クリスマスケーキが値上がりした原因とは?
今年のクリスマスケーキは、全国的に去年より値上がりしているようです。洋菓子の製造販売を行う株式会社不二家の担当者によると「定番商品である『クリスマス苺のスペシャルショートケーキ』に関しては、300~400円値上げしています」とのこと。
背景に、イチゴ・卵・バターなど、原材料の相次ぐ値上げがあるようです。それぞれの値上げの背景には何があるのでしょうか。
猛暑の影響でイチゴが値上がり
東京中央卸売市場の統計情報によると、イチゴの価格は2022年10月が平均価格2960円/kgだったのに対し、2023年10月は3410円/kg(※1)と値上がりしています。
2023年の夏は猛暑により定植が遅れ、秋になっても花芽分化がおこる気温25度以下にならないことも多かったため、イチゴの生育が遅れました。そのため需要の高まる時期にイチゴの生産が間に合わず、供給不足から高値となっているようです。
年始から高止まりしている卵の価格
卵の値上がりには、2022年の11月から猛威を振るった鳥インフルエンザの影響があります。2023年の始めから供給不足となって価格が高騰し、多くの飲食店で卵メニューが休止になったのも記憶に新しいでしょう。さらに、円安や物価高の影響で飼料価格が高騰(※2)しており、価格が高止まりしています。
乳製品はコストの上昇が原因
ケーキで使用するバターや生クリームなどの乳製品も卵と同様に、生産コストの上昇に伴って値上がりしています。大口の売買を行っている事業者の取引価格は、2022年10月は1371円/kgだったバターが、2023年の同月では1522円/kg(※3)でした。
農林水産省畜産局の担当者によると「2022年度に関しては、生産コストが乳価を上回ることがありました」とのこと。この解消のため、2023年は4月と12月の2度、乳価の引き上げがありました。
※1 出典:東京都中央卸売市場「」
※2 出典:農林水産省「」、日本政策金融公庫「」」
※3 出典:農林水産省「」
今後も生産コストが上昇する可能性が高い。生産者・メーカー・販売店ともに厳しい状況が続く
2023年11月25日、採卵鶏を飼養する農場での鳥インフルエンザの発生が、今年初めて佐賀県で確認され、12月9日までに4県で4事例も発生(※4)しています。今後も断続的に発生する可能性があるうえ、生産コスト高の状況が続いているため、鶏卵価格は例年より高値で推移する可能性が高いでしょう。
さらに、材料費だけでなく、人件費、電気・ガス・水道などの費用もケーキの価格に影響しています。新型コロナウイルス感染症の流行やウクライナ戦争が始まる前の2018年と比較すると、これらの費用はいずれも上昇(※5・6)しています。これはケーキの製造・販売店だけでなく、原料の生産者にとっても同じ状況です。農産物の価格は需給のバランスによって決まるため、コストを価格に転嫁できない場合、生産者が苦境に陥ることがあるかもしれません。そのため、2023年8月に農水省は「適正な価格形成に関する協議会」を発足し食料システム全体で適正価格が実現する仕組みの構築に向けて検討を始めました。
さらに農水省畜産局の担当者は「畜産農家への補助金制度など、生産者を支援する制度を徐々に整備しています。そのため、(これらの制度を)活用していけば経営状況も上向きになる可能性があるのでは」と、今後の見通しを語りました。
※4 出典:農林水産省「」
※5 出典:厚生労働省「」
※6 出典:総務省統計局「」
コロナ明け、高値のクリスマスケーキも人気
しかし、クリスマスケーキが値上がりしたからといって、それが需要の低下にはつながっていないようです。
不二家の担当者によると、昨年よりも多くクリスマスケーキの予約があり、一部商品については、販売計画を上回ったため予定よりも早く受付を終了したほどだそう。こうしたクリスマスケーキの売れ行きについて同担当者は、「コロナ禍による行動制限がなくなったことも一因として感じております。今年はご家族やご友人同士が集まり、クリスマスケーキをお楽しみいただくシーンが増えると考えています」と話します。
クリスマスケーキの原料の価格を通して、2023年の農業を振り返りましたが、いかがだったでしょうか。農産物の価格の背景には農業のさまざまな状況が現れます。来年はもっと明るいニュースがクリスマスケーキの向こうに見えますように。