おすすめのサツマイモ21選
ホクホク系の食感やねっとり系の食感、黄色や紫の肉色―。一口にサツマイモといっても、品種ごとの特徴はまったく異なります。そのため、好みや用途によって、サツマイモの選び方も大きく変わってきます。
それぞれの品種の特徴を解説していきますので、ぜひあなた好みのサツマイモを見つけてください!
べにはるか
近年の焼きいもブームの主役として人気の品種です。各地でブランド化もされており、オリジナルの名称で販売されていることも多いです。
かつては「ねっとり系のイモはまずい」という風潮がありましたが、その評判を一気に覆した、サツマイモ史に残る驚異的な品種です。
収穫直後のべにはるかはホクホクしていますが、貯蔵によりねっとりとした食感になります。強烈な甘さと濃厚な蜜感を味わえることも特徴。お店ではもちろん、家庭においても十分な甘さを楽しむことができます。
外観の良さや耐病虫性を兼ね備え、栽培も比較的容易であるため家庭菜園にもおすすめの品種です。
シルクスイート
ねっとり系で甘い品種の代表格として、べにはるかなどとともに消費者からの需要が高い品種です。
「シルク」の名の通り、繊維感が少なく絹のようになめらかな舌触りが特徴的。水分は多めな一方で柔らかすぎないその肉質は「しっとり系」と表現されることもあります。
甘みは強いのですが、ベタつかず、後味はきりっとしています。焼きいもにすると焦げの香りも相まって、干しぶどうのような芳醇(ほうじゅん)でフルーティーな香りを楽しめます。
サツマイモは国の機関により育成される品種が多い中、本品種は群馬県の民間企業であるカネコ種苗により育成されました。
ベニアズマ
ホクホク系の代表格として、主に茨城県や千葉県で生産されています。風味がよく、さまざまな料理に向くため、青果用サツマイモの主流品種として長い間人々に愛されてきました。
ホクホク系の品種の中でも、とくに塊状に崩れるような感触があり、食べ応えがほしい人にはぴったりの品種です。
食感はもちろん、優しい甘みは大学いもやコロッケといった和菓子・総菜への加工にも向いており、有名菓子店などでも用いられています。
サイズが大きく、ごつごつした形のイモになりやすいなど栽培面に難があり、さらに近年はべにはるかを筆頭としたねっとり系品種の人気に押されて栽培面積が減少していますが、まだまだ根強いファンも多くいます。
高系14号とその派生系統
1945年に育成された長寿の品種ですが、品種名の「高系14号」という名前で販売されることはほとんどありません。
「なると金時」(徳島県)や「五郎島金時」(石川県)、「宮崎紅」(宮崎県)など、西日本を中心とした各地でこの品種から選抜された系統がブランド化され、地域オリジナルの名称で販売されています。
その多くはホクホク寄りのしっとりとした食感で、繊維が少なくほどよい甘みもあることから青果用として人気があります。スーパーでは各地の高系14号やその派生系統が一緒に販売されていることも多いので、食べ比べてみるのも楽しいでしょう。
気になる「高系」という名前ですが、当時あった高知県農事試験場で育成された品種であることを示しています。
ふくむらさき
従来の紫いもは加工用として使われることが多く、味も黄肉色のものに比べて劣る品種が多く見られました。
しかしこのふくむらさきは、焼きいもなどのシンプルな調理でも甘くしっとりとしていておいしい、革命的な紫いもです。細長い形になりやすいなどの欠点はありますが、その味に注目が集まり、近年普及が進んでいます。
アントシアニン含量が多く、加熱するととても濃い紫色になるのに、紫いも特有のえぐみもありません。発色が良いのでお菓子の材料にしても映えますし、黄肉色の品種と並べたときの色の対比も魅力です。
安納いも
「安納いも」は品種名ではなく、種子島の安納地区に伝わる在来いもと、そこから選抜された「安納紅」や「安納こがね」といった品種の総称です。
安納いもの名で流通しているものの大半は皮が褐紅色の「安納紅」ですが、淡黄褐色の「安納こがね」もたまに見かけます。これらの品種はねっとり系サツマイモの先駆けであり、第四次焼きいもブームが始まるきっかけになったともいわれています。
甘みが強いだけでなく、濃厚な蜜感があり、コクのある味わい。フルーティーかつクリーミーな印象も覚えます。丸みのある形のものが多く、他のねっとり系品種と比べても少し風変わりで個性的な品種です。
種子島ゴールド
皮は白く、肉色は紫というインパクトのある配色です。安納紅や安納こがねと同様に、種子島の在来品種から選抜されて誕生しました。
