ロッテのキャプテン・中村奨吾 (C)Kyodo News

 「よくなかったです」。ロッテの中村奨吾は、今季1年間をこう一言で振り返った。今季は2年ぶりにセカンドのゴールデングラブ賞を受賞したが、137試合に出場して打率.220、11本塁打、48打点、52四球、出塁率.299と打撃成績は軒並み前年を下回る数字に終わった。

 苦しい1年に終わった中で、1度も一軍登録抹消することなく、チームトップの137試合に出場。チームキャプテンとして、1年間最前線で戦い抜いた。「キャンプが順調にいっていましたけど、それからいろんなことがあって、いい時期もありましたが、最後まで立ち直るというか、盛り返すことができなかったかなと思います」と振り返った。

 数字が上がらない中でも、無死二塁の場面では右打ちで走者を進めたり、送りバントを決めたり、二塁走者の時には外野フライで積極的に三塁へタッチアップを狙ったりと、数字に表れない貢献度を見せた。

 6月9日の広島戦、0-2の4回無死二塁の第2打席、床田寛樹が1ボール1ストライクから投じたストレートをライトへフライを放ち、二塁走者の藤岡裕大を三塁に進め、山口航輝のセンター前適時打に繋げた場面がまさにそうだ。

 「調子が上がらない中で最低限の仕事はと思ってやっていましたけど、そういうところももっとできたところもありましたし、う〜ん、全体的にあんまりですね」。

 その中で、今季苦しんだ原因はどこにあったのだろうかーー。

 「そうですね、いろんなことがあって、いろんな修正方法を試してみたり、バッティングコーチと一緒にいろんなアドバイスをもらってやってきましたけど、フィットしなかったというか、あまり続けなかったというのもおかしいですけど、うまくハマってこなかったというのは今年全体通してそういう時期が多かったかなと思いますね」。

 今季はシーズン中、普段使っているオレンジのバットだけでなく、黒茶のバット、白木のバットなど色々なバットで打っていた。それも試す一つだったのだろうかーー。

 「そうですね、自分の体のバランスに合わせて、こういうバットの方が合うんじゃないかと思って試したり、そういうバットを使うことでバランスが良くなったりということがあるので、色々試しながらやりました。よくないシーズンだったからこそ、いろんなことを試していやっていく中で、いいところでいえば引き出しも増えたシーズンだったかなと思いましたし、いろんな考え方も増えていったかなと思いますね」。

 “引き出しが増えた”、“考え方も増えた”、これはポジティブに捉えていいのだろうかーー。

 「まあそういう引き出し、考えが増えたことは、良かったところではありますけど、今にあった引き出しを出して修正していくというところができないと良くないと思うので、そういうところをもう1回状態に合わせて、修正できるようにこのオフ見つめ直してやっていきたいなと思っています」。

 自己犠牲の精神が強く個人よりもチーム、また個人のことをやりながら、チーム全体を見渡さなければならないキャプテンという立場に難しさもあるのだろうかーー。

 「そういうのはとくにはないですけど、チームとして戦って、チームが勝たないと優勝したいと思いでFAせず残留したので、今年出ているメンバーで言ったら、ベテランの野手2人を除いてですけど、一番試合に出させてもらっています。ここ何年も試合に出させてもらっているので、個人の成績を残さないといけないというのはそうなんですけど、チームのことを見ながらというのはやっていかないと。自分のことだけやっていても、という立場でもあると思うので、そういうのを意識しながらやっていました」。

 だからこそ、優勝したいという思いは強い。「打撃の状態があまり上がってこない中で、本当にチームに迷惑をかけることが多かった。自分が良いところで1本、調子が良ければ順位が変わってたかどうかはわからないですけど、状況が変わっていたのかなと思うので、もう1回このオフ自分を見つめ直して鍛え直していきたいと思います」。

 シーズン終了後に行われた秋季練習のフリー打撃では、「構えが変わったというか、いろんなことを試してみようと思ってやっています」と試しながら打っていた。

 その中でも、右足を突っ立ち気味にリラックスした構えで打っているのが印象的だった。中村は「そういう風に打ったり、オープンにして打ったり、試合がないのでいろんなことを試しながらやっています」と教えてくれた。守備でも10月30日の取材で「サードもやってみようという話もあるので」と、本職の二塁だけでなく、三塁でもノックを受けた。

 マリーンズファンは主力としての活躍を期待しているだけに、物足りないと感じたファンも多かった。熱いマリーンズファンの期待に応えるためにも、結果で見返すしかない。マリーンズで優勝したいという想いを持って残留した。来季はリーグ優勝、そして中村自身も過去最高の成績を残して、来年の今頃は今季があったから2024年の活躍があったと言える1年にしたい。

取材・文=岩下雄太