスピレーションはありますか?
私は常に死について自分なりの理解を得たかったのです。他の人にとっては恐ろしいものかもしれません。多くの人が死を恐れ、少しでも若さを保とうとして、誰もがいつかは経験するこの出来事を避けようとしています。でもそれは私にとっては、もっと理解してみたい神秘的な現象なのです。この世に生まれてくることはあまりにも突然だし、恐ろしく思えることですが、誰もそういう風には話しませんよね。生まれてくることは美しいものと見なされるし、新しい始まりになりますが、私は死についても同じように見ているのです。それは変化であり、あなたを変えるものです。死そのものが生と同様に、新しいことを意味するものなのです。
Melanie Martinez - VOID (Official Music Video)
ーこのテーマのきっかけになったのは、催眠療法の本を読んだことですよね。本だけでなく、瞑想やセラピーなどは経験しましたか? アーティストとして活動していく上で、新たな気づきや理解はありましたか?
私はたくさんの瞑想をして、催眠状態を経験しました。そういうセッションを通じて、今生の経験と過去生の経験のつながりを知りました。自分を妨げるものがあったとしても、それは成長の機会だと見るようになりました。新しく得た知識は未来の経験に直接適用できるし、心が受けた痛みに自分が引き戻されることもありません。今の私は悲しみに浸るのではなく、自分の感情をより整理した形で見れるようになりました。アーティストとしては、そういった感情を言葉と波動を通じて表現できるわけですから、役に立っていると思います。
ーあなたにとってこれまでの「CRY BABY」はどういう存在でしたか? 何故『PORTALS』ではそれが終わらなければならなかったのでしょうか?
私にとってCRY BABYは、自分が子供時代に逃したものを表現するためのアウトレットでした。年を重ねるにつれて気がついたことがあって、1stアルバムを作ったこと、ビンテージの人形やぬいぐるみを集めたことは、音楽業界で早く大人にならなければならなかった状況から生まれたものだったのです。仕事に集中して、オーディエンスのためということにフォーカスしていると、個人的な成長が停滞することがあるのです。実際、私は何年もそれをやってきました。10代でTV番組に出演して、自分が何をしているのかわからないままだったので、今までの認識が変わるほど新しい体験になったし、急速に大人になった感じがしたのです。私がやりたかったことはただ音楽を作ることだけで。CRY BABYは、私が手放したくなかった私自身の一部だと思うのです。
ー『PORTALS』で見せた新しいキャラクターは、CRY BABYが生まれ変わったものですか?
CRY BABYと同じ精神ですが、異なる器に入ったものですね。これは彼女の死後の旅なのです。だからこれは地球における再生ではなく、死と再生の間の空間における存在なのです。
ーこのキャラクターのアイデアはどのようにして生まれ、形になりましたか? 肌がピンク色なのは、ピンクが特別な色だからですか? 目が4つあるのは、第三の目だけでなく、第四の目も開いたからですか?
このキャラクターは何年も描いてきたもので、彼女に生命を吹き込む方法を見つけたかったのです。素晴らしいSFXメイクアップ・アーティストであるマリナ・スターンズに連絡を取り、私が描いていたものに合うように、このキャラクターの造形について何度もやりとりをしました。マリナは素晴らしいアーティスト、協力者、友人であり、彼女と出会えたのは幸運だし、感謝もしています。ピンクは私の魂の色になりますね。キャラクターに複数の目を持たせたのは、私たち人間以上にものを見ることができるというのを示したかったからです。
Melanie Martinez - TUNNEL VISION (Official Video)
アーティストとしても、人としても、成長して新しいことをトライするのが好き
ー『PORTALS』の制作プロセスはどのようなものでしたか? 新しいキャラクター、音楽性、リリック、ビジュアルをどのように考え、結びつけましたか?
このアルバムは私にとっての再生だと思っています。今回はギターで曲作りをするという、初期の作曲スタイルに戻しました。多くの曲をギターで作曲した後、前の2枚のアルバムで行っていたストーリーテリングをこのアルバムにも結びつけて、ちゃんとつながりのある三部作にしようと思いました。ビジュアルに関しては、すでに自分の頭の中で完全なビジュアルを描いてから曲を作るので、簡単に出てきますね。タイトルについては、あらかじめリストにたくさん書き出しているので、曲作りの時にその日に取り組んでいるメロディやコードのエネルギーに合ったものを選びます。そこから、タイトルと曲のテーマに対して二重の意味を考えて、同時に多くの異なるレイヤーを持たせるようにしています。ソングライターとして、1曲の中に複数の意味を見い出すのは、チャレンジになりますね。でも、コードを解読できた時は大きな充実感を覚えるのです。
ー制作のプロセスにおいて、カタルシスや浄化のようなものは感じますか? あなたの音楽に救われたファンも多いと思いますが、そういうリスナーのことは意識しますか?
