第37期竜王戦(主催:読売新聞社)はランキング戦が進行中。12月13日(水)には1組1回戦の佐藤康光九段―永瀬拓矢九段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、角換わりのねじり合いを180手で制した佐藤九段が好スタートを切りました。
康光流の序盤戦術
今期のランキング戦1組は本戦出場に向けた5つの枠を17名で争うもの。本局を含め3連勝を挙げれば無条件で本戦入りが決まります。振り駒が行われた本局、先手の永瀬九段が得意の角換わり腰掛け銀に誘導したのを受けて後手の佐藤九段は独特の戦術を披露しました。
左銀の定位置とされる3三の地点に桂を跳ねたのは佐藤九段が公式戦で数局採用している駒組み。定跡形を外しながら先手からの桂跳ね速攻をけん制する狙いが見て取れます。間合いの計り合いののち、佐藤九段は6筋の歩をぶつけて先攻に踏み切りました。
勝負分けた中合いの妙
左辺上方に馬を作り合って局面は一段落。形勢は互角ながら、ここから佐藤九段は巧みな受けでペースをつかみます。自玉を菊水矢倉の堅陣に収めたあとじっと歩を打って先手の馬を封じ込めたのが損のない準備。持ち駒も蓄えつつ満を持して反撃に乗り出します。
永瀬九段も決死の反撃に転じて終盤戦へ。盤上五段目までつり出された佐藤玉に永瀬九段が香を打って王手した局面が本局のハイライトでした。一分将棋の秒読みのなか、タダのところに桂を打ったのが中合いの好手。これが馬の利きを遮りつつ王手を受ける一石二鳥の手で、後手玉は即詰みを逃れています。
終局時刻は22時2分、最後まで粘る永瀬九段の追撃を振り切って寄せを決めた佐藤九段が快勝で2回戦に進出。終局後のSNSには「これは名局賞」「これが1組という将棋」「二人で編んだ名局譜」と両対局者への賛辞が溢れました。
水留 啓(将棋情報局)
この記事へのコメント、ご感想を、ぜひお聞かせください⇒コメント欄