イーロン・マスクは世界屈指の大富豪として知られ、スペースXやテスラなど手掛けたビジネスが次々に成功を収めています。

本記事では日常生活やビジネスで役立つイーロン・マスクの名言を、生い立ち、経歴とともに詳しく紹介します。これらの言葉はどのような経験から生まれたか、真意は何かなどを見ていきましょう。さらに、反面教師としたい迷言も集めました。

  • イーロンマスクの名言集

    イーロン・マスクの名言を、最初の起業当初やテスラ創業時、Twitterの買収時などごとに紹介します

イーロン・マスクの名言と経歴|原点編

イーロン・マスクは、1971年6月28日に南アフリカの都市・プレトリアにて、エンジニアで起業家の父と、モデルで栄養士の母のもとに生まれました。

幼い頃からプログラミングなどさまざまなことに興味を持ち、天才と呼ばれたイーロン・マスクですが、その少年時代は穏やかなものとは言えませんでした。

8歳のときに父の家庭内暴力が原因で両親が離婚し、イーロン・マスクは弟・妹と共に母に引き取られます。その後「父がかわいそうだ」という理由で12歳の頃に父と暮らし始めますが、イーロン・マスク自身が後に「間違いだった」と語ったように、過酷な生活を送ることとなります。

このように持ち前の好奇心の強さ、そして父親からは暴言を浴びせられ、さらに学校ではいじめられる苦しい日々が、やがて多くの名言を生むこととなります。

「世界ってどこにあるの?」

イーロン・マスクは3、4歳の頃、父に「世界ってどこにあるの?」と問いました。幼い子はもちろん、大人でも「自分の生活圏が世界の全て」という人が多い中で、外の世界への好奇心を持つ大切さを教えてくれる名言です。

この好奇心の強さは、両親の離婚後も発揮されました。イーロン・マスクは母の経営業を手伝う中でワープロの仕事を任され、さらに10歳でプログラミングを独学でマスターし、12歳のときには対戦ゲームソフトを自作したのです。

母の勧めでこのゲームソフトを雑誌に投稿したところ、ゲームソフトが売れ、イーロン・マスクは約500アメリカドル相当の利益を得ました。

「私が読んだ本のヒーローたちは、常に世界を救う義務を感じていた」

イーロン・マスクは、家庭では日々父から暴言を浴びせられ、学校でも友達ができず孤立していました。いじめっ子に階段から突き落とされて暴行され、入院した経験があるほどです。そんな中でイーロン・マスクの好奇心は、広い世界に加えて、本の中の世界にも向かいました。

当時のイーロン・マスクは一人で読書して過ごすことが多く、1日10時間も本を読むこともありました。愛読書はSFの巨匠アイザック・アシモフの『ファウンデーション』シリーズや、映画『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの原作としても知られるJ・R・R・トールキンのファンタジー作品『指輪物語』などです。その他にも歴史、経済学、科学など、多岐にわたる本を読んでいました。

そして後に「私が読んだ本のヒーローたちは、常に世界を救う義務を感じていた」と語ったように、「自分自身も世界を救いたい」という気持ちを強めていったのかもしれません。

「私は苦しみが原点なのです。だから、ちょっとやそっとでは痛いと感じなくなりました」

イーロン・マスクの初の公式伝記『イーロン・マスク』(著・ウォルター・アイザックソン、訳・井口耕二)には、「私は苦しみが原点なのです。だから、ちょっとやそっとでは痛いと感じなくなりました」という彼の言葉が記されています。

家庭で父親に精神的な虐待をされ、学校では壮絶ないじめを受けた結果、恐れや共感、喜びなどの感情がシャットアウトされた性格が形成されたのかもしれません。

経営者となったイーロン・マスクは、大量解雇など情にとらわれない決断力や、失敗を恐れず挑戦する勇気でも知られています。つらい経験は決して無駄でなく、行動力の源泉となることを示す名言です。

イーロン・マスクの名言と経歴|大学時代・最初の起業当初編

  • イーロン・マスクの名言【大学時代・最初の起業当初編】

イーロン・マスクは父と暮らした後、18歳で母の出身国であるカナダに単身で移住し、親戚の家で暮らしました。しかし、移住当初は木の伐採やボイラー清掃などの労働に従事しなければならず、クイーンズ大学に入学できたのは1990年、19歳の頃です。

奨学金を得て、2年後の1992年にアメリカのペンシルベニア大学ウォートン校に編入し、物理学と経済学の学士号を取得しました。その後1995年にはスタンフォード大学大学院に進学しますが、なんと2日で退学してしまいます。

退学の理由は、「Webサイト開発支援ソフトウエアを提供する企業を立ち上げる」というものです。母に仕事を任された幼少期の経験も後押ししてか、イーロン・マスクは24歳で初めての起業をしました。

