近年、目に関する新たな論文が発表されるなど、目のケアに関する常識もアップデートされつつあります。
目薬以外にも、食事や入浴など、私たちが普段の生活で気を配れば「目にいい」生活を送れるのです。具体的にどうすれば私たちの大切な目を守れるのか。その方法をレクチャーします。
意外な事実! ブルーライトカットに意味がない
「目によい」ということで、ブルーライトカットのメガネを使用している方も多いことでしょう。
確かに、パソコンやスマホを長時間見続けると、目が疲れてしまいます。1~2時間パソコンで作業をしたら、5~10分間、遠くを見たり、「スマホは1日2~3時間まで」などのルールを設けたりすることをおすすめします。
仕事でどうしてもパソコンやスマホを長時間使わないといけない人に、「ブルーライトカットのメガネにすれば、何時間でもいいでしょう?」と聞かれることがありますが、これは意味がありません。ブルーライトカットメガネには、目を「守る」機能はないからです。
オーストラリア・メルボルン大学の研究によると「ブルーライトフィルター付きめがねレンズを使っても、短期的にはメリットがない可能性があることが分かった」とのことです。
ただし、ブルーライトカットのメガネは、交感神経が優位になるのを抑えます。夜に使えば不眠の予防になるので、「目にいい」効果がないわけではありません。寝不足になると眼圧が上がり、緑内障になるリスクが上がるからです。
湯船につからずシャワーで済ます人は、目がよくならない
「目をよく」するためには、副交感神経を優位にすることが重要です。涙の量を増やしたり、体のすみずみまで血流を促したりするからです。
副交感神経は、心と体が「休息モード」になったときに優位になるので、入浴と睡眠は、目にとって最良の時間となります。
特に入浴は、体が温まることで血流がよくなり、疲労物質が排出されて疲労回復を促すほか、浮力によるリラックス効果もあります。シャワーで済ませず、湯船に浸かりましょう。
以下、「目によい」入浴法を具体的にご紹介します。
温水浴
ぬるめのお湯に、ゆったりと浸かりましょう。お湯が熱いと交感神経を刺激するので、38℃くらいがいいでしょう。
入浴剤やエッセンシャルオイルの使用
リラックス効果のある入浴剤やエッセンシャルオイルを使うと、さらによいでしょう。副交感神経を刺激する、ラベンダーやカモミールなどの香りがおすすめです。
打たせ湯やシャワーでの刺激
湯上がりには、打たせ湯やシャワーで頭や首に水を浴びましょう。交感神経を刺激することなく血行が促進されます。
環境を整える
リラックスできる音楽を流したり、照明を少し暗くしたりして、バスルームを落ち着く空間にしましょう。副交感神経を優位に導いてくれます。
入浴時間
長風呂は交感神経を刺激するので、入浴時間は15~30分程度にしましょう
揚げ物やスナック菓子は目の大敵
健康な体に「よい食事」が大切であるのと同様に、「よく見える」健康な目を手にするためには、「目によい食事」が必要です。
生活習慣病と同じく、老化物質である「活性酸素」は目にも大敵です。活性酸素は、肉や揚げ物、スナック菓子、加工食品に含まれる「飽和脂肪酸」の摂り過ぎや、タバコやアルコールの過剰摂取、目から体内に入る紫外線から生成されます。
では、目によい栄養素を含む食べ物とは、どんなものでしょうか? 以下、ご紹介します。
ブロッコリー、ほうれん草、かぼちゃ
水晶体や黄班にある「ルテイン」が豊富。緑内障の改善、白内障の予防に効果があります。
ブルーベリー、ぶどう、ナス
抗酸化作用がある「アントシアニン」が豊富。活性酸素を除去・抑制するので、眼精疲労や視力低下を予防します。
さけ、いくら、カニ
強い抗酸化力を持つ「アスタキサンチン」が豊富。目のピント調節を助けます。
にんじん、かぼちゃ、レバー
「ビタミンA」が豊富。涙を保持する粘液を守り、ドライアイを改善します。夜盲症の改善にもつながります 。
イチゴ、キウイ、ジャガイモなど
水晶体に一番多く含まれている「ビタミンC」が豊富。酸化防止作用があり、眼精疲労の改善や白内障の予防に効果があります。
目は冷やすより、温めた方が効果的
「目が疲れた」と感じたときに、いつでも仮眠ができて目を休めることができる、恵まれた環境の人は少ないでしょう。そこでおすすめしたいのが、ホットアイマスクです。
ホットアイマスクとは、その名のとおり「温かいアイマスク」です。じんわりと目が温まる気持ちよさで、心も体もリラックスできるので、副交感神経が刺激されます。目の部分だけを温めるので、手軽にできます。
さらに、ホットアイマスクで目を温めることで血流が促され、目の筋肉の「コリ」がほぐれ、眼精疲労も軽減できます。また、涙液の油分バランスを整える「マイボーム腺」のケアにもなるので、ドライアイの予防や解消にも効果があるのです。
市販の「ホットアイマスク」や、電子レンジで温めて使う「小豆入りのアイマスク」がなければ、蒸しタオルで代用できます。1日に何回やってもOKですが、肌が弱い人は1日2回程度にしましょう。
寝る前スマホは目にも脳にもNG
交感神経は、心と体が休んでいるときに優位になるので、自律神経の乱れを整える、一番簡単で有効な方法は睡眠です。
目をつむると、視覚から入る刺激が遮断されるので、目にも脳にも休息をもたらします。ただし、最近若い人の間で増えているリラックス法「寝る前にベッドでスマホ」は、おすすめできません。心は癒やされても、目と脳が覚醒してしまうからです。
寝る前は、スマホを見ずに、なるべく外界からの刺激を遮断する方がよいでしょう。
著者プロフィール:松岡俊行(まつおか・としゆき)
医学博士。眼科専門医。
1992年京都大学医学部医学科卒。1996年京都大学大学院研究科、2001年10月、ロンドン大学UCL(University College London)客員研究員。京都大学大学院在学中に「Science」に、ロンドン留学中に「Nature」に論文掲載。2008年、京都大学 大学院 医学研究科准教授。