責任感を持って成長を求めてきた世代が、市立船橋に6度目の全国高校サッカー選手権大会優勝をもたらす。
市立船橋の選手権優勝5回は、帝京(東京)、国見(長崎)の6回に続き、戦後3位の優勝回数だ。だが、FW和泉竜司(現:名古屋グランパス)を中心に2011年度大会で日本一に輝いてから12年間、頂点から遠ざかっている。
その間、インターハイでは2度優勝し、高円宮杯プレミアリーグEASTでは初昇格した2015年から一度も降格することなく“高校年代最高峰のリーグ戦”で戦い続けている。名門校は全国トップクラスの力を維持しているが、市立船橋に求められるのは選手権での全国制覇。MF太田隼剛主将(3年)は「勢いもあるし、今年のチームは日本一を狙えると思う。自分たちが結果を残していかないと今後の強い市船はない」と強い責任感を持って千葉県予選に臨み、全国切符を勝ち取った。
今年は、千葉県予選決勝で3得点のU-18日本代表FW郡司璃来(3年、清水エスパルス内定)や精神的支柱で攻守の要でもある太田、大会屈指の両サイドバックである右のDF佐藤凛音と左の内川遼(いずれも3年)ら下級生時からプレミアリーグなどで経験を積んできた選手の多い世代だ。
チーム発足時に掲げた目標はインターハイ、プレミアリーグ、選手権の三冠。だが、インターハイは大津(熊本)との激闘を制すなど勝ち上がったものの、準々決勝で日大藤沢(神奈川)に苦杯を喫した。球際、切り替え、運動量の三原則で相手を上回ることができず、焦りも出て無念の敗退。プレミアリーグも前期をわずか1敗で乗り越えたものの、勝ち切れない試合が多く、最終的に8勝10分4敗の5位でフィニッシュした。
それでも、前回優勝の川崎フロンターレU-18(神奈川)に0-2から逆転勝ちするなど、ラスト6試合を4勝1分1敗。最終節でメンバーを大きく入れ替えた流経大柏(千葉)戦も0-0で終えている。波多秀吾監督が千葉県予選の最中に「選手たちが自分たちでいろいろなことができるようになったというのは大きいですかね。試合の準備、相手の分析もそうですし、どう戦うか、ゲームの中での判断も、選手たちで自立して戦えるようになってきた」と語ったように、勝つため、強くなるために、選手たちは細部までこだわりながら成長を続けてきた。
今年は太田や佐藤をはじめ、技術力の高い選手が多く、ボールを保持して主導権を握る試合が多い。また、ボールを奪い切る力、ゴール前の粘り強さは伝統的な強み。そして、得点王候補の郡司という“スーパーエース”もいる。優勝候補の一角であることは間違いない。
それでも、郡司は選手権開幕を控え、「結果で応えたいという思いは強いですが、(日本一は)簡単には取れないと思う」と指摘し、より成長して全国大会を迎えることを求めていた。向上心と責任感を持つ世代は満足することなく、一戦一戦に集中し、6試合を勝ち抜く。
取材・文=吉田太郎