「人類の未来にマクロレベルで影響を与える可能性が最も高いものは、インターネット、持続可能エネルギー、複数の惑星での生活かなと」

2015年のイベントにおいてイーロン・マスクは、大学生だった頃に上記のように考えていたと述べています。

イーロン・マスクが大学生だった1990年代前半はインターネットや持続可能エネルギーは普及しておらず、民間人による宇宙旅行も実現していませんでした。現在ではなく将来に目を向ける先見の明があったからこそ、イーロン・マスクは成功を収めたと言えるでしょう。われわれも、今存在するニーズだけでなく、常に先を見据えることが大切です。

なおこの名言を述べたとき、インターネット、持続可能エネルギー、複数の惑星での生活以外にも、遺伝学と人工知能も候補として挙がっていましたが、その2つは危なっかしいところがあると思ったということです。

「貧しくてもハッピーであることはリスクを取る際に非常に大きな助けになります」

イーロン・マスクのビジネスは常に順風満帆だったわけではありません。最初に手掛けたZip2の創業当時は貧しく、賃貸オフィスに住み込みで働き、近くにあったYMCA(キリスト教青年会)の施設でシャワーを借りるほどでした。

起業する人に限らず、なかなか金銭的自由を得られないことはあります。しかし追い詰められて心を乱されていると、正しい判断ができないこともあるでしょう。だからこそ、貧しくても状況を前向きに捉えてハッピーでいることが、心の冷静さを生み、最適解を出すことにつながるということを、この名言は教えてくれていると言えます。

「一緒に働いている人を好きになることはとても大切だ」

この名言には「さもなければ、あなたの仕事は、とても惨めなものになるだろう」という言葉が続きます。

一人でできることには限界があります。大きな仕事ほど、仲間を信じ、共に挑戦してこそ未来は開けると述べた名言です。

イーロン・マスクが24歳で起業したZip2の経営には、実の弟であるキンバル・マスクも携わりました。

さらにイーロン・マスクは4年後の1999年、コンパックにZip2を3億700万ドルで売却し、同時に現ペイパルの前身でもあるXドットコムを起業しています。

初期のペイパルの経営陣には、投資家ピーター・ティールやYouTube創業者のチャド・ハーリー、リンクトイン創業者のリード・ホフマンなど、今見るとそうそうたるメンバーがそろっていました。

イーロン・マスクの名言と経歴|ペイパルを売却しスペースXとテスラを創業した頃編

  • イーロン・マスクの名言【ペイパルを売却しスペースXとテスラを創業した頃編】

イーロン・マスクが2番目に起業したXドットコムはインターネット上の決済サービスの会社で、コンフィニティとの合併後にペイパルへと社名を変更しました。イーロン・マスクは2002年にこのペイパルの株式を売却し、ロケット開発会社のスペースXを創業。さらに2004年には電気自動車のテスラに出資を行います。

スペースXとテスラは、2023年現在も世界のイノベーションをけん引し注目され続けている企業です。しかし意外なことに、イーロン・マスク自身は事業の成功を確信していなかったことが、当時を振り返った名言からうかがえます。

物事の本質は、単にそのときの成功や失敗ではないということでしょう。以下の名言を通じて、より詳しく見ていきましょう。

「失敗の確率を受け入れるだけで、恐怖心は薄れる」

「イーロン・マスクは成功を確信して起業したのだ」という見方があります。しかし実際は逆で、彼はあるインタビューで「スペースXを立ち上げたとき、成功する確率は10%以下だと思っていました」と答えているのです。しかし「失敗する恐怖があったとしても、挑戦する価値があると判断したから挑戦した」とも述べています。

そしてさらに「失敗の確率を受け入れるだけで、恐怖心は薄れる」と続けています。

「絶対に成功しなければならない」「失敗したらどうしよう」と考えて不安になるのではなく、「失敗する可能性もあるがベストを尽くそう」「たとえ失敗したとしても次の成功につながる」と考えることの大切さを、この言葉は教えてくれています。

「リスクとリターンのバランスが保たれていて、大胆な行動をとることが有利な状況になければ、イノベーションは起こらない」

イーロン・マスクが、2014年にノルウェーの国際会議で発した名言です。失敗を恐れず受け入れてこそ成功につながる、という姿勢が一貫しています。

「大企業病」という言葉があるように、成熟した組織や個人はローリスク・ローリターンな選択をしがちです。しかし、何か新しい価値あるものを生み出すためには、リスクを恐れずに大胆な行動に出なければなりません。またそのために、組織は個人が挑戦しやすい環境を整えるべきなのです。

「世の中にあったらいいなと思う、便利なものは何だろう?」

イーロン・マスクは幼い頃に読んだSFやファンタジーの本に出てくるヒーローに憧れ、夢を実現させてきました。しかしその夢は、決して自分中心の独りよがりなものではありません。そんな彼が2015年に、ビル・ゲイツ氏との対談の中で述べた名言が「世の中にあったらいいなと思う、便利なものは何だろう?」です。

単に自分が好きなものやお金を稼げそうなことではなく、多くの人に必要とされる仕事をした方が、より大きな成功につながるということです。イーロン・マスクが経営するスペースXやテスラの社会への貢献を見れば、説得力を感じられるのではないでしょうか。

