11月10日(金)・11日(土)の第36期竜王戦七番勝負第4局(主催:読売新聞社)では伊藤匠七段を下して、ストレート勝ちで竜王三連覇を達成。2024年1月7日(日)・8日(月)には、菅井竜也八段を挑戦者に迎えた第73期ALSOK杯王将戦七番勝負(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)の第1局が控えている藤井聡太竜王・名人。本稿では11月28日に発売された、『【増補改訂版】藤井聡太の軌跡 愛知の少年はいかにして八冠になったか』(著者=鈴木宏彦、販売=マイナビ出版)より、抜粋してお送りいたします。
著者の鈴木宏彦氏は藤井竜王・名人と同じ愛知県出身でメディアで注目される前から交流のあった観戦記者です。書籍では鈴木氏のみが知っているエピソードや秘蔵写真が多数公開されていますが、その中で、藤井聡太竜王・名人のぶれない思いが感じられる2021年のインタビューをご紹介します。
18歳の二冠時代、年度最終局となった2021年3月23日の第34期竜王戦2組ランキング戦準決勝で、後手の松尾歩八段相手に放った棋史に残る絶妙手「▲4一銀」で世の将棋ファンの度肝を抜きました。これはその翌日に行われたインタビューです。
(以降、インタビュー文 鈴木宏彦)
自分より若い方たちがどんな将棋を指すのかは興味がある
──最年少タイトルを取った2020年度はどんな年でしたか。
藤井「タイトルを取ったと言っても、いつ失うかわかりません。なので、タイトルを取ったからといって特に自分の気持ちが変わるわけではありません。ただ、大きな舞台で結果を出すことができたのは、大きなことだと思っています。トップの方とたくさん指せて充実感もありました」
──4年連続勝率8割は文句なしの新記録です。
藤井「今年度は9、10月に負けが込みましたが、そのあと立て直すことができて、なんとか8割をキープできたのはよかったと思います。とはいえ、タイトルを取る前の自分と比べて今の自分がどれだけ強くなったかは微妙なところ。数字にこだわるより、長期的に見て実力を上げることが重要だと思っています」
──ご自分の将棋のレベルが上がると同時に、AI環境のチューンアップもされているんですよね。
藤井「これまで使っていたソフトに加えて、最近はディープラーニングを使った将棋ソフトがかなり強くなったので、それも使うようになり、そのためにグラフィックボードを買い足しました」
──藤井さんが作った波が新たな将棋界を作りつつあることを実感します。藤井さんよりさらに若い棋士も出てきました。
藤井「後輩が出てくるのは自然なことですから、特に意識することはありません。ただ、世代によって指す将棋が変わってくることはあると思う。だから、自分より若い方たちがどんな将棋を指すのかは興味があります」
──2021年度の目標は。
藤井「6月からタイトルの防衛戦が始まるので、まずはそこに向けて調整をしたい。あとは、他棋戦でも活躍できるように頑張りたい」
──もう一度29連勝をしたいという気持ちはありますか?
藤井「それはまったくありません(笑)」