金融市場関係者にとって年内最後のビッグイベントともいえる、日本銀行(以下、日銀)の金融政策決定会合が12月18-19日に開催されました。にわかに注目が高まったのは、植田日銀総裁が12月7日の参院財政金融委員会で、金融政策運営に関して「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と述べたからでした。
日銀の金融政策変更は近い!?
日銀は長く、マイナス金利を含む大規模な金融緩和を行ってきましたが、消費者物価が日銀目標の2%を超える状況が続くなか、金融市場でも「そろそろ金融緩和の修正を検討しても不思議ではない」との観測が高まっていました。それでも、政策変更は早くて24年1月から3月、おそらくは春闘の結果をみて4月に行うのではないかとの見方が有力でした。
ところが、植田総裁は金融政策決定会合が年内残り1回となったタイミングで敢えて「年末から」としたうえで、難しい判断を迫られるという意味で「チャレンジング」という言葉を使ったため、金融市場では年内に政策変更、あるいは少なくとも年明けの政策変更に向けた地ならしが行われるとの観測が急速に浮上したのです。
ハシゴを外された金融市場
19日正午前に発表されたのは、金融政策の現状維持でした。午後3時30分から始まった会見でも、植田総裁は政策変更を急ぐ素振りをみせませんでした。件の「年末から・・チャレンジング・・」の発言に関しても、植田総裁は「仕事の取組み姿勢を問われ、一段と気を引き締めて、というつもりでそう発言した。同じ議員に粘り強く緩和を継続すると述べた」と説明しました(この時点で筆者は「引き締めるのは金利(きんり)でなく気(き)かい!」とツッコミを入れていました)。
次回24年1月22-23日の会合で政策変更を行う可能性についても、植田総裁は「1月会合での政策変更の可能性はそこまでに入ってくる情報次第だが、(情報は)そんなに多くない」と、消極的な姿勢をみせました。以上を勘案すると、マイナス金利の解除などの政策変更は早くても24年3月、おそらくは同4月ではないかと予想されます。
FRB、BOE、ECBは先立って現状維持を決定
日銀の会合に先立つ12月13日と14日には、米FRB(連邦準備制度理事会)、BOE(英国中央銀行)、ECB(ユーロ圏中央銀行)といった主要中央銀行の年内最後の政策会合が開催されました。いずれも、金融政策は現状維持でした。トップの会見では、パウエルFRB議長は「利下げのタイミングを協議した」と早期利下げに含みを持たせました。一方、ベイリーBOE総裁は「(インフレ抑制のために)まだ進むべき道のりがある」、ラガルドECB総裁は「絶対にガードを下げてはならない」や「利下げの議論は全くしなかった」と述べ、高金利を維持する意向を示唆しました。
24年春以降はアグレッシブな利下げ?
もっとも、気の早い金融市場は、昨年春から今年夏ごろまでにアグレッシブな利上げを続けたFRB、BOE、ECBが24年春以降、今度はアグレッシブな利下げを実施すると予想しています。日銀については、24年3月にマイナス金利をゼロ%にし、さらに9月に0.10%の利上げを行うと予想しています(※)。
(※)OIS(翌日物金利スワップ)を用いると、金融市場が織り込む金融政策の確率を算出することができます。ここでは確率が50%を超える事象をメインシナリオとして紹介しています。
24年の基本シナリオは「円高」!?
金融政策に着目すれば、24年は円が米ドル、ユーロ、英ポンドに対して上昇すると考えてもおかしくはないでしょう。今年11月中旬以降に顕著になった「円高」は24年のシナリオのプレビューと言えなくもありません。もっとも、このシナリオはすでに為替相場にある程度織り込まれていると考えるべきであり、今後の相場材料でシナリオがどう変化するかに注目する必要があるでしょう。