さほど肉色の濃くない紫いもなので、調理後の色も明るく、鮮やかな色で奇麗です。食感はホクホクとしており、甘さはほどほど。
見た目のわりに強いクセはないので、変わり種品種にあまり慣れていない人でも食べやすいと思います。
べにまさり
主に茨城県で生産されている品種です。肉色は濃い黄色で、食感は粘質(ねっとり)寄りですが、柔らかくなりすぎず食べ応えも感じられます。べにはるかなど、王道の粘質品種と比べると優しく上品な甘みで、この味を特に好む方も多くいます。
また、今ある品種の中ではサツマイモ基腐病に比較的強いことが判明し、サツマイモ基腐病が多発している九州地方でも栽培が始まりました。今後の展開に期待です。
ひめあやか
収穫直後はホクホクで、その後しっとりからややねっとりとした食感になる品種です。しっかりと甘みがありつつ、香りもとても良く上品な味わいが楽しめます。主力品種とまではいきませんが、直売所や焼きいも専門店などではよく取り扱われています。
育成当時、小さめサイズのいもが多くできるという特徴から「ひめ」という名がつけられましたが、いざ普及してみるとそうでもなかった……という名前負け(勝ち?)している品種です。
すずほっくり
その名の通り、ほっくりとした粉質食感のサツマイモ。収穫後にしばらく貯蔵すると、ホクホクとした食感はそのままに、適度な甘みが乗り絶品です。「昔ながらの粉っぽいサツマイモが好きなの……」という方にも「最近の甘いサツマイモが好き!」という方にも、ぜひ一度食べていただきたい品種です。
名前の「すず」は、比較的小さめなイモが鈴なりにつくことが由来です。形は奇麗でそろいやすく、食べきりサイズでおやつにもピッタリです。
2016年に登場した比較的新しい品種で、直売所や焼きいも専門店などでも多く取り扱われています。近頃はホクホク系の品種が再注目され始めていることもあり、今後の普及に期待が持てます。
パープルスイートロード
千葉県で主に栽培されており、スーパーなどでも販売されている一般的な紫いもです。
ホクホクとした食感で、最近はやっている品種に比べると甘さは控えめですが、紫いもにありがちな独特のえぐみは全くなく、おいしい品種です。
肉色は淡い紫で、お菓子作りにも向きますし、サラダやスープの彩りにもおすすめです。 皮は鮮やかな濃赤紫色で、表面はつるつると滑らかで美しく、他の紫いもと見分けやすいです。
なお、名前の「ロード」は道(road)ではなく、王(lord)という意味です。ちなみに本品種を作る際には、5品種の花粉を混合したものが交配に使われたため、本当の父親が誰かは謎に包まれています。
クイックスイート
サツマイモといえば「低温でじっくり加熱するのが甘さを引き出すコツだ」とよく言われます。
しかし、このクイックスイートは一般的なサツマイモ品種とは異なる構造のでん粉を持っており、電子レンジなどによる短時間での調理でも甘くなりやすいという特徴があります。
生産量はそれほど多くありませんが、見かけた際にはぜひ、他の品種と同じ条件で調理をして食べ比べをしてみてください!
くりこがね/マロンゴールド
ベニアズマの突然変異により誕生したとされていますが、皮の色は白く、肉色はややオレンジ色でねっとり寄りの食感という、あまりベニアズマの面影がない形質の品種です。
肉色がオレンジ色の品種は、β-カロテンが含まれているためニンジンのような風味があることが多いですが、この品種は風味のクセが少なく甘みもあるため、初めて挑戦する方にもおすすめです。
鹿児島県のJAいぶすきが販売する場合は「マロンゴールド®」という商標名で、その他の地域で生産されたものは「くりこがね(栗黄金)」の名で販売されています。
ハロウィンスウィート
β-カロテンを含み、カボチャのような色と味が楽しめる品種です。早掘り適性があるので、名前の通りハロウィンの時期に食べることもできますし、もちろん秋が深まってからでも甘みが乗っておいしいです。
食感は水分が多めでねっとりとしています。高系14号から派生した品種とのことですが、よくある赤皮黄肉の派生系統たちとは異なる特徴をもっていて面白いです。
育成者は民間の種苗会社であるミヨシ種苗。販売者によって「ハロウィーン」「スイート」「スゥィート」など表記揺れがとても激しいですが、本当の名前は「ハロウィン」「スウィート」です。
しろほろり
その名の通り、皮と肉がともに白系の品種で、ほろほろと軽い粉質の食感が楽しめます。また、皮がつるすべ質感なのも特徴的です。
