第9期叡王戦(主催:株式会社不二家)は段位別予選が進行中。12月18日(月)には九段戦Cブロックの計3局が東京・将棋会館で行われました。このうち羽生善治九段―島朗九段の一戦は横歩取りの力戦を88手でまとめた羽生九段が勝利。羽生九段は続く豊島将之九段戦も制して自身3回目となる本戦入りを決めています。
横歩取り力戦へ
今期の段位別予選(九段)は3ブロックに振り分けられた計29名が本戦入りを懸け戦うもの。この日の対局者には本局を含めあと2勝が必要です。振り駒が行われた本局は先手となった島九段の誘導で横歩取りへ。早めに飛車を自陣二段目に引いたのがその工夫でした。
島九段の駒組みは局面を落ち着かせて序盤の歩得を生かそうという狙い。局後これを「見たことのない形だった」と明かした後手の羽生九段ですが、ここから秀逸な対策を編み出します。歩の手筋を駆使して飛車を敵玉近くに回り込んだのがその手始め。
一方的に攻めて快勝
放置しては自陣が持たないと見た島九段は左金の活用で局面の収拾を図りますが、羽生九段はここから硬軟織り交ぜた手順でリードを拡大。タタキの歩で敵飛の働きを弱めてからじっと自陣の銀を活用したのが玄人好みの好手で、先手から手がないのを見越しています。
一方的な攻めの権利を得た羽生九段は繰り出した右銀の圧力で左辺一帯を制圧。飛車取りに構わず角を取ったのが読み切りの決め手でした。終局時刻は12時18分(持ち時間1時間)、最後は自玉の受けなしを認めた島九段の投了で羽生九段の勝利が決まりました。
勝った羽生九段は午後に行われた豊島九段との対局を相掛かりで快勝。第4期以来3回目となる本戦入りを決めました。
水留 啓(将棋情報局)
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