2023年11月25・26日の2日間にわたって、円谷プロ最大級の祭典「TSUBURAYA CONVENTION2023(愛称:ツブコン)」が東京ドームシティ、東京ドームホテルにて開催された。期間中、昭和・平成・令和と3つの時代にまたがって人々を魅了し続けてきたウルトラマンシリーズにまつわる大イベントがいくつも企画され、幅広い世代のファンたちが心の底から楽しんでいる様子であった。ここでは今年(2023年)で放送25周年を迎えた『ウルトラマンガイア』(1998年)の主要キャストが再会し、懐かしい当時の思い出をぞんぶんに語りあったイベント『ウルトラマンガイア25thミッションネームガイア XIGファイターズGet glory!』のもようをご紹介しよう。
我夢と藤宮が別時空に!? スペシャルアクションショー
イベントは、「TDG THE LIVE ウルトラマンガイア編」の流れを汲むスペシャルアクションショーと、『ウルトラマンガイア』メインキャストであるXIGファイターズの面々が結集したトークショーの2部構成。
『ウルトラマンガイア』イベントのステージ上に、突如現れた破滅魔人ブリッツブロッツと金属生命体アパテー。これに対抗するべくさっそうと駆けつけたのは、地球を守るウルトラマンガイア(V2)と本作のもうひとりのヒーロー・ウルトラマンアグル(V2)だった。絶妙のコンビネーションと冴えわたるアクションで2大怪獣を倒したふたりのヒーローだが、その直後に謎の怪人が持つ「赤い球」の力によって「時空の歪み」に飲み込まれていった……。
やがて、今回のイベントでMCを務めるXIGオペレーターのジョジー・リーランドを演じたマリア・テレサ・ガウが登場。ガウに呼びこまれたウルトラマンガイア/高山我夢役の吉岡毅志、ウルトラマンアグル/藤宮博也役の高野八誠だったが、2人の様子がどうもおかしい。自分のことをウルトラマンガイアだと知っていて、感動の眼差しを向ける満場の客席を見た吉岡(我夢)は「なんなんだここは? どうしてみんな僕がガイアだと知ってるんだ!?」と叫び、この場所がもともと自分のいた世界ではないことを察知した。
すると、先ほどの怪しい声の主=根源的破滅将来体の使者「根源破滅紳士」と名乗る怪人は、我夢と藤宮を「別の時空」、すなわち2人の戦いがテレビ番組『ウルトラマンガイア』として放送されていた世界に送り込んでいたことを明かす。根源破滅紳士が手にする「赤い球」は、かつて『ウルトラマンティガ ウルトラマンダイナ ウルトラマンガイア 超時空の大決戦』(1999年)でも我夢を別時空へと送り込んだ「人間の欲望を具現化する物体」だった。再び現れるブリッツブロッツ、アパテー、そして巨大異形獣サタンビゾーに立ち向かうべく、我夢はガイア(V2)に、藤宮はアグル(V2)へと変身する。
異世界に来たことによってエネルギー消耗が激しくなり、ピンチに陥るガイアとアグル。そんな中、客席に集まった『ガイア』ファンの熱い応援の力によって奇跡が起こり、ウルトラマンティガ、ウルトラマンダイナが救援にかけつけた。それだけではない。ガイアとアグルが共にSV(スプリームバージョン)にバージョンアップ。さらには、ガイア(SV)とアグル(SV)が融合して、ウルトラマンガイア(SSV=スーパースプリームバージョン)となり、最強怪獣キングオブモンスを見事撃退することができた。
キャストが再集結!『ウルトラマンガイア』トークショー
やがて、改めてステージに再登場したガウがふたたび進行役を務めることで、『ウルトラマンガイア』トークショーが始まった。出演者は、チーム・ハーキュリーズ・桑原孝信役の中村浩二、同じくチーム・ハーキュリーズの吉田悟リーダー役・松田優、チーム・シーガルの神山篤志リーダーを演じた権藤俊輔、チーム・ファルコンの米田達彦リーダー役・賀川黒之介、チーム・ライトニングの梶尾克美リーダーを演じた中上雅巳、そしてウルトラマンガイアの「光」をつかみ、地球を守るため仲間と一緒に頑張ったXIGアナライズ担当・高山我夢役・吉岡毅志の6人。
