愛知県蒲郡市とNTT西日本は、マイナンバーカードの利活用推進に向け、NTTマーケティングアクト ProCXと協力し、NTTデータ関西のマイナンバーカードによる本人確認機能を実装したポイントプラットフォームアプリ「アスリブ」を活用。蒲郡市が行うイベントやボランティア活動などの参加者にポイントを付与する「がまポイントアプリ」の運用を10月2日よりスタートしている。
蒲郡市とNTT西日本は、2023年1月31日に締結した「ICT・マイナンバーカード活用による地域活性化に向けた協定」に基づく取り組みとして、「マイナンバーカード利活用の知見及び資源等を活用した地域課題の解決や活性化」に向けて連携を進めている。
その一環として登場した「がまポイントアプリ」の取り組みについて、蒲郡市役所にてがまポイント事業を進めている。今回は、企画部 デジタル行政推進課 DX推進担当の小出敦子氏、北川加奈葉氏、情報管理担当の岩瀬祥治氏、さらに、同事業をサポートするNTTビジネスソリューションズ 名古屋ビジネス営業部 バリュービジネス推進部門 フロント営業グループ 第一営業担当の近藤宙子氏、同 第二営業担当の兼子彩氏に話を伺った。
■マイナンバーカードの利活用に向けて
蒲郡市が「がまポイントアプリ」を導入するにあたり、最初の目的は「マイナンバーカード」の利活用。保険証としての利用や公金受取口座の登録などの取り組みが行われているマイナンバーカードだが、蒲郡市では、市民の約81.4%が保有しており、「取得していただいたマイナンバーカードをどのように活用していただくかを、蒲郡市としても検討していく必要があった」と、がまポイント事業主担当の小出氏は振り返る。
蒲郡市では、市役所の内部業務に対するDXの取り組みは進められていたが、市役所外部、市民に対するDXやデジタル化についての取り組みは未着手の部分が多い。さらに、高齢化率が約30%と、高齢化が進んでいる状況において、誰一人取り残されない社会実現に向けたデジタルデバイド対策の課題に対し、デジタルに慣れ親しんでもらう機会を創出する必要性を感じていたという。一方、NTT西日本グループとしても、これまではマイナンバーカードの申請サポートや申請支援に取り組んできたが、今後はマイナンバーの利活用・利便性向上を図る必要性を感じており、双方の持つ課題感が、今回の取り組みに繋がっている。
そうした背景を踏まえて、運用開始となった「がまポイントアプリ」は、「アスリブ」という健康サポートアプリを蒲郡市向けにカスタマイズしたアプリだ。ウォーキングや日々の健康記録、清掃活動などのイベント参加、アンケートの回答などを行うことで、それぞれ決められたポイントが付与される。貯まったポイントは、PayPayなどのキャッシュレスサービスに交換可能となっているが、ポイント交換には、マイナンバーカードで本人登録し、蒲郡市民であることの確認が必須。つまり、健康づくりや環境活動などに対する行動変容と地域のキャッシュレス化、そしてマイナンバーカードの利活用といった3つの目的をはたすことができるアプリとなっている。
NTT西日本が「アスリブ」をベースアプリとして選定した理由について、本人確認でマイナンバーカードを利活用できるところが大きなポイントとなっているが、「クラウドサービスで汎用性があり、様々な部署でも幅広く活用できる」という点も重視したと話す、NTTビジネスソリューションズの近藤氏。蒲郡市にとっても「新たにアプリを制作するのは費用も掛かりますし、それを周知するのも大変。その意味では、既存のアプリを活用できるのは大きい」との見解を示した。
もともとが健康アプリという点も、「健康づくりは、あらゆる世代に関わることだけに、気軽に利用してもらいやすい」というメリットがある。蒲郡市では、健康づくりだけではなく、環境活動や様々な市の施策への参加などのきっかけとしても想定しており、地球温暖化対策の周知・啓発のための環境ニュースを配信するほか、ウォーキングコースにチェックポイントを設定したモバイルラリーも実施。「これから順次、蒲郡市ならではのコースを増やしていくなど、楽しみながらご活用いいただけるような仕組みづくりに取り組んでいきたい」と、さらなるアプリ活用への展望を明かした。
10月2日にサービス開始となってから約1カ月で、2,500人以上の市民が登録。実際に登録した市民からは、「健康づくりに取り組めそう」「良いアプリを作ってくれてうれしい」など、好意的な声が多く届いているという北川氏。
蒲郡市では、年度内に3,500人の登録を目指しており、「さらに多くの方に使っていただきたい」と、折込チラシや蒲郡市公式LINEでの告知などの広報活動を実施。「がまポイントアプリ」を通して、市民の行動変容を促し、市民活動の活性化を図り、蒲郡市の将来ビジョンである「豊かな自然一人ひとりが輝きつながりあうまち~君が愛する蒲郡~」を実現するため、市民・事業者・行政が一体となったまちづくりを推進していくとの姿勢を示した。
さらに、「がまポイントアプリ」の利用者が増えれば、健康データをはじめ、多くのデータを収集できる点にも注目。
「そのデータをさらに次の施策に繋げることで、新たな展開も期待できます。今年度は健康事業と環境事業でのポイント付与を進めていますが、来年度以降は関連事業を増やしていくことで、ただのポイント活動で終わらせず、蒲郡市の公式プラットフォームといった位置づけになれば」と今後の大きな成長を熱望する。
そして、「がまポイントアプリ」のサービス開始に至るまで、「初めての取り組みであり、わからないことやつまずきも多かったのですが、細かな質問や悩みに対しても、迅速かつ丁寧に対応していただき、非常に心強かった」とNTT西日本のサポートに感謝の意を示す。
実際、アプリ運用開始当初、交換特典の承認が予定通りに進まず、プロモーションやアプリの利用に影響が出るのではとの危惧もあったが、NTT西日本のスムーズな承認依頼の働きかけや承認後の迅速な対応によって、大きな影響が出ることはなかったそう。
「やはりNTT西日本さんは、様々な技術やノウハウをお持ちなので、その知見を活かしながら、『がまポイントアプリ』を、もっと幅広く活用できるようなお手伝いをお願いしたい」と期待を寄せる。
NTT西日本としても、マイナンバーカードの利活用として、西日本全域で同様の取り組みは検討されているが、今回のポイントプラットフォームアプリの導入は初めての取り組みだったという兼子氏。「運用を進めていく中で、ご要望をお聞きしつつ、開発と連携しながら、さらに活用の幅を広げていきたい」と引き続きのサポートを約束する。続けて、「ソーシャルICTパイオニアとして、地域に根ざし、地域に貢献できるような活動を、蒲郡市さんと伴走しながら、今後も進めていければ」と、さらなる協力体制に強い意気込みを見せた。
蒲郡市では、今後もNTT西日本との協定の下、様々な実証実験などを行い、市民に直結するサービスを模索しながら、まずは「目に見えるDX」を目指していくという岩瀬氏。「何かやっているということをわかっていただく必要があると思っています。データ活用にしても、ただオープンデータを示すだけでは、市民の方にとってはあまり意味がありません。そのデータを使って、市民の方に何かしらの恩恵が出るような取り組みをしていきたい。そのためにも、今後もNTT西日本さんに協力していただきながら、地域のDXを進めていきたい」と今後の方針を示した。