◆ 捕手陣
2024年のロッテは例年以上に、野手陣の競争、起用法の幅が広がっていきそうだ。
まずは捕手陣は昨季、田村龍弘がチーム最多の67試合で先発マスクを被り、佐藤都志也が次いで52試合で先発出場。田村、佐藤が併用できたことで、ルーキーイヤーの22年にチーム最多の70試合でスタメンマスクを被った松川虎生を昨季、ファームで実戦経験、試合後にウエイトトレーニングなどを行いパワーアップに充てる時間を作ることができた。
松川は「二軍でいた日々も一軍で出たいなとすごく心の中で思っていました。143試合しっかりチームに貢献できるように、レギュラーでマスクを被れるように」と意気込む。シーズン最終盤には一軍に昇格し、CSでは先発出場と、ポストシーズンも経験した。
1年目に佐々木朗希を完全試合に導くなど守備力の高さを見せていたが、打撃面でも昨季ファームで9月に月間打率.400(35-14)、5打点をマークし、シーズン終了後の秋季練習でもレフトへ力強い打球を数多く放っていた。出場機会を減らしたが昨季1年間で戦う体力をつけた。
近年、捕手併用のシーズンが続いているが、田村、佐藤、松川の3人をうまく使い分けていくのか、誰か1人がレギュラーを奪うのか、非常に注目だ。
◆ コンバートで競争激化か?
内野手も昨年2年ぶりにセカンド部門で中村奨吾がゴールデングラブ賞を受賞したが、ZOZOマリンスタジアムで行われた秋季練習ではセカンド・藤岡裕大、サード・中村がノックを受ける日が多く、今季は藤岡がセカンド、中村がサードに挑戦することが濃厚だ。
その秋季練習のノックでショートに入っていたのが今季2年目を迎える友杉篤輝。ルーキーイヤーの昨季は藤岡との併用で64試合に出場し、打率.254、9打点、14犠打、9盗塁の成績を残した。「とにかく全ての数字を今年(23年)を上回れるように。試合数も打率も走塁も全部の数字で上回っていけるように、今から準備していきたいと思います」。充実した2年目にするため、走攻守全てのレベルアップを誓う。
ショートのレギュラー候補は内野の全ポジションをこなせショートを主戦場にする茶谷健太、サード、セカンド、外野と幅広く守れる小川龍成がいる。茶谷に関しては昨季、藤岡、友杉が併用して出場していたため、ショートでのスタメン出場が12試合しかなかったが、レギュラー格の藤岡がセカンドコンバートとなれば、同じレギュラーを目指す立場の友杉との競争になる。オープン戦からのアピール次第では、ショートでのレギュラーポジション確保の可能性も出てきた。
新外国人のソトは一塁を主戦場にする。吉井理人監督はソトを獲得した際、球団を通じて「中軸を打ってくれる選手で勝負強く長打を打って打点を挙げてくれることを期待しています。現状は一塁とDHでの起用をイメージしています」とコメント。
一塁は昨季、チーム2位の14本塁打を放った山口航輝が最多の61試合にスタメン出場した。山口は一塁での出場が多かったが、本来は外野手登録の選手。中村がサードに本格転向となれば、ブロッソ―が加入した8月以降ファーストでの出場機会が増えたサードを本職にする安田尚憲もファーストで出場する可能性が高くなる。その他、18年と19年に24本塁打放った井上晴哉もいる。
ドラフト1位ルーキーの上田希由翔はサードを本職にしているが、入団会見で「いち早く一軍のピッチャーに対応して、即戦力として使ってもらいたいとあります。サードだけでなく、ファースト、外野も守れる準備をして今やっている」と、どこでも守れる準備をしている。
セカンドで不動のレギュラーだった中村も、これまでサードを守った経験があるとはいえ、コンバートとなれば、昨季の打撃成績では安田を含めた選手たちとの競争、併用も十分に考えられる。
内野のポジションを見ても、一塁(ソト、井上、茶谷、大下、山口、安田)、二塁(藤岡、茶谷、小川、池田)、遊撃(茶谷、小川、友杉)、三塁(中村、大下、小川、安田、上田)と候補者が多い。競争が熾烈になるだけでなく、今季の藤岡と友杉のように内野全ポジションでシーズン通して状態を見極めながら、起用することができそうだ。
◆ 激戦区の外野
外野手は最激減区。22年に盗塁王とリーグ2位の安打数をマークした髙部瑛斗が昨季は故障により一軍出場がなく、荻野貴司、角中勝也、岡大海、石川慎吾、愛斗、和田康士朗、藤原恭大、山口と一軍経験を積んできた選手は多いが、絶対的なレギュラーはいない。
荻野、角中、岡、石川といった一軍実績のある選手たちに頼りながらも、髙部の復活、和田、藤原、山口といった若手がレギュラーを掴んで欲しい。“常勝軍団”を築くのであれば、若手がレギュラーをモノにしなければならないというのが本音。
外野のポジションこそ、打たなければならない。レギュラーを目指す藤原は「やっぱり圧倒的な数字を残さないと出られない」と危機感を募らせれば、現役ドラフトで加入した愛斗は「守備面では、絶対的な自信が自分の中であるので、そこで信頼をまず得られたら。バッティングでも少しでも貢献できるようにやりたい」と決意。
和田も「バッティングはまだまだなので、しっかり2024年は最初からスタメンで出られるようなバッティングをしていきたい」と意気込む。
荻野、角中といったベテランに“おんぶに抱っこ”状態が近年続く外野陣。若手がベテラン選手から一軍で居場所を奪い取るくらいの打撃成績を残し、ベテラン組も若手に負けじと昨季のような打撃を見せてくれれば、高いレベルでの競争が見られる。
外野手に限らず今のロッテは絶対的なレギュラーはいないが、一軍で戦える選手は増えてきた。一軍で戦えるようになってきた若手、中堅のレベルが上がれば、自ずとチーム力は上がる。チームの競争力をあげるのは全員だ。
取材・文=岩下雄太