第73期ALSOK杯王将戦七番勝負(毎日新聞、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は挑戦者決定リーグを5勝1敗で駆け抜けた菅井竜也八段が挑戦者に決定。充実の菅井八段が振り飛車旋風を巻き起こすか、絶対王者に君臨する藤井王将が八冠の座を固めるか。注目の七番勝負は1月7日(日)に栃木県大田原市の「ホテル花月」で開幕します。

菅井八段の本命は三間飛車

両者の対戦はこれまでに14局あり藤井王将の10勝4敗(4千日手)。タイトル戦に関しては昨年4月に行われた叡王戦が目を引きます。この五番勝負で挑戦者・菅井八段は千日手局含む6局すべてで三間飛車を採用。うち4局で穴熊に組んで自身の土俵に持ち込みました。

菅井八段にとってもうひとつの主力が先手番での中飛車。三間飛車と比べると採用数は減少傾向ながら、2017年と2018年に藤井王将(当時それぞれ四段、七段)との対戦で連勝を挙げている戦型でもあり実戦投入も十分に見込まれます。

藤井王将の一貫した作戦選択

対する藤井王将は居飛車が濃厚。デビュー以来、角道を止める振り飛車には左美濃や居飛車穴熊といった持久戦策を主軸としておりじっくりした戦いが予想されます。この傾向に反して中飛車に対しては先後ともに舟囲い+超速の速攻策を好む点は見逃せません。

高勝率を誇る藤井王将にとっての懸念はこの中飛車との戦いで、2022年の菅井八段とのA級順位戦では中盤の競り合いでリードを許して敗北。先日公開された福間香奈女流四冠との非公式戦(王位・女流王位記念対局)では中央からの物量攻めに手を焼きました。

天下分け目の振り飛車戦

このように、両者の対局では菅井八段が繰り出す三間飛車と中飛車に藤井王将がどう対策するかという構図が見込まれます。主催紙によるインタビューに藤井王将は「中盤で離されないよう戦いたい」、菅井八段は「結果を残したい」と気合十分。注目の開幕局は1月7日(日)・8日(月)に栃木県大田原市の「ホテル花月」で行われます。

  • 菅井八段の4勝はいずれも先手番でのもの。開幕局の振り駒にも注目が集まる(写真は第36期竜王戦七番勝負第4局のもの 提供:日本将棋連盟)

    菅井八段の4勝はいずれも先手番でのもの。開幕局の振り駒にも注目が集まる(写真は第36期竜王戦七番勝負第4局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)