明秀日立は自分たちだけが可能性を持つ夏冬連覇に本気で挑戦する。
かつて、同年度のインターハイと全国高校サッカー選手権大会でいずれも日本一に輝いたのは、藤枝東(1966年度)、浦和南(1969年度)、東福岡(1997、2015年度)、国見(2000、2003年度)、青森山田(2021年度)の5校だけ。2018年度インターハイ優勝の山梨学院、2019年度インターハイ優勝の桐光学園が、いずれも同年度の選手権予選で敗退しているように、夏の全国王者が冬の全国舞台に戻ってくることも、もちろん、全国大会で勝ち上がることも簡単なことではない。今年度、その夏冬連覇という難関に明秀日立が本気で挑んでいる。
明秀日立は4度目の出場だった今夏のインターハイで初優勝。これまでベスト16が最高成績だったチームが、勝つためのベストの準備と自分たちの強みである強度、状況に応じた技術力と判断力、試合終盤に見せる勝負強さなどによって、一回戦で優勝候補の静岡学園を破ると、三回戦でも同じく優勝候補の青森山田を撃破した。強敵に勝った後の試合を大事に戦った明秀日立は初の準々決勝、準決勝も突破。決勝では桐光学園とのPK戦を制し、1979年の水戸商以来、茨城県勢44年ぶりとなる全国制覇を果たした。
選手権まで順風だった訳では無い。インターハイ後に主力DF山本凌主将(3年)が長期離脱。また、選手権予選準決勝では試合終盤までリードされる展開だった。決勝もインターハイで大活躍のMF吉田裕哉(3年)が出場停止。それでも、1年間を通して総合力を高めてきたチームは、崩れなかった。予選途中に復帰した山本やFW石橋鞘、GK小泉凌輔、DF長谷川幸蔵、FW根岸隼(いずれも3年)らの個の力も活かし、全国切符を獲得。優勝後、山本は「インターハイで日本一になっているので、全国でも日本一以外で満足することはないので、もう一度日本一になれるように練習からもう一段階上げていけるようにしたい」と語っていた。
今までは全国大会に出ることが目標になりがちだったというが、高校卒業後の先を見据え、質の部分にも、よりこだわってきた。「勝てば何でもいいよねではなく、質を上げていくということはすごく意識しています」と萬場努監督。うまくいかない回数もまだまだ多いが、意識して取り組んできたことは選手権でも力になるはずだ。
萬場監督は全国大会へ向けて「みんなで目線を合わせる大切さを学んできたつもりでいるので、1試合にみんなでコミットして、それに集中することに楽しみたいなというのを(決勝まで)6回くらい繰り返したいという思いがあります」。そして、「まぐれでもいいから(笑)」2つ目の全国タイトルへ。歓喜の夏以降も切磋琢磨しながら成長してきた明秀日立が、冬も歴史を変える。
取材・文=吉田太郎