2024年1月18日に発売される『プリンス オブ ペルシャ 失われた王冠』は、広大な2Dマップを探索しながら物語を進めるアクションアドベンチャーゲーム。いわゆる「メトロイドヴァニア」と呼ばれるジャンルだ。
難易度は「見習い」「戦士」「英雄」「不死隊」「カスタム」の5種類。「カスタム」では、敵のHPや敵のダメージなど、項目ごとに難易度を設定できる。「見習い」より簡単にしたり、「不死隊」より高難易度にしたりできるだけでなく、「どうしても勝てない敵がいるけど、そこそこの歯ごたえあるバトルも楽しみたい」という自分のレベルに合わせた難易度にも調整可能。プレイヤーのわがままに応えてくれる仕様と言える。
プラットフォームは、PC(Epic Games Store / Ubisoft Store)/ Nintendo Switch / PlayStation 4 / PlayStation 5 / Xbox One / Xbox Series X|S。標準版の価格は6,600円、3日前からの先行プレイやスキンなど特典が同梱するデラックスエディションの価格は7,920円。なお、2,560×1,440(2K)、60FPS、グラフィック品質「高」の推奨システム要件は以下の通り。
CPU:Intel Core i7-6700 3.4 GHz、AMD Ryzen5 1600 3.2 GHz
GPU:NVIDIA GeForce GTX 960 (4GB VRAM)、AMD Radeon RX 5500 XT (4GB VRAM)
RAM:8 GB(デュアルチャンネル設定)
HDDの空き容量:30 GB
DirectXのバージョン:DirectX 11
OS:Windows 10/11 (64 bitのみ)
今回、ユービーアイソフトから『プリンス オブ ペルシャ 失われた王冠』のレビューコードをいただいたので、さっそくPC版(Ubisoft Connect)をプレイ。アクションゲームが得意ではないうえ、メトロイドヴァニアには初挑戦だが、標準的な難易度の「戦士」でスタートした。
探索しがいのあるカーフ山は広く、険しい
主人公は、ペルシャ王国に仕える戦士集団「不死隊」のサルゴン。ある日、ペルシャ女王トミュリスの息子であるガッサン王子がさらわれてしまい、その救出作戦として「カーフ山」へ赴く。カーフ山は、時間と知識を司るペルシャの守護神シムルグが住む場所だ。時間の流れが不自然で、さまざまな世界線が同時に存在する。
プレイヤーはカーフ山をあちこち探索しながら物語を進めるのだが、このマップがとにかく広い。どこまで行っても終わりが見えず、「下層街」「ヒュルカニアの森」といった新たなエリアが次々に現れる。その広さにはただ驚かされるばかりだ。
当然ながら、マップは行ったことのある場所のみ表示されるので、序盤は全体像を把握することができない。目的地はいったいどこにあるのだろうかと、途方に暮れることもあった。
しかし、草木が生い茂る自然豊かなステージがあれば、ダークファンタジー感が漂う不気味な空間まで、エリアごとに変化する風景が探索の疲れを吹き飛ばしてくれる。異なる敵やギミックも目に飛び込んでくるので、常に新鮮な気持ちでプレイできた。
ステージにあるギミックは豊富で、少し進むだけでもひと苦労。「ようやく進めたと思ったら、そのあと待ち構えていたトラップに引っかかり、復帰ポイントからやりなおし」ということもよくある。キャラクター操作に求められるスキルレベルは決して低くないだろう。
また、ストーリーを進めていくと、サルゴンは「弓」や「チャクラム」、「時の力」など、新しい武器や能力を手に入れる。特に「時の力」は、空中でダッシュできる「シムルグの猛進」、あらかじめ設置した分身の場所へテレポートで戻れる「シムルグの幻影」と、いくつも用意されている。
ステージの攻略に特定の武器や能力が必要なケースは多く、どうすれば進めるのか試行錯誤するのもおもしろい。序盤に通過した場所へ戻って注意深く調べると、「時の力」で開拓できる道を発見することもあるだろう。
たとえば、衝撃を与えると一定時間その周囲の対象の床や壁が出現/消滅する「鐘」のギミックがあるのだが、「シムルグの幻影」を使ってから飛び降り、上方向の鐘をめがけて矢を放った直後、トゲに落ちる前にテレポートし、鐘が鳴り止む前に駆け抜ける――。なんてシーンもあった。
