昌平は育成組織であるFC LAVIDAとの中高一貫6年指導を軸に、昨年まで7年連続でJリーガーを輩出。インターハイでは初出場した2016、2018、そして2022年と3度3位に入り、全国高校サッカー選手権大会でも2019、2020年度に2年連続で準々決勝まで駒を進めている。
2023年は“高校年代最高峰のリーグ戦”高円宮杯プレミアリーグに初参戦。厳しい戦いの中で特長である技術力と判断力、また守備の粘り強さも磨かれてきている。実力は全国上位。その選手たちは「穂高のために」という思いも持って、全国大会に臨む。
DF石川穂高主将(3年)は入学直後からスタメンを務め、年代別日本代表歴も持つ実力派のストッパーだ。昨年は隣でプレーした先輩DF津久井佳祐(現、鹿島アントラーズ)とともに鉄壁の守りを構築。津久井が負傷離脱している際に責任感が増し、得意とする攻撃面に加えて相手FWとの駆け引きや局面での強さを向上させた。復帰した先輩も評価するプレー。その津久井からキャプテンマークを受け継いだ今年は高卒でのプロ入り、日本一を目指してシーズンをスタートさせていた。
だが、初の日本一を目指したインターハイは埼玉県予選準決勝で敗退。加えて、夏の強化、成長を目指した石川に悪夢が襲う。7月31日の練習中、左ひざに全治8カ月の大けが。選手権出場の可能性が潰えてしまった。
FC LAVIDA時代から通じて、昌平での中高6年間の集大成となるはずだった大会は、ピッチの外から見守ることになった。「一番は6年やっていた仲間と急に終わりを告げられた感じで…」。チームリーダーであり、守りの要、セットプレーの得点源でもある石川離脱の影響はチームに重くのしかかることが予想された。
チームは9月から10月にかけていずれも複数失点を喫してリーグ戦4連敗。それでも、選手権予選開幕前最後の試合で前橋育英に1-0で勝利すると、選手権予選も勝ち続けて全国切符を勝ち取った。予選終了後、昌平の10番を背負うMF長準喜(3年)は「試合に出たいという気持ちが穂高は強いと思いますけど、穂高はキャプテンとしてチームをまとめてくれているので感謝の気持ちしかないです」と語り、「自分と(ゲームキャプテンの佐怒賀)大門や他の人は結果で示すことしかできないのでそれが自分たちの責任だと思っています」と続けた。
石川は全国大会で登録外。「自分は外からしか分からないことを伝える」という主将のためにも、メンバーたちはどんな状況でも諦めずに最後まで戦い抜くだけだ。そして、白星を重ね、県予選同様に石川と一緒に優勝を喜ぶ。
取材・文=吉田太郎