季節の変わり目や環境の変化で肌の調子が不安定…。そんな「敏感肌の悩み」を多くの人が経験しているはず。しかし、敏感肌の正しいお手入れ方法については、普段なかなか知る機会がないのではないでしょうか。
そこで今回は、第一三共ヘルスケア ブランド推進本部「ミノン」ブランドマネジャーの蔵本晶子さんに、肌の"敏感期"や敏感肌のお手入れ方法について詳しくお話をうかがいました。乾燥がますます気になるこれからの時期。敏感肌をどうケアすべきなのか知り、心身ともに健やかに過ごすためのヒントを見つけてみましょう。
■「敏感肌」とは、角質層のバリア機能が低下しがちな状態
━━はじめに、蔵本さんの業務内容について教えてください。
第一三共ヘルスケアの中の敏感肌向けスキンケアブランド、「ミノン」のブランドマネジャーを務めています。製品開発やマーケティング活動などがブランドマネジャーとしての主な業務ですね。ミノンは敏感肌向けスキンケアということもありますし、この秋に提唱を始めた「人生を通じた肌と心の敏感期を支えたい」という想いを持ちながら、これらの業務に取り組んでいます。
━━「肌の敏感期」についてお話しいただく前に、まずは「肌のバリア機能」や「敏感肌」とはどのようなものか教えていただけますでしょうか。
私たちの体の表面(表皮)は4層で構成されていて、その一番外側に「角質層」というものがあります。これはわずか0.02mmという薄さで、バリア機能はその角質層に備わっています。
バリア機能には大きく分けて2つの役割があります。1つめは、肌の中の水分蒸散を防ぐ、水分を保つという「保湿」の働き。2つめは、紫外線や花粉、乾燥した外気など外部の刺激から肌を守る「保護」の働きです。
角質層は、皮脂膜や天然保湿因子(NMF)、細胞間脂質などで構成されていて、それらによって皮膚のうるおいのバランスが保たれています。その角質層のバリア機能が低下しがちな状態、つまり「保湿」と「保護」の機能が働きにくくなっている状態が「敏感肌」ということなんです。
敏感肌は肌の水分を保持する力が弱くなりやすく、紫外線やアレルゲンなど外部刺激を受けやすい状態になってしまいます。
━━ミノンでは「誰しもに訪れうる肌と心がゆらぎやすい時期」を”敏感期”としているようですが、肌の敏感期の具体的な要因とは何でしょうか。
元々の肌質や体質によって、「敏感肌状態になりがちな人」と「そうでない人」がいらっしゃいます。
しかし、普段はあまりそうした症状を感じない人でも、たとえば季節が進むと「肌がいつもと違う」と感じることがあるでしょう。女性の場合、ホルモンバランスの影響も受けますよね。また、乾燥や紫外線、洗顔のし過ぎ・こすり過ぎといった間違ったスキンケア、睡眠不足など生活習慣の乱れでも肌のバリア機能は低下し、敏感期を引き起こしがちです。
■敏感肌のサイン、年代ごとの特徴とは
━━敏感肌のサインはどのように現れるのでしょうか。
敏感肌とは、肌のバリア機能が低下しがちな状態のことをいいますが、どのようなサインが現れるかはその人によって異なります。
肌がかゆくなる、ごわつきが出るなどの不調のほか、いつもと同じ化粧水をつけても体調や季節によっていつもと違う感覚になる人もいるでしょう。
━━敏感肌のサインは人それぞれなのですね。敏感肌はどの年代でもなる可能性があるようですが、乳児から大人までそれぞれの敏感肌の特徴を教えていただきたいです。
乳児~10歳くらいまでは、角質層のバリア機能が未完成な状態です。特に赤ちゃんの肌は水分を含んでモチモチですが、実はバリア機能がすごく弱い肌。なので乾燥しやすいですし、「保湿」「保護」のバランスが取りにくい肌です。
赤ちゃんには、生後2ヶ月くらいまでに肌が脂っぽくなる時期がありますが、生後3ヶ月くらいを超えるとお母さんのお腹にいた時の影響がなくなり、今度は一気にカサカサ期を迎えるんです。そこから10歳くらいまでの時期はカサカサ期になりがちなので、バリア機能を守るスキンケアが非常に大事ですね。
10代からの思春期は、一般的には過剰な皮脂分泌やホルモンバランスによってニキビができやすくなる人が多いです。
20〜30代は、ライフイベントの重なりやストレス、忙しさで生活リズムが狂ってしまいがちです。女性の場合は妊娠や出産、育児で寝られないこともあるでしょうし、男性も仕事を任され忙しさやストレスが続く時期でしょう。そのため、敏感肌状態になりがちな年代と言えます。
さらに40,50代、シニア世代になりますと、特に女性は更年期や閉経の影響で肌が硬くなるなど肌質が大きく変わるタイミングを迎えます。また、肌が非常に乾燥するのもこの年代の特徴ですね。
■敏感肌のお手入れは「洗う」ことに目を向けるのが大切
━━ここからは、敏感肌の正しいお手入れについて、いくつかお聞きしたいです。まず、敏感肌を防ぐためにはどのようなお手入れをすれば良いでしょうか。
我々は「洗う」ことに非常に着目しておりまして、”弱酸性”の洗浄料を推奨しています。人の健康な肌は弱酸性なので、肌と同じ弱酸性の洗浄料を使用し、肌に必要な皮脂や保湿成分を洗い流し過ぎないお手入れがおすすめです。
よく、「洗浄料をよく泡立てたり、泡で出てくるタイプを使ったりすれば肌に優しい」と思われている方がいらして、もちろんそれも大切なのですが、性質までこだわっていただきたいなと思います。
━━そうなんですね。弱酸性のもので洗うのがおすすめということですが、洗い方にも何か注意点はありますか?