甘さはほどよく、昔ながらのサツマイモのような雰囲気に加えて、どことなく上品さも兼ね備えています。
しろほろりはハロウィンスウィートと同じく、ミヨシ種苗の育成品種です。比較的新しい品種ですが、認知度も上がってきており、直売所などで販売されていることもあります。
栗かぐや
シルクスイートと同じく、カネコ種苗が育種した品種。ホクホク系品種の新星として最近注目されています。
ホクホク系といわれるだけあって肉質はしっかりとしていますが、あまり粉っぽさはなく蜜感があるため、従来のホクホク系品種とは異なる印象を受けるかもしれません。
甘さがありつつ、しっかりとした硬めの食感のサツマイモが好み!という方におすすめです。
あいこまち
生産量はあまり多くありませんが、多品種を扱う焼きいも屋さんなどでは見かけることがあります。甘みが強く、形や色が奇麗な品種です。
食感は収穫後の貯蔵により変化しやすいようで、秋から初冬にかけてはほくほくからしっとりした食感ですが、その後はねっとりとろけるように変化していきます。
焼きいもとしてもおいしいですが、加熱後に黒変しにくい特性を生かし、お菓子やペーストなどの加工用に使われることも多いです。もちろん、ご家庭でのお菓子作りにもおすすめです。
アヤコマチ
サツマイモのイメージを覆す、鮮やかなオレンジ色の肉色が目を引く品種。特徴的な色はβ-カロテンに由来しており、同じくβ-カロテンを含むニンジンやカボチャのような風味があります。また水分が多く、食感はややねっとりとしています。
これまでオレンジ色の品種の多くはペーストやパウダーなどの加工用として使われていましたが、このアヤコマチは素材の形が残る青果用や総菜加工用としての活躍を期待されて誕生しました。
焼きいもなどでシンプルに味わうのも良いですが、ニンジンやカボチャの代わりにシチューや煮物に入れてみたり、蒸したいもをマヨネーズと和えてサラダにしたりするのもおすすめです。
コガネセンガン
鹿児島県や宮崎県など、九州地方を中心に栽培されています。芋焼酎の原料として有名ですが、いもけんぴなどの菓子原料にも使われており、さらに青果用としてもおいしいという、万能型の品種なのです。
焼きいもにするとサラサラときめの細かい粉感があり、穏やかでクセのない甘さを感じることができます。
収量の高さや用途の広さから、サツマイモの歴史に残る画期的な品種として位置づけられており、2021年時点では国内の作付シェアNo.1品種でもあります。しかし、現在九州で流行中のサツマイモ基腐病に弱く、最も大きな影響を受けているため、転換点を迎えています。
あまはづき
2021年に発表されたばかりのニューカマー。和菓子のような強い甘みと、もったりとした重めのねっとり食感を味わえます。肉色も鮮やかでムラがなく、美しい黄色です。
あまはづきは名前に「はづき(葉月)」とあるように、8月から収穫でき、しかも収穫直後から甘くねっとりとした焼きいもが楽しめるという特徴を持っています。
夏に収穫して冷やし焼きいもにしてもよし、秋に収穫してアツアツの焼きいもにしてもよし……。今後広く普及すれば、焼きいもブームもさらに盛り上がるかもしれません。
ゆきこまち
あまはづきに続き、こちらも2021年にリリースされた新品種。食感は粉質の品種ですが、ホクホクというよりは舌の上でサラサラとほぐれるような食感です。甘さは十分にありますが、口溶けのよい食感と相まって、繊細で上品な印象を受けます。
本来サツマイモは熱帯性の作物であり、日本における栽培適地も関東以南が目安とされてきました。しかし、このゆきこまちは寒冷地でも栽培しやすく、品質のよい耐寒性の品種として注目されています。近い将来、北海道がサツマイモの大産地になるかもしれません。
さまざまなサツマイモを楽しもう
サツマイモといえば、赤紫色の皮に黄色い肉色……というイメージが強いかもしれませんが、皮の色が白いものもあれば、紫いもや肉色がオレンジのものもあります。
また、食感は粉質(ホクホク系の食感)と粘質(ねっとり系の食感)に大別されますが、実際は二分されているわけではなく、グラデーションがあります。また、ホクホクやねっとりとは違う食感のものもあります。
このように、一口にサツマイモといっても、その特徴はまったく違います。おすすめの品種は、好みや用途によっても大きく変わってきます。ぜひこの記事を参考に、さまざまな品種のサツマイモを楽しんでみてください!
執筆協力:てるてる(花マル農園)