『ガイア』放送から25年、これだけ多くのキャストが揃ったイベントは今回が初めてとのこと。吉岡は「黒之介さん、松田さん、権藤さん、中村さんはこれまでにも何度かお会いしましたけど、中上さんはほんとうに久しぶりの再会になりました」と、ツブコンPR用インタビューの場で中上と再会し、久々に思い出話をしたときのことを嬉しそうにふりかえった。中上も高山との再会について「ぜんぜん変わってなくてびっくりしました」と、25年を経てなお若々しさを失わない高山に驚きを感じていたと語った。
賀川は常に最前線で戦うベテランチームを率いる米田役について「演じる上で特にこだわったのは、笑わないことです。何かよほどのことがあるまでは、自分から笑いかけるような芝居をやらないよう心がけていました」と、役の上で意識していたことを明かした。また「劇中でちょこちょこケガをするシーンがあるんです。次の台本を読むたびに、もしかしたらこの回で俺たち(チーム・ファルコン)殉職かな? と思っていましたが、最終回まで無事でいられてよかった」と、戦闘機が撃墜される機会が多いゆえ「途中降板」の心配をしていたことを打ち明け、苦笑いした。
常に物静かで、冷静沈着な神山リーダーを演じるにあたって権藤(ウルトラマンガイアのスーツアクターも兼任)は「小さいころテレビ、映画、漫画で観ていたような、カッコいいとはこういうものだという人物像を意識しつつ、他のチームと違って人命救助に特化したチーム・シーガルのリーダー像を表現してみました。若い世代を導くように優しくあたたかい感じで話す、声のトーンに注意しました」と語り、優しそうな笑顔をのぞかせた。
頭より身体を使うほうが得意な陸戦部隊チーム・ハーキュリーズだが、頭脳派の我夢を可愛がり、肉体を鍛えようとする場面もいくつか見られた。松田は、吉岡と一緒のシーンについて「俺たち3人は暑苦しいから、囲まれる我夢がかわいそうに見えました(笑)」と語りつつ「デカい俺たちがコクピットに入ると狭くて、暑くてたいへんでした。芝居するときは、東京タワーくらいの大きさの怪獣をイメージしてと言われました。東京タワーだと、そうとう気合いを入れねえと倒せないよなって、大きな声でセリフを叫んでいました」と、中村や加賀谷圭とのチームで熱い演技を心がけた当時の思い出を語った。
権藤と共に、ウルトラマンガイアのスーツアクターも務めた中村は、第34話「魂の激突!」では桑原のイトコという設定でプロレスラー・マンモス大剛を演じ、人気レスラー「破壊王」橋本真也選手(新日本プロレス)と共演したことが話題となった。この回について中村は「滝に打たれるシーンがあり、監督から肌色ウエットスーツを着るかと聞かれたのですが、温かかったので裸で行きますって言ったんです。でも、実際に裸で滝に当たると衝撃がすごくて、スタートがかかったとたん気を失いそうになりました(笑)」と、強靭な肉体を備えている中村でさえもたじろがせるほどの滝の勢いの凄さをふりかえった。
当時高校生で、学校に通いながら撮影現場に来ていたガウは「あのころ、撮影でよく覚えているのは、衣装担当の稲毛(英一)さんから『自分の衣装は自分で畳みなさいよ。よその現場に行ったら怒られるよ』と言っていただいたことです。私にとって『ウルトラマンガイア』は社会勉強の場でした。多くの人たちと関わらせてもらえて、よかったと思います」と、スタッフ・キャストの方々との出会いで人間的に成長できたことをしみじみと思い返し、さわやかな笑顔を浮かべた。
続いて、ウルトラマンアグル/藤宮博也をクールに演じた高野八誠、そしてテレビ局KCBのクルーとして怪獣事件を報道する中、我夢や藤宮と深く関わっていくレポーター・吉井玲子を演じた石田裕加里が登場。2人は『ガイア』出演がきっかけとなり、2006年にめでたく結婚している。石田は先ほどのヒーローショーにサプライズ出演した感想として「緊張しましたが、楽しかったです」と語り、ひさびさの「夫婦共演」を楽しんだことを明かした。