イーロン・マスクの名言と経歴|Twitterを買収しXに改名した頃編

  • イーロン・マスクの名言【Twitterを買収しXに改名した頃編】

イーロン・マスクは、2022年4月から10月にかけて大手SNS会社のTwitter社を買収。2023年7月には、ブランド名称も「X」へと変更しました。急な名称変更に加え、「ブロック機能を廃止する」「有料化する」などといったイーロン・マスクの発言に、多くのユーザーが戸惑いました。

大胆な改革は反発も招いていますが、イーロン・マスクの行動の根底にあるのは「旧Twitterの経営難を解消し、より素晴らしいサービスにしたい」という意思のようです。ここでは、Twitter買収前後の名言を紹介します。

「次のレベルのゲームがしたい」

スペースXとテスラを成功に導いたイーロン・マスクが、Twitterの買収を開始した2022年4月に語った言葉です。

彼は現状に満足せず、常に新たな挑戦を続けています。ビジネスの挑戦に終わりはないことを示す名言です。

「言論の自由は、民主主義が機能するための基盤である」

Twitter買収の理由を示す名言が「言論の自由は、民主主義が機能するための基盤である」です。また彼は「Twitterは人類の未来に不可欠な事柄が議論されるための、デジタル上の街の広場だ」と続けています。誰もが大統領や大企業経営者と同等の発言権を有する、Twitterの意義を評価しています。

賛否が分かれる問題があるときに、一部の人だけが発言したり、賛成・反対いずれかの意見が優遇されたりするのは不公平です。誰もが自由に発言できるTwitterを守るためにこそ、イーロン・マスクは買収を決断したと言えます。

この名言は、われわれの日常生活や仕事においても、常に覚えておきたい言葉です。知らず知らずのうちに一部の人の声が大きくなっている状態や、発言ができないように押さえつけられている状態は、不健全と言えるでしょう。

「自分は本気だと宣言するやつだけに残ってもらう」

イーロン・マスクはTwitterの買収後、経営再建のため従業員の削減に取り掛かりました。そのとき腹心に語ったのがこの言葉です。つまり、やる気がない従業員に会社を辞めてもらうことを意味します。

ダラダラと無気力に過ごして給料を受け取る従業員は会社にとって迷惑ですし、本人のキャリアアップにもつながりません。一見すると冷酷ですが、Twitterをより良い会社にするため、熱意を持って仕事に取り組む人材に残ってもらいたいという意図で発せられた名言です。

【番外編】論争を招いたイーロン・マスクの迷言集

  • 【番外編】論争を招いたイーロン・マスクの迷言集

イーロン・マスクは多くの名言を残してきた一方で、歯に衣(きぬ)着せぬこともあって「迷言」が批判を集めることもよくあります。次に紹介するのは、反面教師となるイーロン・マスクの迷言です。

「地獄のように働こう」

前述のように、イーロン・マスクが2つ目に立ち上げた会社はXドットコムです。インターネット上の決済サービスの会社であるXドットコムは、コンフィニティと合併し、ペイパルとなりました。

それまで、Xドットコムはマイクロソフト上にシステムを構築しており、コンフィニティはLinux上にシステムを構築していました。そしてイーロン・マスクは2社の合併後に、このLinux上にあるコードベースを、マイクロソフト上のコードベースに書き直し、統一することを提案します。

しかしエンジニアたちは、この提案に消極的でした。そこで彼らに向けて、イーロン・マスクはメールを送ります。そこには期日までに完成したら一人あたり最大5,000ドルの報奨金を出すこと、そして結びに「地獄のように働こう」と記されていたのです。

このメールをはじめとして、当時のイーロン・マスクは現場を理解せずむちゃな要求をしたため、社内では彼に対する反発と、元コンフィニティ側への支持が高まることになりました。

こうしてイーロン・マスクは、ペイパルのCEOの座を追われることとなりました。高い目標や自分に厳しいことは大切であるものの、他人にまで度を過ぎて押し付けると、混乱を招くという実例です。

「テスラの株価は高すぎる」

イーロン・マスクは、過激なツイートが多いことでも有名です。

例えば2018年4月1日に騒動を起こしたツイートが「テスラは破産した」です。このときはエイプリルフールのうそでしたが、同年8月のツイートでは「テスラ株を買い戻して非公開化する」と冗談を述べ、米証券取引委員会に2000万ドル(約21億円)の罰金を科せられました。

さらに2020年5月には、「テスラの株価は高すぎる」とツイートし、時価総額をなんと約140億ドル(約1兆5000億円)も下落させています。

これらのことから得られるのは、「たとえ冗談でも、真に受けられたら困ることは言うべきでない」という教訓です。

天才起業家イーロン・マスクの型破りな名言を、ビジネスに生かそう!

イーロン・マスクはドラマチックな半生を送り、新事業への取り組みや言動が世界中に注目され続けるビジネスパーソンです。誰もが起業をするわけではありませんが、ビジネスシーンや日常生活でイーロン・マスクの名言を生かすことはできます。

イーロン・マスクの型破りな言動は時に批判を集めることもありますが、それは非凡な発想と行動力を持っていることの裏付けとも言えます。イーロン・マスクの名言を参考にして、ぜひ目標を達成するための行動を起こしましょう。