トヨタ自動車とKINTOが手掛ける「KINTO FACTORY」で新型「クラウン」の内装パーツ交換が人気となっているらしい。「クラウン(クロスオーバー)」の内装の一部を「クラウン(スポーツ)」のものに交換(アップグレード)するという内容なのだが、そんなに雰囲気は変わるもの? 実際に見比べてトヨタとKINTOに話を聞いてきた。
受注状況は?
KINTO FACTORYではトヨタ/レクサス/GRの3ブランドのクルマに対する「アップグレード」を手がけている。例えば最近では、新型「アルファード/ヴェルファイア」向けにメーターデザインを変えられるアップグレードの提供を開始。こちらのサービスにはこのほど、対象車種として「カローラクロス」およびクラウン(スポーツ)が加わった。
クラウン(クロスオーバー)向け内装アップグレードは2023年11月上旬に提供を開始。立ち上がりからの1カ月で比較すると、トヨタブランド向けアップグレードで歴代2位の受注件数を獲得したそうだ。ちなみに歴代1位は、先代「アルファード/ヴェルファイア」向けの「スライドドア開閉速度アップ」だったとのこと。こちらは一般客に加え個人タクシーのユーザーからも好評だという。
何をどう変える?
クラウン(クロスオーバー)向け内装アップグレードは、シフトパネルなど車内の5カ所をクラウン(スポーツ)のパーツに交換するという内容。具体的には写真で見ていただきたい。
値段は全部セットで取り付け費を含め5万9,400円だ。対象車種は基本的にクロスオーバーの全グレード(特別仕様車などは除く)。
今回、交換前と交換後の内装を見比べることができたのだが、肉眼で見れば確かにパーツ変更の効果はあって、交換後の内装は高級感や統一感が高まったような印象を受けた。違いを写真で伝えきれないのが悔しいところだ。
なぜ内装交換を始めた?
トヨタとしては、「アップグレード」とはいいつつも、もともとのクロスオーバーの内装よりもスポーツの内装の方が「グレードが上」と位置付けているわけではない。ユーザーの価値観の多様化や各自の好みになるべく幅広く対応したい、ユーザーの選択肢を広げたい、こうした思いからアップグレードを用意したそうだ。
アップグレードはクルマの保有形態(所有かサブスクか)に関わらず受けられるサービスだ。トヨタとKINTOでは、トヨタ/レクサス/GRのクルマに乗っているユーザーに、アップグレードに関するどんなニーズがあるのかを常に探っているという。例えば販売店から意見を聞いたり、SNSなどを調べたり、クルマのユーザーにインタビューを実施したり、各社の問い合わせ窓口(リクエストを受け付ける目安箱のようなもの)で声を集めたりといった感じだ。KINTOによれば、目安箱の開設からこれまでに2,000件を超える意見が集まったという。その中から実際にアップグレードの商品化につながったものもあったそうだ。
日本国内のトヨタ車の保有台数は2,000万台だというから、どのクルマにどんなアップグレードを実施するかの組み合わせを考え始めたら果てしないわけだが、トヨタとKINTOではユーザーのニーズをかなり重視しているようなので、何か希望があったら声を届けてみるのがよさそうだ。
アップグレードの究極型のひとつとして「パワートレインの交換」はありうるのか。例えばガソリンエンジン車をハイブリッド車にするとか、ハイブリッド車をプラグインハイブリッド車にするとか、内燃機関搭載車を電気自動車(EV)にしてしまうとかいったことだが、トヨタでアップグレード関連を担当している利根優太さんは「構想としてはあります。『やりたいこと』のひとつです」と話していた。どこで作業をするのか、どのくらいの価格になるのかなど詰めなければならない課題はたくさんあるが、「カーボンニュートラルへの貢献という軸で考えると、EVへのコンバートもありえます」との考えだ。