「どこに住むか?」という条件を考える時、「近くに緑地や公園などがある」という点を考える方は多いでしょう。特に子育て世帯の方であれば、教育施設の他に「公園が近くにあるマンション」を選びたい、と必須要件としている方も少なくないと思います。
一方で、公園や緑道、水辺など開放感や自然と触れ合える住環境のニーズは、家族形態を問わずいつの時代も強くあります。最近は特にテレワークの浸透により、単身者や子どものいないDINKsにも人気が上昇。自宅の敷地内に庭などのスペースを持つことができる戸建てに対して、マンションではそうした空間を建物の外に求めるしかありません。言い換えれば、都市部において「公園が近い立地のマンションは、将来的にも一定のニーズを見込むことができる=資産価値が落ちづらい」ともいえます。
そこで今回は、「公園」に着目しておすすめの街をご紹介します。いろんな角度から、「公園が多い街」を特徴ごとに見てみますので、ぜひ「住みたい街選び」の参考にしてみてください。
■欲しいのは近さか広さか? 自分が欲しいのは「どんな公園」?
一言で「公園が近いマンション」や「公園が多い街」と言っても、公園にも様々な種類があります。
子どもが日常的に遊べる場所を確保したいのか、休日にリフレッシュできる場所が欲しいのか、など、それぞれの使い方に応じて、選ぶべき場所も変わってくるでしょう。
ここで一つデータを見てみましょう。こちらは「公立公園」と呼ばれる区分の公園が東京23区にどれだけあるかを見てみたものです。
(※東京都建設局が公表している『公園調書』(令和5年4月1日版)をもとにランキング化しています)
こちらの表を見ていただけるとわかる通り、実は面積で見ると江戸川区が1位。しかも2位の江東区に1.5倍の差をつけての堂々たる首位です。一方で数でいうと、顔ぶれが大きく変わります。練馬区が1位に。そしてここでも2位の世田谷区の1.2倍という数値でトップを走っています。
また切り口を変えてみましょう。面積や数ではなく、公園をその区の人口で割った「区民一人あたりの公園面積」で見ると・・最初に見た「公園の面積ランキング」と、1~3位がまったく同じ結果になりました。ここから、この3区(江戸川区・江東区・足立区)は「公園の数は少ないが、面積が広大な公園がある」ことがわかりますね。
それでは、この3つのランキング結果に沿って、「公園が身近な街」として不動の強さを見せた3区を解説していきましょう。
【1位】江戸川区: 23区でダントツの公園力を示す
江戸川区は、一人あたりの公立公園面積が11.29平米。2桁台なのは、実は江戸川区のみです。公園数で見ると多少順位は下がるものの、それでも23区の中で上位5位。「公園大国」といっても過言ではないほどの「公園充実っぷり」を見せています。
というのも、地図で調べれば一目瞭然なのですが、江戸川区は河川で囲まれた区。その多くを緑地や公園としているのです。また、区の真ん中を貫く新中川と中川は利根川水系の一級河川ですが、どちらも沿岸の大部分が緑地・緑道となっています。遊具が豊富な公園ではありませんが、まっすぐと続く道は開放感があり、ランニングや散歩に最適です。
また、代表格といえるのが、区の最南端に位置する葛西臨海・海浜公園でしょう。一周17 分間の大観覧車をはじめ、臨海水族園、区立のホテル「ホテルシーサイド江戸川」、磯遊びのできる人工なぎさなど、レクリエーション施設が豊富に揃う広大な公園です。とはいえ先述した通り、葛西臨海・海浜公園のような大規模公園ばかりでなく、野球場やバーベキュー場などがある公園が区全域に豊富であるのは、川に囲まれ緑地の多い江戸川区ならではです。
区の公式サイトには江戸川区内の公園・児童遊園を調べることができる「えどがわマップ」が用意されています。「ジャブジャブ池」がある公園など、ほしい条件でリサーチできるようになっており、休日のおでかけ先を決めるのにはもちろん、公園が近い街探しをするのにも活用できます。
【2位】江東区: スポーツ色の強いアクティブな公園が特色
2位となった江東区も、水辺との深い繋がりがある区です。区の東側は荒川、西側は隅田川が流れ、南側は東京湾に面しています。そうした土地の利もあり、海上公園の数は19。区内でダントツの数です(※注 海上公園とは東京都港湾局が設置する公園。江戸川区では葛西海浜公園の一つのみ)。豊洲・東雲・有明などのタワーマンションが立ち並ぶ湾岸居住エリアにも計画的に緑地が配されています。
