JR東海は12日、新幹線(営業列車)の高速走行中に検査可能な新しい架線検査装置を開発したと発表した。今回開発した「架線三次元検測装置」と「電車線金具異常検知装置」は、300km/hまで高速走行中に架線の細部にわたって検査できる国内初の技術だという。

  • 東海道新幹線における架線の外観検査は現在、「ドクターイエロー」による検測と日々の沿線徒歩巡回等により実施されている(写真は2018年9月の「新幹線なるほど発見デー」取材時に撮影)

東海道新幹線では、列車の安定輸送にとって重要な架線の維持管理のため、「ドクターイエロー」による検測のほか、日々の沿線徒歩巡回等による架線の外観検査を実施している。今回開発した「架線三次元検測装置」と「電車線金具異常検知装置」は、この外観検査の高頻度化と、今後の労働力不足を見据えた省力化を目的に、営業列車で架線を検査する装置となる。

「架線三次元検測装置」は架線同士の位置関係を測定。複数の架線が交わる箇所(架線交差部)等は、その位置関係次第で列車走行時にパンタグラフや架線自体の損傷につながる可能性があるため、厳密に管理する必要がある。従来、架線交差部等において、架線の高さおよび架線同士の間隔を人が器具で現地測定していたが、「架線三次元検測装置」の導入により、高速走行中でも架線の位置関係を三次元的に測定でき、その良否を自動で判定することが可能になる。

  • 「架線三次元検測装置」を搭載した車体屋根上(提供 : JR東海)

  • 「架線三次元検測装置」の構成(提供 : JR東海)

  • 「電車線金具異常検知装置」を搭載した車体屋根上(提供 : JR東海)

  • 「電車線金具異常検知装置」の構成。屋根上の左右に設置している(提供 : JR東海)

「電車線金具異常検知装置」は電車線金具の異常を検出する装置。従来、沿線40万個に及ぶハンガ等の電車線金具は、地上からの目視による外観検査と夜間の保守用車等を使用した至近距離からの検査を組み合わせて実施していた。「電車線金具異常検知装置」の導入により、高速走行中に金具の画像を撮影し、AIを用いて金具の変形や破損等の異常を自動で検出可能となる。時刻や周辺環境にかかわらず、300km/hの高速走行時でも金具を細部まで安定的に撮影できるとのこと。

今回開発した装置で取得したデータを今後整備するミリ波方式列車無線で伝送し、架線の状態変化を早期に発見することで、タイムリーな保守作業が可能に。作業員が日々全線の各地で実施している徒歩巡回等による外観検査や夜間の測定作業の削減につながり、同社が現在推進している「業務改革」にも資する取組みになるという。

今後、装置の長期耐久性など営業列車への搭載に向けた検証とさらなる精度向上を行い、ミリ波方式列車無線(2027年運用開始予定)運用開始後の活用を見込んでいる。