米労働省が1月5日に発表した12月雇用統計の主な結果は、【1】非農業部門雇用者数21.6万人増、【2】失業率3.7%、【3】平均時給34.27ドル(前月比+0.4%、前年比+4.1%)という内容であった。

  • 12月雇用統計まとめ

【1】雇用者数

12月の非農業部門雇用者数は前月比21.6万人増と市場予想の17.5万人増を上回った。政府部門や娯楽・接客などの業種が雇用の増加をけん引。半面、運輸・倉庫では減少した。米労働市場の基調的な動きを捉える3カ月平均の雇用者の増加幅は16.5万人。10月と11月の雇用者数が合計で7.1万人分下方修正されたこともあって2021年1月以来の低水準となった。なお、2023年の合計雇用者数は約270万人となり、前年2022年の約480万人から大幅に減速した。

  • 米非農業部門雇用者数の推移

【2】失業率

12月の失業率は3.7%と、前月から横ばいとなった。市場予想は3.8%だった。フルタイムの職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は、前月の7.0%から7.1%へと上昇した。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は前月の62.8%から62.5%に低下した。

  • 米失業率と労働参加率の推移

【3】平均時給

12月の平均時給は34.27ドルと前月の34.12ドルから0.15ドル増加し、過去最高を再び更新した。伸び率は前月比+0.4%、前年比+4.1%。市場予想は前月比+0.3%、前年比+3.9%であった。前年比の伸び率は11月の4.0%から予想に反して加速した。

  • 米平均時給の推移

まとめ

米12月雇用統計は、ヘッドラインこそ良好な数字が並んだが、内容としては見た目ほどの好結果ではなかったことがわかる。まず、非農業部門雇用者数は12月に予想を上回る増加を記録したが、前2か月分が大きく下方修正されており、その結果3カ月平均の増加幅はほぼ3年ぶりの低水準にとどまった。さらに、労働参加率が大きく低下しており、職探しを辞めるなどして労働市場から退出した人が増えたことを物語っている。他方で、平均時給は前年比の伸びが加速しており、賃金インフレの根強さも窺えた。結果的に、市場では米連邦準備制度理事会(FRB)が3月にも利下げを開始するとの見方に大きな変化は生じなかった。米長期金利とドルは発表直後こそヘッドラインの良好な数字に反応して上昇したが、数十分後にはいずれも発表前の水準に押し戻された。米金利先物が織り込む3月利下げの確率は60%台での推移が続く。米利下げの是非を判断する上での次の材料として、市場の関心は1月11日に発表される米12月消費者物価指数(CPI)に向かっている。