特に存在感を示すのは、辰巳、新木場方面です。辰巳の森海浜公園は、バーベキュー広場やドッグランのほか、8種目のニュースポーツができるアクティブな公園。新木場駅のある夢の島は、全体が公園・緑地。熱帯植物館があるほか、バーベキューが楽しめたり、各種競技場にレストランも。さらに南端にある若洲海浜公園には、ゴルフ場が。人工磯で海釣りも可能です。
オリンピック会場跡地の開発で、2024年開業を目指して有明アーバンスポーツパークの整備が進む有明を抱える江東区は、スポーツを親しめるアクティブ色の強い公園が多いことが特色です。有明の完成以降は、ますますスポーツと親しむ環境、土壌が整うことでしょう。お子さまに活発に運動に親しんでほしい、快活に走り回ったり体を動かす環境を、という親御さんは注目したいエリアです。
【3位】足立区: 農業体験など自然とともにある暮らしを学べる
3位は足立区。こちらも区の南側を荒川と隅田川が通る水辺エリアです。足立区を代表する公園の一つが、舎人公園。ここは、23区で3番目に面積の広い公園です。公園内には、ガマやアシが自生する大池があり、カルガモなどの鳥類や魚、昆虫などが生息しています。ソリゲレンデや水遊びができる池などの遊び場に加えて、野球場やテニスコート、陸上競技場、キャンプ広場などの施設もあるため、幅広くレジャーを満喫できるでしょう。
また、足立区で特徴的な公園といえば、足立区都市農業公園。この公園は「自然と遊ぶ、自然に学ぶ、自然と共に生きる」をテーマにしており、水田、畑、古民家など、暮らしと農業が近くにあった昔ながらの日本の風景を感じることができる施設となっています。園内の田んぼや畑では農業体験ができたり、紙すき・染色などをできる工房も。約50種250本の五色桜、3万5千球のチューリップ花壇など、四季折々に楽しめる花々のスケール感も別格です。
広大な敷地を生かした豊かな自然と触れ合う機会をつくることを念頭に設計された公園が多い印象です。都内にいてもなるべくより自然に近い環境で暮らしたい、農業や地方移住に興味がある人にはぴったりかもしれません。
■「面積」なら東京の東側、「数」なら東京の西側
いかがでしたでしょうか。トップ3区だけでも、多様な公園があることがおわかりになったかと思います。ちなみに面積で見るとやはり、水辺が多く埋め立てによって近年整備された歴史的背景を持ち計画的に公的な緑地が整備されてきた、東京の東側に軍配が上がります。対して、公園の数で比較すると練馬区、世田谷区と、東京の西側も負けていません。
実は公園数で見ると、ここでも1位とそれ以降の順位に圧倒的な差があります。
【1位】練馬区: 696
【2位】世田谷区: 567
【3位】大田区: 554
【4位】足立区: 500
【5位】江戸川区: 498
【6位】板橋区: 344
【7位】杉並区: 339
【8位】葛飾区: 318
【9位】江東区: 293
【10位】品川区: 281
小さくても良いから家のすぐ近所に子どもを遊ばせることができる児童公園が欲しいのか。 広々としたアトラクションもある公園が徒歩や自転車で行ける範囲に欲しいのか。 ランニングや犬の散歩をするための、開放的な緑地があればいいのか・・。
「緑地の近くに住みたい」と考えて住まいを探す時、それはどんな緑なのか、こんな視点で見てみるとエリア探し、物件探しも効率的に進むでしょう。
・緑地か水辺か
・遊具などのレクリエーション要素があるか
・ボール遊びなどの球技はOKか
・自然との触れ合える程度はどのくらいか
・人工的に整備された緑地か、なるべく自然のままの緑地か
すでにエリアの見当がついている方は、実際に住むことになる物件の近くに公園があるのか、それはどんな公園か(遊具があるのか、庭園風の公園なのか、グラウンドなのかなど)、改めて確認してみてください。立地によって、日々の暮らしは想像以上に変わってきます。自分や家族がどのようなライフスタイルを送りたいかを考えてみると、自分にふさわしい緑地環境のバランスが見えてくるでしょう。
コロナ禍を経て大きく変わった私たちのライフスタイル。家の中や住まいの近所で過ごす時間が増えた結果、住まいに対してより「広さ」を求める傾向が強まりました。しかし実際には、広さを求めれば求めるほど、価格は上がってしまうもの。家の外に、のびのびできる緑地や公共空間があれば、家の中に開放感を求めなくても、解決できることもあるかもしれません。ぜひ「住まい」を広い視野でとらえて、柔軟に、ご自分にとってより良い条件の物件を探してみてください。思わぬ暮らしと未来が、そこに待っているかもしれません。