私はオンライン上でみなさんに、私にどういう曲を書いてほしいのかを尋ねるんですよ。彼らが何を経験してきたのか、私が音楽を通じてどのように彼らをサポートできるのかを知りたいからです。自分のオーディエンスを知ること、自分自身をどう表現するのかということ、その二つの間のバランスだと思うんです。私も最初はオーディエンスがいない状態で音楽を始めたわけで、彼らが私の音楽を見つけて共感してくれたのです。だからこそ、私は自分の表現を最優先にして、他人が私に期待することを考えすぎないようにしたいのです。私の音楽は進化も変化もするし、その変化に共感できない人たちは、私が以前と同じアーティストではないと感じるのですが、私はそういうのも好きなんです。私はアーティストとしても、人としても、成長して新しいことをトライするのが好きだからです。
ー『PORTALS』では自らプロデュースも手がけていますよね。どの曲にも様々な感情が込められていて、心地良いアンビエント感もあれば、ポップなアプローチ、シンプルに削ぎ落とされたサウンド、90年代のグランジを彷彿とさせるサウンドなど、実験的な要素が感じられます。今回、サウンド的にはどのように考え、どのようにアプローチして制作に臨みましたか?
私は今まで作ってきたものすべてにプロデュースの指揮をしていますが、自分で直接プロデュースしたものには非常に満足しているのです。それは私がミュージシャンとしてどこまでできるのかを示してくれるからです。自分で曲をプロデュースする時、私はまず頭の中で聴こえるメロディを基にトラックを作ることが多いです。今回、アルバム全体をCJ・バランと一緒に仕事をできたのは、とても楽しい経験でした。彼は私がプロデューサーとしての道を歩み始めるのを大いに励ましてくれました。彼は私にとって大きなインスピレーションであり、彼と一緒に制作できたことは感謝の気持ちです。
ーアルバムは1曲目の「DEATH」で始まり、ラストの「WOMB」で終わり、13曲に渡って、映画や旅のようなストーリーに感じられます。アルバム全体の曲順、流れ、コンセプトについてはどのように考えましたか?
前世療法の本、特に催眠療法セッションに関する本を多く読みました。死から生まれ変わりまでのストーリーラインを組み立て、そこに分析と二重の意味を反映させたタイトルをつけていきました。
Melanie Martinez - DEATH (Official Music Video)
Melanie Martinez - WOMB (Official Audio)
ーPORTALS Tourのライブ映像を観ると、オーディエンスがどの曲でもシンガロングしていますよね。新しい曲に対する反応はどうですか?
どの曲でもワクワクさせてくれるので、そのおかげで私は大きな笑顔になります。アルバムをリリースするたびに、みんなが曲を知らないのではないかと心配になりますが、すぐに曲を覚えてくれるので、いつも驚かされます。こんなに情熱的なオーディエンスがいると思うと、私の心は満たされますね。
ーあるライブのセットリストを見ましたが、『PORTALS』の曲だけで構成されていました。PORTALS Tourでは昔の曲はプレイしないのですか?
このツアーに関しては、サプライズを用意しているかもしれませんよ……。
ーPORTALS Tourのステージセット、衣装、振り付けはどのようなものですか?
まだライブを観ていない人には何も言いたくないのですが……。ただ言えることは、すべてが非常に魔法のようなものだということです。
ー『PORTALS』は三部作の最終章になるのですか?
『PORTALS』はCRY BABYの三部作の最終章です。未来のアルバムに向けて新しいアイデアを考えるのが今から楽しみです。
ー次は完全に新しいチャプターになるということでしょうか?
次に何をやるのかはまだ決めていません。私は時間をかけて人生を充分に楽しみたいので、曲作りに向けて新しい話題、新しい視点を持ちたいのです。未来がどうなるのか。確実に言えるのは、これ以降はCRY BABYの物語を続けるつもりはないということです。
ー最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。
ずっと行きたかった場所に行けるので、とてもワクワクしています。早くみなさんに会いたいし、会場でエネルギーを感じたいです。みなさんのサポートとクリエイティヴィティにとても感謝しています。どうもありがとう。すぐにお会いしましょう!!
<INFORMATION>
Melanie Martinez: PORTALS Tour
2024年1月19日(金)東京・豊洲PIT
開場18:00 開演19:00
お問い合わせ:ライブネーション・ジャパン
▼チケット料金(税込)
スタンディング:9,000円(整理番号付き)
※要別途1ドリンク代
※未就学児(6歳未満)入場不可