モイセエフ・ニキータ(左)、佐宗翼(右上)、ラマル・ギービン・ラタナヤケ(右下)  (C)Kyodo News

◆ アマチュア担当記者が推す来春センバツの注目選手

 球春到来が遥か遠く感じる年の瀬とはいえ、高校球児は選抜出場を逆算した調整を進めている。

 秋の日本一を決める11月の明治神宮大会高校の部では、星稜が32年ぶり3度目の優勝を果たした。

 開幕時点では来秋ドラフト候補に挙がるような注目選手が少ない印象を受けていたものの、終わってみれば選抜での再会が楽しみな選手が数多くいた。

そこで今回は、来春の選抜出場を確実にしている明治神宮大会出場校から甲子園で注目したい選手を“どこよりも早く”を紹介したい。

■ 豊川・モイセエフ・ニキータ/2年/外野手/左投げ左打ち

 今秋の明治神宮大会で最も知名度を上げた選手がモイセエフだった。

 高校通算13本塁打の打力だけでなく、走攻守三拍子そろった外野手だ。

 明治神宮大会初戦の高知戦では、6回一死一・二塁で好右腕・辻井翔大のスライダーを右翼線へ運ぶ適時二塁打、5―6の9回一死一・三塁では確実に右犠飛を決めて延長戦に持ち込む勝負強さを見せた。

 星稜との準決勝では0―1の初回二死無走者から高め直球を右翼ポール際への同点ソロにする長打力も披露した。

 さっそくNPBスカウトも騒ぎ始め、視察した中日の清水昭信スカウトからは「(今大会の中で)打力は頭一つ抜けている。順調に成長しているし、楽しみです」と高評価を受けた。

 愛知出身で両親はロシア人。少年野球時代から全国大会に出場した好素材とはいえ、注目を集め始めたのは今秋からと言ってもいいだろう。

 中学卒業時点で体重66キロの細身でパンチ力が備わっていなかった。

 高校から本格的に肉体強化に取り組み、身長180センチ、体重82キロと体格が変わった。

 すると、高1終了時点で0本だった高校通算本塁打は、神宮大会終了時点で13発にまで積み上げた。

「高卒でのプロ入りが目標です。(ソフトバンク)柳田選手のような豪快なスイングで楽しませられる選手になりたいです」

 今秋の東海大会決勝では愛工大名電が外野4人態勢を敷いたほどに打力の成長は著しい。今冬の成長次第では、来春選抜で誰もが知る話題の選手になり得る可能性も秘めている。

■ 星稜・佐宗(さそう)翼/2年/投手/左投げ左打ち

 明治神宮大会優勝に導いたエース左腕は、夏から秋の短期間で飛躍的な成長を印象づけた。

 元々、経験は豊富だった。

 1年夏から甲子園で登板し、今夏の甲子園では敗れた初戦の創成館戦に2番手として登板して、4回2/3、2安打無失点と好投した。

 その投球内容はスライダー、カーブ、チェンジアップ、ツーシームの計4種類の変化球を操りながら打者を翻弄(ほんろう)するもので、夏までは技巧派投手の印象を持っていた。

 それが新チーム結成後に直球が見違えるように成長した。

 夏の甲子園で137キロだった自己最速は北信越大会で141キロ、明治神宮大会では142キロを計測。登板を重ねるごとに直球の伸びが増した。

 明治神宮大会では初戦の広陵戦では本調子ではなく11安打を許しながらも、6失点(自責4)完投勝利で優勝候補を撃破。本領を取り戻して迎えた決勝では、強打の作新学院から8奪三振を数え、6安打1失点での完投勝利を挙げた。

「直球の強さと制球力の向上を意識して取り組んできました。広陵のような打線にも制球さえミスしなければ長打を打たれなかった。ストライクゾーンに投げていければ、球数少なくやっていけるのかなと感じました」

 最上級生になった今秋から名門の背番号1を背負う。

「競争をしながら、先輩後輩関係なくアドバイスし合えるのが星稜のいいところだと思います。そういう関係性の中で切磋琢磨して、ここまで成長できたと思います」

 非凡な才能が来春選抜でついに開花のときを迎えようとしている。

■ 大阪桐蔭・ラマル・ギービン・ラタナヤケ/2年/内野手/右投げ右打ち

 両親がスリランカ出身で、2年夏から最強軍団の4番に座る強打の三塁手である。

 今秋の公式戦では計5本塁打と格の違いを披露。明治神宮大会終了時点で高校通算28本塁打を数えたように一発長打が最大の魅力だ。

この非凡な長打力に確実性も備わってきた。

 明治神宮大会では初戦の関東一戦で三塁打、適時二塁打と2安打を放って迎えた8回に初球の直球を右中間への2ラン本塁打とした。

 1打席目は低めのチェンジアップに空振り三振。今夏までは低め変化球の対応に苦戦していたものの、この一戦では2打席目以降に修正して3安打3打点につなげた。

「打席の中で余裕を持つことで、球を捉えられるようになってきました。それで長打が増えたかなと思います。打てるゾーンだけ待っていて低めは見逃す意識で、投手を上から見下ろすようなイメージで打席に立っています」

 明治神宮大会の初戦で適時失策となる悪送球を犯したように守備を課題としている。

 それでも西谷監督が根気強く三塁起用を続けるのは、期待の大きさに他ならない。

 冬の鍛錬を経て、打撃だけでなく守備にも安定感が備わったとき、大阪桐蔭の付け入る隙は限りなく少なくなりそうだ。

文=河合洋介(スポーツニッポン・アマチュア野球担当)