はい、洗い方としては、ゴシゴシ洗うのではなく泡で優しくなでるように洗っていただきたいですね。「足などはしっかり洗ったほうが良いのでは」「ゴシゴシしないと洗った感じがしない」という方もいらっしゃるかもしれませんが、どこの部位もこすり過ぎは良くないです。
手で洗うか、タオルを使うなら肌に優しいボディタオルを使うのも良いと思います。ナイロンタオルでゴシゴシするのはスッキリするのですが、肌には負担がかかってしまいますので…。ゴシゴシしなくても私たちが思っている以上に汚れは落ちているものですので、優しく洗うことを心がけていただきたいですね。
あと、入浴後は洗浄料と同じ弱酸性の保湿剤を使うのもポイントですよ。
━━やはりゴシゴシ洗いは良くないのですね。では、敏感肌の場合はどのようなお手入れが必要なのでしょうか。
そうですね、どうしても肌に「与える」ほうに目が行きがちなのですが、やはり「洗う」ところでバリア機能を守ることを意識していただくのが大事だと思います。敏感肌の状態でゴシゴシ洗ったり、強めの洗浄料を使ったりすると、敏感肌状態が負のスパイラルに入って行ってしまいますので…。
角質層の保湿成分を守って洗い、バリア機能を保つには、まずは洗浄に目を向けていただき洗う際に負担をかけないようにすることが大切です。
肌の調子が悪いと、皮膚科に行って塗り薬を処方してもらうことがありますが、「洗浄料はこれを使いなさい」とはなかなか言われないですよね。なので、ついつい塗るなど与えるほうに目が行きがちなのですが、「洗うことに注目するのはとても大事なんですよ」というのを我々はもっと伝えたいなと考えています。
■敏感に振れがちな人は「敏感肌向け」アイテムがおすすめ
━━やりがちだけれど実は良くないお手入れ方法についても、お聞かせいただきたいです。
スッキリしますが必要な皮脂まで流れてしまうので、熱湯で洗うのは良くないですね。同じ理由で、お風呂のつかり過ぎにも注意が必要です。
冬は寒いのでどうしてもお風呂の温度を高くしがちですが、「そうすることで皮脂が奪われる状態になるんだ」ということを少し頭の片隅に置いていただき、そのうえで、保湿成分配合の入浴剤を入れる、お風呂上りにすぐ保湿剤を塗るなどのケアをしていただくのが良いと思います。
また、先ほどもあったようにゴシゴシ洗いは良くないですし、皮脂を落としすぎることも避けたほうが良いですね。
それと、保湿剤や日焼けなどはぜひ塗っていただきたいのですが、塗り方にもポイントがあるんですよ。肌のキメは体の横方向にありますので、保湿剤や日焼け止めも縦方向ではなく横方向で塗ったほうが角質層に浸透してしっかりなじみます。なので、つい縦方向に塗りがちですが、横方向に塗ることを意識していただければと思います。
━━保湿剤や日焼け止めの塗り方、とても参考になりました。最後に、肌のお手入れアイテムの選び方について教えていただきたいです。おすすめや避けたほうが良い成分などはありますか?
ご自分の肌が「敏感に振れがちかな」と思っていらっしゃる方は特に、初めて使う成分には慎重になったほうが良いですね。たとえば、今まで経験したことのない成分を使う際には、ご自分でパッチテストをしてみると安心です。敏感に振れがちな方は、「敏感肌向け」と訴求しているアイテムから選んでいただくのがいいかもしれません。
また、保湿剤の選び方に関しては、ベースとして使う保湿剤でしたら年代問わず同じもので問題ないかと思います。しかし、たとえばニキビが気になる場合は脂っぽい使用感のものを避けるなどの工夫をしていただくと、より安心して保湿剤をお使いいただけますよ。