12月21日、STI(スバルテクニカインターナショナル)は富士スピードウェイにて2024年のニュルブルクリンク24時間レース(以下NBR24H)に参戦するマシンのシェイクダウンを行い、その模様を報道関係者に公開した。
マシンは引き続きVBH型WRX S4。スバル最新のマシンを初投入し、必勝体制で臨み過去最高のラップタイムを刻むなど、速さを見せたものの安定性に欠けクラス優勝を逃し悔してしまった2023年のマシンだ。それに改良を加え2024年のレースに挑む。
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「今年は参戦前に車体、エンジンともにトラブルを出し尽くして臨んだつもりだったが現実は厳しかった。これまでも新型車両にスイッチしてのレースは何度もあったが、すべてEJ20エンジンだったので実はエンジン変更は初めての体験。そこに起因するものも多かった」と語るのは辰己英治総監督。
振り返ってみると確かにそうだ。STIはこの耐久レースに長年挑戦し、数々の勝利も重ねてきた。だがそのすべてはEJ20搭載車だ。エンジン変更によるトルクの出方はもちろん吸排気や冷却のレイアウトなど車体側の変更も多岐に渡りかなり手こずったそうだが、今日のシェイクダウンまでにほぼ払拭してマシンの仕上がり具合は上々とのこと。2024年はクラス優勝はもちろん総合でも20位以内を目指すという。
ピットに佇みコースインを待つマシンの外観の印象は今年のマシンとそれほど大きな差はない。いたるところにガーニーと呼ばれる空力パーツが追加されたことや、リアウイングの翼端板が大きくなったことくらい。その一方、ボディサイドに描かれたチェッカー柄がなだらかに桜の花びら模様に変わっていくデザインが目を引く。
もちろん見えない部分の改良は非常に多い。フロントスタビライザーブラケット、オルタネーターの変更、ベルトや水配管のレイアウト変更を含むパワーユニット各部の見直し、エキゾーストマニホールドの変更はすべて耐久性、信頼性を上げるためのものだ。中でもエキゾーストマニホールドは高価なインコネル系材料を採用し、強度、耐熱性向上とともに2kgもの軽量化を達成している。
BBSによるSTI Flexible Performanceホイールは、前後で異なるデザインに。リム形状を最適化して微小舵に対する応答、限界性能ともに向上を実現しているという。じつはこのホイールの改良は将来のコンプリートカーに向けての先行開発を兼ねたもの。STIのNBR24H参戦はこのようなユーザーに向けた取り組みが随所に見られる。フロントスタビライザーブラケットの改良もスバルの量産車のパーツを手がけるメーカーとの取り組みだ。
そして、その際たるものがこの「STIニュルブルクリンクチャレンジ」と名付けられた挑戦には欠かせない全国各地のディーラーメカニックの参加と言えるだろう。今年も全国のスバルディーラーから8名のメカニックが選ばれ、富士のシェイクダウンにも参加した。
今回のシェイクダウンのドライブを担当したのは佐々木孝太選手と久保凛太郎選手。NBR24Hで2度のクラス優勝をSTIにもたらしている佐々木選手と86/BRZレースで2020年にBRZを駆りシリーズチャンピオンに輝いている久保選手が今回のマシンの開発を担当している。なお、NBR24Hに参戦するドライバーは、年明けの東京オートサロン2024で発表の予定だ。
ちなみに日本語で発信するSTIの公式X(旧Twitter)、英語で発信するSTIの公式インスタグラム、ともにSTIのモータースポーツ活動の中でSTIニュルブルクリンクチャレンジは最も人気が高いとのこと。また公式TV/ストリーミングで配信される映像は1229万人が視聴し、うちアジアでの視聴が473万人、北米の視聴が155万とスバルの重点市場での人気が高く、その数字はニュルブルクリンク24時間レースがSUBARU/STIのモータースポーツ活動にとっていかに重要なポジションであるかを証明しているようだ。
ニュルブルクリンク24時間レースの開催は2024年5月30日~6月1日。STIが掲げた高い目標「ポールポジション獲得、ラップタイム8分50秒、WRX史上最多の146LAPそしてSP4Tクラス優勝+上位ターボ車クラスのSP8Tを含めトップでフィニッシュ」の達成を期待したい。
そして、ぜひSUBARU/STIファンにVBH型WRX S4の、そしてFA24の初勝利を届けて欲しいものだ。
〈文と写真=高橋 学〉