12月1日から3日までの3日間、愛媛県松山市の「坊っちゃんスタジアム」で大学日本代表候補選手の強化合宿が行われた。参加者は、全国から選ばれた投手18人、捕手6人、内野手12人、外野手8人の合計44人。内容はシートノック、フリーバッティングなど基本的な練習と、3チームに分かれて総当たりでの紅白戦3試合、50メートル走のタイム測定などだった。前回、前々回は、2024年のドラフト候補となる3年生について投手、野手に分けて取り上げたが、今回は、1、2年生の下級生で目立った選手を紹介したい。
◆ 一浪して筑波大に入学した右腕が躍動!
まずは投手から。スカウト陣へのアピールに成功したのが、国本航河(筑波大2年・名古屋)だ。高校時代、全く実績がないにもかかわらず、愛知県内で素材の良さが評判になっていた右腕である。
1年の浪人を経験して昨年、筑波大に進学。今年春にリーグ戦デビューすると、いきなり150キロを超えるストレートを連発し、関係者を驚かせた。今回の合宿では、紅白戦で2回をパーフェクトと好投。3年生も含めた18人の投手で、国本だけが、1人の走者も許さなかった。
ストレートの最速は、筆者のスピードガンによる計測で149キロをマークした。残念ながら、自己最速の155キロには及ばなかったものの、縦に腕が振れており、打者の手元で浮き上がるようなボールの勢いは素晴らしい。
課題は変化球だ。緩急をつけるカーブは腕の振りが緩み、スプリットなど速い変化球の精度はまだ高くはない。それでも、スケールの大きさは抜群であり、来春以降はエース格の活躍が期待される“逸材”である。
ボールの勢いで国本に負けない迫力を見せたのが、佐藤幻瑛(仙台大1年・柏木農)だ。高校時代は全国的に無名だったが、仙台大では1年春からいきなり先発の一角に定着する。
今年6月に行われた全日本大学野球選手権では、楽天からドラフト1位指名を受けた古謝樹(桐蔭横浜大4年・湘南学院)に投げ勝ち、一躍その名が全国に轟いた。
秋のリーグ戦は少し調子を落としていたが、紅白戦で2回、2奪三振、無失点と好投を見せる。来年の上位候補、西川史礁(青山学院大3年・外野手・龍谷大平安)に真っ向勝負を挑み、空振りの三振を奪った。
走者を背負っても球威が落ちず、カットボールをはじめ変化球のレベルが高い。来年以降、東北の大学球界を牽引する存在となる可能性は高いだろう。
その他の投手は、山口塁(国際武道大2年・横浜商)と稲川竜汰(九州共立大2年・折尾愛真)が無失点と好投し、力のあるところを見せた。
◆ 創価大のサードが圧倒的な存在感
一方の野手では、立石正広(創価大2年・三塁手・高川学園)が、圧倒的な存在感を示した。高校時代は3年夏、4番、サードで甲子園に出場し、初戦の小松大谷戦でセンターバックスクリーンに飛び込むホームランを放っている。
創価大進学後、1年春からリーグ戦に出場すると、今年春は打率.500、5本塁打、14打点で三冠王を獲得した。続く、全日本大学野球選手権は、チームが初戦で富士大に敗れるも、第1打席でいきなりライトスタンドへ運ぶ一発を放ち、長打力を見せつけた。
今回の合宿では、2試合目の紅白戦で、徳山一翔(環太平洋大3年・鳴門渦潮)と寺西成騎(日本体育大3年・星稜)という来年の上位候補からそれぞれツーベースを放った。続く、第3打席は、チャンスの場面でしっかり犠牲フライを放ち、対応力の高さを見せている。
高校時代と比べて、体つきが一回り大きくなり、鋭く体を回転させてヘッドを走らせるスイングは迫力十分だ。フリーバッティングでも、たびたびホームラン性の当たりを放ち、サードの守備では強肩が光る。チームが所属する東京新大学リーグでは、既に頭一つ抜けた存在になりつつある。厳しいマークの中で、さらに成績を伸ばせるかに注目だ。
松川玲央(城西大2年・遊撃手・関西)が、圧倒的な存在感を示した。大学では1年春から不動のショートに定着し、今年は、首都大学野球リーグの一部昇格に貢献した。初の一部でのプレーとなった秋のリーグ戦は、打率.327、8盗塁をマークして、ベストナインに輝く
今回の合宿では、野手全員で行われた50メートル走(光電管を使用し、スタートは各自のタイミングで実施)で、全体トップとなる5.88秒をマークしている。182センチの長身で、ストライドが長く、どんどん加速するようなランニングは迫力十分だ。
紅白戦ではヒットこそ出なかったものの、四球で出塁するといきなり盗塁を決めたほか、ショートの守備で軽快なプレーを見せた。打撃、守備、走塁全てに見どころがある大型ショートだけに、今後、さらにスカウト陣の注目を集めそうだ。
捕手では、渡部海(青山学院大1年・智弁和歌山)、小島大河(明治大2年・東海大相模)、小出望那(大阪産業大2年・大産大付)が揃って、高い守備力を披露した。現在の3年生捕手は有力候補が少なく、彼らが大学日本代表の正捕手争いに加わることも十分に考えられる。
大学日本代表を指揮する堀井哲也監督(慶応大監督)は、春以降のプレーで、代表候補に浮上する選手にも期待していると話していた。今年は、西川史礁(青山学院大3年・外野手・龍谷大平安)が春のリーグ戦でブレイクを果たして、一気に大学日本代表の4番に上り詰めている。今回、招集されなかった選手からも、驚きの成長を見せる存在が出てくることを期待したいところだ。
文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所