2023年も残すところあとわずか。アフターコロナの今年は、忘年会を開催しようとする人も少なくないはず。お酒を酌み交わしながら1年を振り返ろうと思う人に届けたいのが「二日酔い」に関する知識。
手軽に取り入れられる予防策をはじめ、気持ち悪くなったときの対処法など上場企業産業医の甲斐沼孟先生に伺いました。忘年会シーズンの今知っておきたい二日酔いの知識を、ぜひ手に入れておきましょう。
■二日酔いの原因って?
――そもそも「二日酔い」はなぜ起こるのでしょうか?
お酒を飲みすぎた翌日などに引き起こされる吐き気や頭痛などの不快な症状を「二日酔い」と呼んでいます。二日酔いとは、過度なアルコール摂取によって頭痛、吐き気、胸やけ、眠気などの症状が翌日まで続く症状のことであり、時間が経過すると自然に改善していくのが特徴です。
一般的にお酒の成分であるアルコールは肝臓で代謝されて、酵素などの働きで「アセトアルデヒド」という物質に分解され、そこからさらにアセテート(酢酸)という成分になることが知られています。二日酔いが起こる原因は、アルコールが分解されてできる「アセトアルデヒド」が、肝臓で十分に処理されないためと考えられています。
二日酔いは、一般的に医学的な病気とは考えられていませんが、重度な場合は社会生活に支障をきたすケースもあります。この二日酔いの発症メカニズムは詳細に分かっていない部分も多く、時間が経過して症状が改善するのを待つしかない場合も少なくありません。
また、二日酔いは過度なアルコールを摂取した人すべてに起こるわけではなく、体質や体調などに左右されやすいといわれています。
■予防策として何ができる?
――二日酔いの予防法について教えてください!
予防法1: 飲酒中に水を飲む
お酒を飲む前後や、飲んでいる最中に水を同時に飲むことで、体への負担を減らして、飲みすぎを予防することができます。
特にアルコール度数の強いお酒を飲むときには、飲酒している合間でチェイサーと呼ばれる和らぎ水をはさみましょう。アルコール濃度を薄めることができますし、飲酒するペースを落ち着かせる効果が期待できます。
予防法2: 空腹時を避け、食事をしながら飲む
飲酒をするときはアルコールだけでなく食事もしっかり取り、睡眠や休息をしっかり取った状態で楽しむことが重要なポイントです。
空腹の状態で飲酒すると、すぐに酔いが回って体調不良になりますし、アルコール成分が胃の粘膜を直接的に刺激して吐き気や嘔吐などの症状を引き起こしますので、お酒を飲むときには必ず並行して食事も一緒に摂取するように心がけましょう。
お酒を飲んでいる際には枝豆などのおつまみしか食べないという人も多いですが、たんぱく質や食物繊維などをバランスよく摂取することで、満腹感が得られて、飲酒するペースが乱れにくくなります。
予防法3: 飲酒と同時にアミノ酸やビタミンを摂取する
二日酔いを予防するためには、アミノ酸やビタミン成分を摂るのもおすすめ方法のひとつです。アセトアルデヒドは肝臓で生じるため、肝臓の働きを強めればアセトアルデヒドが過剰に産生されるのを防ぐことが期待できます。
一般的に、アミノ酸は肝臓を解毒する、アルコールの代謝を促進するなどの作用があるといわれています。また、ビタミン群の中でもビタミンB1を摂取すれば、糖質の代謝が良好になります。
アミノ酸は魚や肉、ビタミンB1は豚肉、うなぎなどの食材に多く含まれていますので、二日酔いを予防するために、これらの食材を意識して取り入れるようにしましょう。
■二日酔いになっちゃった! 対処法は?
――ただ、注意をしていても「二日酔い」になってしまうことがありますよね。そんなときにおすすめの食べ物や飲み物、また対処法があれば教えてください
対処法1: 十分な水分補給
二日酔いは基本的に治療を行わなくても時間が経過すれば症状は改善していきます。十分な水分を取り、症状が改善するまで安静にして過ごすことが大切です。
万が一、二日酔いの症状が強いため通学や通勤ができない、起き上がれないなど社会生活に支障をきたす場合には、胸やけに対する胃薬、頭痛に対する鎮痛剤、吐き気に対する制吐剤など、それぞれの症状を改善するための薬物療法を検討しましょう。
対処法2: ビタミンやタンニンが含まれる食べ物を摂取
果物に含まれる果糖やビタミン類にはアルコールの分解や代謝を促す働きがあります。前の日に飲みすぎてしんどいと思ったら、オレンジジュースやレモンジュースを飲む、あるいはリンゴやキウイフルーツなどの果物を摂るとよいでしょう。
また、緑茶や柿に多く含まれているタンニンには、胃の粘膜を修復する作用がありますので、二日酔いの症状を緩和するのにおすすめです。
対処法3: 市販の医薬品を活用する
胃のむかつきなど、二日酔いの症状がつらいときは、症状に応じた薬を上手に使って症状を緩和することも期待できます。
お酒の飲みすぎによって、二日酔いに伴う胃痛や胃の膨満感(お腹が張って苦しい状態)、吐き気、食欲不振などを認める際には、アルコールで傷ついた胃の粘膜を保護する作用のある胃酸分泌抑制薬や胃粘膜保護剤、健胃剤などを選択しましょう。
■「迎え酒」が二日酔いに効果があるってホント?
――「迎え酒」をすると二日酔いが和らぐと聞いたのですが、ホントですか?
よく"二日酔いには迎え酒"といわれますが、これは医学的におすすめできません。「迎え酒(むかえざけ)」とは、二日酔いの症状をさらなる飲酒によって軽減するという民間療法であり、お酒を飲みすぎて具合が悪くなった「二日酔い」の症状を和らげるために、さらに飲酒するという行為を示しています。
二日酔いの状態で、もう一度アルコールを体内に入れ、酔うことで感覚が麻痺し、楽になった気がするだけであり、健康に悪影響を及ぼす可能性が懸念されます。さらに、迎え酒を繰り返すことから、アルコール依存症につながる例も多いといわれています。
迎え酒は肝臓への負担を増やし、アセトアルデヒドの代謝を遅らせるため、二日酔いの解消方法として不適切であるのみならず、健康面にさまざまなリスクをもたらす可能性がある行為ですので控えましょう。
予防法・対処法をお伝えしましたが、基本的には二日酔いにならないよう飲酒はほどほどに。お酒と上手に付き合いながら、大切な人たちと実りある時間を過ごしてくださいね。
監修ドクター : 甲斐沼 孟(かいぬま まさや)先生
TOTO関西支社健康管理室産業医。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医/大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医 /国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員 /大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師 / 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長
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