2年ぶりに全国高校サッカー選手権大会に出場する静岡学園は、今年も伝統のテクニックとインテリジェンス、這い上がってきた選手たちの力が光る。今年は高円宮杯プレミアリーグWESTで最高成績となる3位。前半戦を8勝2分1敗の快進撃によって首位で折り返すなど、“高校年代最高峰のリーグ戦”で年間を通して優勝争いを演じた。
昨年のエースMF髙橋隆大(現:奈良クラブ)のような特別なドリブラーや、同主将のDF行徳瑛(現:名古屋グランパス)のような攻守のセットプレーなどで違いをもたらす存在はいない。それでも、昨年からゴールを守るU-18日本代表GK中村圭佑主将(3年)が、数々の好守でチームに勝ち点をもたらし、10番MF高田優、MF福地瑠伊、MF森﨑澄晴(ともに3年)の3人を軸としたグループでの崩しなどでチャンスの数を増やした。
そして、昨年までは“守備的FW”と評されていたU-18日本代表FW神田奏真(3年)の得点力が覚醒し、連発。課題と向き合い、シュートの質や空中戦での強さを向上させたFWは、前半戦の11試合で12得点をマークし、首位ターンの原動力となった。
静岡学園は後半戦で、その神田や福地、森﨑、最終ラインの要であるDF大村海心(3年)が相次いで負傷離脱。後半戦のリーグ戦成績は4勝2分5敗と苦しんだ。だが、けが人がピッチを離れている間に新たな選手たちがチャンスを掴む。選手権予選で初めてAチームに上がったMF庄大空(3年)が同大会の決勝で1ゴール1アシストの活躍。また、夏頃までBチームでも出場機会の少なかったMF宮嵜隆之介(3年)が優勝ゴールを決めて全国大会出場権獲得に貢献した。
県予選決勝先発のメンバーは4月のプレミアリーグ開幕戦から7人が変更。例年、選手層の厚い静岡学園では、下のカテゴリーで努力を重ねて選手権で花を開かせる3年生選手がいる。今年も庄や宮嵜が躍動。ただし、彼らも全国大会でプレーできる保証はない。静岡県予選得点王(他4人)の庄は、「またポジション争いとか激しくなるんですけれど、出続けられるように頑張りたい」と誓っていた。
選手権では帰ってきたエースストライカーのプレーにも注目だ。川崎フロンターレ内定の神田が予選終了後のプレミアリーグ(11月)で復帰。「チームとしては日本一になって、個人としては得点王を目指して頑張りたいと思っています」という神田は着実にコンディションを高めてきている。その神田や東京ヴェルディ内定の中村、そして徳島ヴォルティス内定の高田は世代屈指のタレント。彼らだけに限らず、チャンスを掴んだ選手が活躍するのが静岡学園の強みだ。その選手層の厚さも活かし、4年ぶりの日本一を目指す。
取材・文=吉田太郎