残すところ2回となった大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)。本作の脚本を手掛けた古沢良太氏にインタビューし、強烈なインパクトを残した豊臣秀吉役のムロツヨシや、コミカルなシーンも話題となった服部半蔵役の山田孝之など、個性豊かなキャラクターたちについて話を聞いた。
■ムロに感謝「台本では表現できないこと演技で表現してくださった」
『リーガル・ハイ』『コンフィデンスマンJP』シリーズなどで知られる古沢氏。本作では、江戸幕府を開いた徳川家康の生涯を新たな視点で描き、その新しい家康像を松本潤が10代から演じてきた。
家臣団をはじめ、個性際立つさまざまなキャラクターも次々と登場。古沢氏は「すべての役に愛情を込めて書いた」と言い、「すべての回で皆さん素晴らしい演技をしてくださった」と俳優陣を称えた。
特にムロツヨシの怪演が話題となった豊臣秀吉は強烈なインパクトを放ち、何を考えているのかわからない秀吉をムロは“ダークピエロ”と表現していた。
古沢氏は、ムロの演技を「最高でした」と絶賛。現場でムロと会った際に、本人にも「秀吉最高でした」と伝えたそうで、ムロは「怖くて聞けなかったんですよ~」と話していたという。
そして古沢氏は「秀吉はモンスターだと思いますが、得体の知れないバイタリティと、誰の懐にでも入っていく厚かましさと、でも結局何を考えているかわからない恐ろしさみたいなものもある。そういったなかなか台本では表現できないことをムロさんの演技でちゃんと表現してくださったなと思っていて、すごく感謝しています」と語った。
■「瀬名奪還作戦」で「忍者の生き様を表現できて面白かった」
イメージを膨らませてストーリーを考えるのが楽しいという古沢氏。服部半蔵(山田孝之)らが駿府に捕らえられている瀬名(有村架純)を取り戻そうとした第5回「瀬名奪還作戦」は、まさに想像力を働かせて自由に作った回だったという。
「忍者の話をやりたいなと思って第5回で瀬名を奪還しにいく話を勝手に作りました。歴史上あんなことはないですが、ただ失敗するという何も進展しない回を作り、忍者の生き様を表現できて面白かったです」
忍びではなく武士だと主張してもなかなか認めてもらえないというやりとりなど、半蔵はコミカルなシーンも多かった。
「服部半蔵は一般的に忍者と言われているけど、実際は武将なんですよね。前の代はわからないですが彼自身は武士だと考えると、忍者みたいに書くとちょっと違うと思い、本人は武士と言っているけど、周りからは忍びとしか思われていないというキャラクターかなと思い、自然とあんな感じになりました」
そして、「山田孝之さんが素晴らしかった」と山田の演技も称賛。「山田さんがやってくださるとも思ってなかったんですけど、出番はたくさん書かせてもらいました」と話していた。
■小豆にまつわる逸話を人物に見立てた阿月の物語も「楽しかった」
お市(北川景子)の侍女・阿月(伊東蒼)が金ヶ崎へと走り、家康に浅井・浅倉に挟み撃ちにされるピンチを伝えた第14回も、書いていてとても楽しかったという。
これは、お市が袋の両端を縛った小豆を信長に送り、挟み撃ちのピンチを伝えたという逸話をもとに、古沢氏が小豆を人物に見立てて描いたオリジナルストーリーで、命をかけた阿月の激走が涙を誘った。
古沢氏は「歴史の裏側の話を自分なりに想像力を膨らませて書いていた時は楽しかったです」と振り返り、「小豆の袋が届いても挟み撃ちを伝えようとしているとはわからないだろうと。あの逸話も後世の創作で、その当時の僕みたいな人が作ったのでしょうから、現代の僕がもっと後世の創作をしてもいいんじゃないかと思い、新しい逸話を作ろうと思いました」と説明。完成した映像も大満足だったようで、「すごくよかったと思います。演じてくださった伊東さんも素晴らしかったですし」と語っていた。
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