帝国データバンクは、2023年に発生した「飲食店」の倒産動向について調査・分析を行った。集計期間は2023年12月31日まで。集計対象は、負債1,000万円以上の、法的整理による倒産となる。

  • 2023年の「飲食店」の倒産は768件で、前年から1.7倍に

2023年に発生した「飲食店」の倒産は768件発生し、過去10年で最も少なかった前年(452件)から1.7倍に急増した。

また、新型コロナの感染拡大に伴う緊急事態宣言の発出で休業や時短営業など経営環境が大幅に悪化し、事業の継続を断念した飲食店が多く発生した2020年の780件に次ぐ過去2番目の高水準を記録した。

  • 2023年の飲食店倒産、最多は「居酒屋」204件で年間最多を更新

飲食店の業態でみると、2023年の飲食店倒産で最も多いのは「居酒屋」で204件となり、夜間営業の休止などによる影響を大きく受けた20年の189件を上回って年間最多を更新した。

「家飲み」の拡大で居酒屋需要がコロナ前に戻らず、経営を支えてきた時短協力金など公的支援などが打ち切られたことで資金繰りが行き詰る個人商店の零細居酒屋で多く発生した。

ラーメン店や焼肉店などの倒産が増加した「中華料理店」(109件)、コーヒー豆の価格高騰などが打撃となった「カフェ(喫茶店)」(72件)でも過去最多を更新した。

  • 業歴10年未満が飲食店倒産の約4割を占めている

新規参入の障壁が低い飲食店では過小資本での開店も多く、開店後の事業計画や見通しが甘いケースも少なくない。

こうした中で、2023年の飲食店倒産はコロナ禍や人手不足、物価高など、当初の経営計画からは「想定外」の事態に直面し、経営体力が早期に限界に達し破綻したケースが多く発生した。業歴別にみると、2023年は業歴10年未満の飲食店が約4割を占めた。

  • メニューへの「価格転嫁」進むも道半ば、仕入・販売価格のギャップ開く

飲食店の倒産が増加した大きな要因の一つに、食材価格や電気・ガス代など「物価高」があげられる。仕入価格の上昇度を示す仕入価格DIは、食品の値上げが本格化した2022年以降、80を超える割合で推移した。

一方、販売価格への転嫁(上昇)を示す販売価格DIは60〜70前後で推移しており、仕入価格の上昇が販売価格への転嫁を上回った状態が続いている。足元ではメニューの値上げも進んでいるものの、頻繁な価格改定が客離れを招きかねないとの懸念も根強く、コストアップとの「我慢比べ」が2023年中により鮮明となった。

新型コロナによる行動制限が撤廃されたほか、訪日外国人の増加などで外食需要は緩やかな増加傾向が見込まれるなど、飲食業界の先行きには明るい要素も多い。

一方で、物価高や人手不足が原因で事業に行き詰まる飲食店が2023年に相次ぎ、自ら事業を畳む休廃業でも、飲食店は5年ぶりに前年を上回る見通しとなる。生活様式の変化で外食需要も大きく変化している中で、手厚い公的支援の期限切れとともに倒産や廃業の増加局面を迎えている。

足元では、物価高に加えて深刻な人手不足で店舗運営が困難になるといった影響も発生しており、飲食店を取り巻く経営環境は厳しさを増している。「人手不足倒産」も今後発生が見込まれる中で、飲食店の倒産は高水準で推移することが想定される。