第82期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は6回戦が進行中。12月14日(木)には稲葉陽八段―佐々木勇気八段戦が名古屋将棋対局場で行われました。対局の結果、角換わり腰掛け銀の熱戦を141手で制した佐々木八段が3勝3敗として星を五分に戻しました。

2勝同士の直接対決

今期のA級は豊島九段が6戦全勝と独走。5回戦終了時点で2勝3敗に4人がひしめく中位争い、貴重な3勝目を挙げるためにどちらも負けられない戦いです。佐々木八段の先手で始まった本局は角換わり腰掛け銀特有の間合いの計り合いに進展しました。

先に工夫を見せたのは後手の稲葉八段でした。6筋の位を取ったのは陣形発展を見せて先手の仕掛けを誘う狙い。実戦もこれに呼応するように佐々木八段が桂跳ねの速攻から局面を打開し、局面は銀と桂香の二枚換えで一段落を迎えます。

馬取りを手抜く勝負術

手番を得た後手の稲葉八段は手にした桂香で反撃開始。手裏剣の歩から控えの桂という囲い崩しの手筋が決まって好調に見えましたが、ここから佐々木八段が懐の深さを見せました。戦いの中で生じた馬取りの歩突きを放置したのが驚きの構想です。

佐々木八段が馬を取らせたのは、これによって生じた空間に桂を打って後手玉への寄せの足がかりとする目的。リードを奪った佐々木八段は怒涛の攻めで稲葉玉を危険地帯に追い詰めます。稲葉八段が先手陣に入玉して開き直った局面がハイライトとなりました。

佐々木八段の読み切り

詰めろ逃れの詰めろの応酬が続くなか佐々木八段は冷静な手つきで王手を開始。これが熱戦に終止符を打つ読み切りでした。終局時刻は翌15日0時27分、自玉の詰みを認めた稲葉八段が投了。盤面全体を使う30手近い詰みを読んだ佐々木八段が3勝目を挙げています。

破れた稲葉八段は2勝4敗と黒星先行。次回7回戦では佐々木八段は佐藤天彦九段と、稲葉八段は永瀬拓矢九段との対戦が予定されています。

  • 佐々木八段は公式戦直近6連勝と好調をキープ(写真は第30期竜王戦決勝トーナメントのもの 提供:日本将棋連盟)

    佐々木八段は公式戦直近6連勝と好調をキープ(写真は第30期竜王戦決勝トーナメントのもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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