このハーレー、正面から見るとめちゃくちゃ細い。本来ならあるべきあのパーツすら付いていないようだ。重量級の存在感が魅力のハーレーを、なぜスリム化しようと思ったのか。オーナーの書道家・山口芳水さんに「ヨコハマホットロッドカスタムショー」で話を聞いた。
世界一細いバイク?
オーナーの山口さんは以前から「SR400」などに乗るライダーだったが、ハーレーダビッドソンに乗りたくて大型自動二輪免許を取得したという。
「大型自動二輪免許の取得を機に、『ディープディグ』というショップのビルダーが20年前に乗っていたハーレーの『アイアンショベル』(1976年)を購入しました。そこから、お互いがコラボレーションする形でカスタムしてきました」(以下、カッコ内は山口さん)
「ガロン」のコンセプトは「世界一細いバイク」。車幅はわずか46cmだ。なぜ、こんなにも細いバイクを作ろうと思ったのか。
「細いバイクのスタイルがすごく好きでしたし、大きなクルマの間をバイクがすり抜けていくアメリカの文化がカッコいいと思っていました。それが細いバイクを目指したキッカケですね」
独自の給油システムを搭載!
細さを追求するあまりの決断だったのか、「ガロン」からはガソリンタンクが取り外してある。このバイク、「ショーモデルではなく、実際に公道走行することを想定」してカスタムを進めているそうだが、タンクなしでどうやって走るのか。山口さんが考案したのが、車両右側に取り付けたオイルの空き缶からガソリンを供給する給油システムだ。
「これは車名の由来にもなりますが、オイルの空き缶にはガソリンがちょうど0.26ガロン(約1L)入ります。ガソリンタンクのように容量が大きいわけではないので、走行距離は10kmほどです。オイルタンクレス仕様にもしているので、エンジンオイルはシートを開けてリアフェンダーに入れるんです」
書道の美をカスタムバイクで表現?
随所にちりばめられたアンティークパーツも「ガロン」の特徴だ。
「今回のカスタムでは温故知新も大切にしました。アンティークパーツを使っているのもそうですし、エンジン腰上についてはビルダー所有の頃も含めて20年以上、1度も磨いていません。この自然なヤレ感がカッコいいと思うんです。メッキ部分は基本的に鏡面磨きをしていますが、ここだけは磨かないでほしいとビルダーに伝えました」
「文字を美しく見せる『書道の美』をずっと学び続けているのが私の強みなので、それをバイクにもいかしたい」と話す山口さん。その言葉通り、カスタムバイク「ガロン」は書道家としての独特な美的センスが光る仕上がりとなっている。書道では線の長さや太さ、角度、止め、払いなど、どんなに細かい部分もゆるがせにはできない。書道家の山口さんにとっては文字もバイクのパーツも、角度が0.1mm違うだけで違和感のもととなるという。
「あと0.1mmこうしてほしいなど、だいぶうるさく注文をつけたので、ビルダーさんからしてみればちょっと迷惑だったかもしれません(笑)。この晴れ舞台を目指して製作してくれたビルダーさんには感謝ですね」
書道の美的センスやアンティークパーツも使いつつ、その上で新しいものを作りたいという山口さん。今後は公道走行を目指して「ガロン」を仕上げていくとのことだった。