第37期竜王戦(主催:読売新聞社)はランキング戦が開幕。12月7日(木)には1組1回戦の羽生善治九段―久保利明九段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、相穴熊の熱戦を138手で制した久保九段が好スタートを切りました。
いきなりのゴールデンカード
今期のランキング戦1組は17名からなるトーナメントと出場者決定戦を勝ち抜いた合計5名が本戦に出場します。前シーズン5組からの躍進で竜王挑戦を果たした伊藤匠七段は今期1組で参加となります。開幕局となった本局、振り駒で後手となった久保九段は三間飛車穴熊の作戦を明示します。
久保九段の戦型選択に対し先手の羽生九段は居飛車穴熊で対抗。ともに自玉を金銀4枚の堅陣に収めて戦いの時を待ちます。間合いの計り合いののち、戦端が開かれたのは意外にも両者の囲いが控える左辺側でのことでした。角と銀の総交換が行われて盤上は一段落です。
アーティストのさばき
飛車を自陣にとどめたまま馬を主軸に攻めを構築するのは両対局者共通の方針。限られた攻め駒で手を作るのが難しい中、ここから久保九段の指し手が冴えわたりました。歩の手筋連発で先手陣を乱しておいてから自陣の飛車を活用したのが攻め駒補充の切り札です。
押さえ込みを図る羽生九段の銀打ちに対し、すぐさまこの飛車を切り飛ばしたのがさばきのアーティストの面目躍如でした。「終盤は駒の損得より速度」を地で行く猛攻が厳しく、ここから徐々に久保九段の優勢が確立されます。
終局時刻は20時57分、最後は自玉の受けなしを認めた羽生九段が投了。快勝で開幕戦を制した久保九段が決勝トーナメント入りに向け好スタートを切りました。久保九段は次局で渡辺明九段―丸山忠久九段戦の勝者と対戦します。
水留 啓(将棋情報局)
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