『ガイア』で印象に残っている場面を尋ねられた石田は「第15話『雨がやんだら』で、玲子がスピーカーを持ってウルトラマンガイアに呼びかける合成シーン。ウルトラマン! って呼んだらこっちを向いてくれたんです。完成映像を観て、面白いなあって思いました(笑)」と、同一画面に玲子とガイアが収まり、互いの演技がシンクロしたシーンがお気に入りだと話した。
高野は、一度姿を消してからふたたびアグルとして復活を果たす藤宮を演じる際、衣装や髪の色を変えたことについて「『フェイス・オフ』のニコラス・ケイジに憧れて、ロングコートを用意していただきました。ひさびさに出て来るので、ボロボロに疲れた雰囲気を出したくて、自分から提案してみたんです」と、ふたたび戦いの道に乗り出す藤宮のイメチェンへのこだわりを熱く語った。
ガウから「撮影当時から高野さんのことが好きだったの?」という質問をされた石田は「好きでしたよ!」と照れながら返答。吉岡は「裕加里は八ちゃん(高野さん)に近づくため、僕のほうに連絡してきたんだよね」と、石田と高野の仲をとりもつキューピッド役を務めていたことを明かし「人の幸せをつくるのは上手いです(笑)」と言ってニッコリ笑顔を見せた。
ファンから寄せられた質問「ガイアとアグル、変身するならどっちがいい?」にちなんで中上は「実は、いつか梶尾が3人目のウルトラマンになるんじゃないかと思いながら演じていました。ファイターチームの中であんなに目立っていて、恋愛話もあって、いつウルトラマンになれるんだろうと楽しみに待っていたんですが、普通の人のままでした(笑)」と、ひそかな「ウルトラマン願望」があったことを打ち明け、客席からの拍手を受けていた。
また「戦闘機コクピットでの撮影裏話」について中上は「コクピットのシーンはスタジオ内で撮っているのですが、一度、実際の空を映したいというので、コクピットを屋外に持っていって撮影を行ったんです。真夏の太陽が照り付ける中、暑いヘルメットを被り、レザーのユニフォームを着て……」と、猛暑の中での苦労話を語った。そこに賀川が「ぜんぜん意味のない扇風機がついてくるんだよね」と絶妙な合いの手を入れると「そうなんです。小さすぎて、ちっとも涼しくならないんですが、それでも待ち時間はずっと扇風機を顔に近づけて、少しでも風を取り込もうとしていました」と、当時の苦労を回想した。
そして話題が最終回「地球はウルトラマンの星」に移ると、権藤は「撮影しているときは、これで終わっちゃうんだな……という思いが強く、もうちょっと『ガイア』の世界観にひたっていたかった」と、最終決戦に気合いを入れながらも、撮影が終わる寂しさがあったことを打ち明けた。
中上は「最後に梶尾が、整備班のみんなに向かって『これだけの人が整備をしてくれるから、俺たちが飛べるんだ』と語るシーンがありました。この言葉って『ガイア』の作品全体にも言えることだと思うんです。最終回のエンドロールには、ものすごい数のスタッフさんの名前が出てきました。打ち上げの席であのエンディングを観て、しみじみと『いい最終回だな。いいセリフを言わせてもらったな』と感じました」と、共に苦労を分かち合ったスタッフ・キャストへの信頼を込めながら、最終回の思い出をしみじみと語った。
イベントの最後には、ガイアとアグルの全バリエーション(ガイアV1、ガイアV2、ガイアSV、アグルV1、アグルV2、アグルSV、ガイアSSV)がステージに結集。合計7体のウルトラマンと、9人の出演者が並び立つ、まさに壮観としかいいようのないビジュアルが実現した。
最後にマイクを手にした吉岡は「25年前は芝居の経験もほとんどなく、右も左もわからない状態。先輩俳優のみなさんを見ながら勉強するというか、共演者の方々に少しずつ育てていただき、成長することができたと思います。ほんとうにありがとうございます。『ウルトラマンガイア』はまだまだ進化していきます。これからも30周年、35周年、40周年とお祝いができるよう、頑張っていきます。もしも『願いを叶える赤い球』があれば、もう一度ここにいるファンのみなさんに会いたい。これが僕の『願い』です!」と語り、未来に向けてまたファンの前に姿を見せたいと夢を打ち明け、イベントをしめくくった。