2024年が幕を開け、プロ野球のキャンプインまで早くも3週間を切った。
昨年、18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一まで上り詰めたタイガースは連覇という偉業に挑む。
レギュラメンバーはほとんどが生え抜きで、育成重視のドラフト戦略が「黄金期の入り口」という形で実を結びつつある。
戦力は盤石で、死角の見当たらないチームにあって今季のキーマンは誰なのか。本稿では、主力メンバー入りを目指し逆襲を期す投打の2人をピックアップする。
◆ “幻”に終わったレギュラーの座
2023年の開幕ショートは木浪聖也ではなかった。
小幡竜平にとって昨季は「いろんな経験をさせてもらった」1年。強肩を生かした高い守備力を岡田彰布監督に買われてプロ5年目で初めて開幕スタメンに名を連ねた。
ただ、サクセスストーリーはライバルの先輩・木浪の登場によって筋書きが大きく変わってしまった。
出塁もでき、勝負強さも兼ね備えた「恐怖の8番」として打撃で結果を残し続けた木浪が終わってみればシーズンを通して遊撃のスタメンを張った一方、小幡の先発出場は19試合。
「スタート(先発)で出る機会がなかったのはすごく悔しい部分。ベンチで見ていてずっと思っていたこと」と1年間、1軍に同行した経験よりも“幻”に終わったレギュラーの座に悔しさをにじませた。
木浪からポジションを奪うことは簡単ではない。
ただ、自身がやるべきことも明確になっており「やっぱり打撃。スタートで出るとなったら打撃も必要。そこが一番の課題」と今オフはこれまで以上にバットを振り込んで進化を期す。
それでも、自身のストロングポイントも磨き続けるつもりだ。
「(目指すのは)信頼されるショート。そういった面では(西武の)源田さんがお手本になるというか、難しいバウンドでも難しく見せない。そこは理想」
同僚からは「小幡のあの肩は魅力。ベンチに置いておくのはもったいない」という声もあがるほど。近いようで遠く感じたレギュラーに再挑戦する辰年の23歳が今度こそブレークを果たせるか。
◆ 期待に応えられなかった苦しみを力に
そしてここ2年、浮き沈みの激しい日々を過ごしたのが浜地真澄だ。
22年は自己最多52試合に登板して防御率1.14をマークし、層の厚いブルペンの中で頭角を現した。
だが、一気に勝ちパターンの一員へステップアップを狙った昨季は4度の2軍降格を経験するなど、30試合で防御率5.86。
右肩の不調にも悩まされ、クライマックスシリーズ、日本シリーズでは登録外で1年を終えた。
「期待も感じていたので、期待に応えられなかった」
飛躍した一昨年で「ある程度完成した」という投球フォームを、昨春のキャンプで改良。
向上心ゆえの挑戦だったが、微妙に歯車が狂ってしまった。
「客観的には失敗だったと思う」
今オフは右肩のリハビリを進めつつ、1年間安定したパフォーマンスを出すことに重点を置きフォーム作りをしている。
「すごい1年間苦しくて、こんな苦しい経験もなかなかできないなと。そういう経験ができたのは今後に生きるのかなと思います」
昨年味わった痛み、苦しみを自力に変え、浜地は巻き返しを狙う。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)