「超高難易度の神業」が求められるほどのギミックはないが、全体的に「気を抜いたら失敗する」レベルのものが多く、アクションが苦手な筆者からすると、なかなか歯ごたえのある難所ばかりに感じられる。それゆえ、スムーズに突破できたときの喜びはひとしおだ。
一筋縄ではいかないバトル。森の女王「キアナ」がめちゃ強い
歯ごたえがあるのはアクションギミックだけではない。敵とのバトルも一筋縄ではいかない印象を受けた。
サルゴンの基本攻撃は双剣によるコンボ。これに、長押しによるチャージや、ゲージを消費して放つ「アスラ神技」のほか、弓やチャクラムなどを組み合わせて戦う。
敵の攻撃には、スライディングによる回避のほか、パリィのような「受け流し」を使って対応。「黄色い光」とともに放ってくる攻撃に対してタイミングよく受け流しを決めると、敵に大きな隙ができ、派手なアニメーション演出の反撃を行うことがある。
相手の攻撃モーションを見極めて、回避と受け流しをタイミングよく使う。そして、敵の動きが止まったときにダメージを与えていくわけだ。文字にするとシンプルだが、決して容易ではない。
特にボスとの一戦は手に汗握る。ソウルライクゲームやハンティングゲームなどをプレイした経験から、少しはアクションが上達したかと思っていたが、2Dアクションはまったくの別物。奥行きのない限られたスペースを瞬時に動くスキルが求められる気がした。物語を進めるほどスピードの速いボスが登場するし、矢継ぎ早に放たれる攻撃は避けるだけで精一杯だ。
まだすべてのボスと対峙していないが、個人的には森の女王「キアナ」とのバトルにはかなり苦戦した。こちらが攻撃できるのは、相手の連続攻撃直後のわずかな時間のみ。うっかり調子に乗って攻撃を続けていると、続く敵の攻撃を避けられずにダメージを受けてしまう。
しかも、大きな狼に乗り、武器を振り回しながら近づいてくる攻撃は、ジャンプしても越えられないし、スライディングの回避時間も足りない。どう考えても避けられないではないか。と、ムキになって被弾覚悟で突撃を繰り返しているうちに気がついた。もしかして、「シムルグの幻影」を使って避けるのかもしれない。
実際、回避は成功した。しかし、攻撃と回避に意識が持っていかれているなかで、事前に復帰ポイントを作成するのはなかなか難しいものがある。ボスの攻撃を避けるにも「時の力」が必須とは、やはり一筋縄ではいかない。
相手の残り体力に応じて変化する攻撃パターンも多彩だった。ようやくモーションを覚えたかと思ったら、新たな攻撃が次々にやってくる。30分近くリトライを繰り返したすえ、ようやく撃破できたときは、かなりの達成感があった。と同時に、次のボスはおそらく「キアナ」よりも強いのかと思ったら、戦慄を覚えた。
そのほか、ゲームでは、物語を進めるメインクエストのほかに、9つのサイドクエストが用意されている。探索の途中で突然出会う個性豊かなキャラクターたちは、冒険に彩りを添えてくれるだろう。
正直、マップの移動はけっこう大変だが、少ないヒントを頼りにあちこち行くのは探索の醍醐味でもある。しかも、リワードとして、冒険をサポートしてくれる装備品「アミュレット」が手に入ることもあるため、当然クリアするに越したことはない。
また、各地には隠された部屋や宝箱なども多く、くまなく調べていると、意外な発見がある。サルゴンのスキンといったアイテムの収集も探索のモチベーションになるはずだ。
探索しがいのある広大なマップに歯ごたえのあるアクションとバトルがおもしろい『プリンス オブ ペルシャ 失われた王冠』。特にボスバトルは標準の難易度でもなかなか苦戦を強いられるが、それでも気軽にプレイできるライトさもあった。その理由は、縦横無尽に動けるサルゴンのアクションの操作が快適だからかもしれない。
また、自由にカスタマイズできる難易度設定や、道に迷ったときにガイドを表示できるモードなど、プレイヤーの練度に応じた遊び方ができるのも、幅広いプレイヤーに支持されそうだ。とはいえ、アクションが苦手でも最初は標準難易度でチャレンジするのがオススメ。実際、筆者もメトロイドヴァニア初挑戦だったが、難易度「戦士」のまま、試行錯誤しながら攻略するギミックや、敵の攻撃モーションを覚えて対応するボスバトルに挑戦しているうちに、上達してきた気がする。何度もボスやギミックにチャレンジしてスキルアップしながら達成感を味わうおもしろさには、すっかりハマってしまった。