ハーレーダビッドソンの名車「FLH」をクロームでピカピカの近未来的なバイクに変身させる猛者が現れた。いったい何を思ってハーレーにギンギラギンのカスタムを施したのか。製作したLuck Motorcycles代表の杉原雅之さんに「ヨコハマホットロッドカスタムショー2023」の会場で話を聞いた。
エンジンとミッション以外は全てカスタム
京都府京都市で2000年にオープンしたLuck Motorcycles。代表の杉原さんはこれまでに国内のショーで多くの賞を受賞し、世界中のファンから注目される日本を代表するカスタムビルダーの1人だ。
ヨコハマホットロッドカスタムショー2023に出展したカスタムバイクはハーレーダビッドソンのFLH(1968年)がベース。杉原さんによれば、「ノーマルなのはエンジンとミッションだけで、あとはフレームも含め全て作っています」(以下、カッコ内は杉原さん)とのことだ。
こだわりぬいたガソリンタンクの造形
カスタムバイクのコンセプトとしては、「今回は極力ペイントせず、メタルワークで勝負しようと思ったので、ペイントなし、オールクロームで製作しました」と杉原さん。外装はほとんどが鉄製だ。その理由は「使われることが多いアルミはけっこう厚みのある鉄板を使うので、比較的ごまかしが効きます。でも、鉄はほとんどごまかしが効かないので、そこにチャレンジしたかったんです」とのこと。
言葉通りに受け取れば、あえて難しいことにチャレンジしていることになる。それでも鉄を使うメリットはあるのだろうか。
「やっぱり強度ですね。アルミだと、特にマウントなどは気を使わないと割れてしまうことがあります。例えばガソリンタンクやオイルタンクが割れてしまうと、やっぱり大きなトラブルなりますよね。そうしたトラブルを避けるためにも、僕がカスタムするときはできるだけ鉄を使うことにしています」
今回のカスタムで最も苦労したのもガソリンタンクだったそうだ。「今回は塗装なしなので、パテが盛れません。そのため、造形は全て溶接でひたすら手削りしています」というから、かなり手が込んでいる。
ガソリンタンクの差し色に使っている「ゴールドリーフ」にも工夫がある。
「これは少し変わった色で、リーフの中でも少し黒が入っています。赤いリーフだと浮き出すぎてしまうので、トーンを落としたリーフを選びました。この差し色がないと『クロームすぎる』ので、バイクがボケてしまいます。差し色はアクセントですが、全体を引き締める意味合いもあります」
カスタムバイク製作は3年待ち?
こんなバイクを所有してみたいものだが、Luck Motorcyclesでは現在、ベース車両の販売込みでカスタムを受け付けているという。今回の出展車両と同じバイクの製作を依頼すると、いくらくらいでできるだろうか?
「今回のモデルなら、だいたい700万円くらいです。ただ、実際に製作するとなると半年ほどはかかってしまいます。修理や車検など、バイク屋としての日々の業務もあるので、どうしても年間に作れる台数は5~6台ほどになります。ありがたいことに全国からお問い合わせをいただきますが、すでにお待ちいただいているお客様もおられるので全てはお受けできず、お断りしていることもあるのが現状です」
それだけLuck Motorcyclesのカスタムバイクの需要が高いということだが、今すぐ申し込んだ場合はどれくらい待つことになるのだろうか。杉原さんに聞いてみたところ、「はっきりとはお答えできませんが、最低でも3年はお待ちいただくことになると思います。でも、3年も経つとお客様の好みが変わってしまうこともあって、例えば去年作ったバイクよりも今年のバイクがよかったということも起こります。そういう時は、お待たせしてしまっている分、なるべく柔軟に対応するようにはしています」とのことだった。