アジア圏最大級のコンペティション、Asian Academy Creative AwardsのBEST SCREENPLAY(脚本賞)でNetflixドラマ『サンクチュアリ-聖域-』が最優秀賞を受賞。脚本を担当した金沢知樹氏が、7日にシンガポール・CHIJMES(チャイムス)で行われた授賞式直後に喜びと感謝を語った。

  • 金沢知樹氏

■Netflixドラマ『サンクチュアリ』脚本、アジア最大級のコンペで最優秀賞

2023年5月4日よりNetflixで全世界配信された同作は、2022年公開の映画『サバカン SABAKAN』などを手掛ける金沢氏脚本のオリジナル作品。世界的な知名度を誇り、1,500年以上の日本の伝統文化として、また神事として、神秘のベールに包まれている大相撲の世界をテーマに、崖っぷちに追いやられた1人の若者が力士へと上り詰めていく物語を描く。配信後すぐに日本で連日1位を獲得し、世界50以上の国と地域でもTOP10入りするなど国内外で注目を集めた。BEST SCREENPLAY(脚本賞)では、事前に優秀賞に選出されていた9カ国の作品の中から最優秀賞を授賞式で発表。見事『サンクチュアリ-聖域-』がナンバーワンの座に輝いた。

■完成待たず他界した父は「『サンクチュアリ』好きになってくれたと思う」

受賞の瞬間、「マジか」と小さくつぶやいていた金沢氏は、「受賞は絶対にないと思っていたのでビックリしました」と授賞式終了後もまだ信じられない様子。母親にすぐ報告したが、「信じられないって言ってます」と親子で同じ反応だと明かす。最優秀賞発表の前には、ノミネート作品が会場のモニターに数秒ずつダイジェストで流され、各国のゲストが真剣な表情で見つめる一幕が。「どうせ最優秀賞なんて無理だろうなって思っていたし、獲りたいなんて考えないようにしていたんです。でも、会場で一斉に『サンクチュアリ』の映像が流れたのを見たとき、初めて『賞を獲りたいな』って欲が芽生えました」。それは金沢氏にとって、『サンクチュアリ』が世界で勝負できる作品になっていることが、身をもって実感できた瞬間だったのかもしれない。

登壇後のスピーチで口をついて出たのは「相撲の面白さを教えてくれた父親に捧げたい」という父への思いだった。「父ちゃんがよく寝っ転がって相撲を見てた光景をフッと思い出したんですよね」。金沢氏の父は、『サンクチュアリ』の完成を待たずに他界している。「見てないどころか、作ってたのも知らないし。でも、父ちゃんはきっと『サンクチュアリ』を好きになってくれたと思います。よく言ってくれてたんですけど『よか息子ばい』って褒めてくれたんじゃないかな」と想像し、「子どもの頃から勉強ができなくて、スポーツもできなくて、賞なんてもらったことのない人生でした。最高の思い出になりました」と改めて喜びを噛み締めた。

■日本のエンタメを一枚岩になって盛り上げたい

またDIRECTION(監督賞)では、水野格監督が手掛けた日本テレビ系ドラマ『ブラッシュアップライフ』(英題:Rebooting)が最優秀賞を受賞し、金沢氏は「全体的に日本のノミネート作品が少ないな、と寂しい気持ちになっただけに、監督賞と脚本賞を日本の作品で受賞できたことがすごくうれしかったです」と喜ぶ。監督と脚本、作品を担う2つの柱で日本が一番になったことが、日本のエンタメ界の新たな躍進の第一歩となる可能性も。金沢氏は、何かをきっかけに海外の視聴者が日本の作品に触れたとき、2作品目、3作品目と続けて魅力的な日本の作品に出会えるような“層の厚さ”の実現が、日本のエンタメ界が強くなる鍵だと持論を述べる。「国内で競い合うのではなく、世界へ向けて一枚岩になって日本のエンタメ界を盛り上げていきたい。そんな気持ちがより強くなりました」。

最後に金沢氏は「『サンクチュアリ』が口コミで火がつき始めたとき、視聴者の皆さんが、『まだまだ日本はやれるんだよ!』って、まるで日本代表を応援しているような熱量で応援してくれました。その声援に背中を押されての受賞だと思っています。そして、今回は脚本賞の受賞ではありますが、役者の皆さんとスタッフの皆さんのおかげで受賞できたことはもう間違いないので、“ありがとうございます”と同時に、“おめでとうございます”と伝えたいです」と感謝を述べた。