パルシステムは11月30・12月1日、全国24産地の関係者が参加し「女性生産者交流会」を開催した。2日目の東京・新宿会場では4産地の女性生産者と組合員らが「わいわい産地のこと」をテーマに、全国4ヶ所から集まった女性生産者と組合員らが交流を深めた。以前は定期的に開催されていた女性生産者交流会だが、コロナ禍の影響で活動自粛を余儀なくされ、今回は約5年ぶりの開催となった。
女性の生産者と組合員が集結!「良い明日を一緒に迎えるための第一歩に」
交流会で開会の挨拶に立ったパルシステム東京の松野玲子理事長は、「農業の現場は本当に大変で、異常気象の影響や後継者の問題なども抱えています。特に女性の生産者は、家庭の中でも暮らしを支える作業を担っていることも多く、普段はなかなかこうして外に出る機会もありません」と指摘。
「今回は垣根を超えて、良い明日を一緒に迎えるための第一歩になればと思っています」と交流会の意義を強調した。
この日の交流会には、秋田県の「JAこまち」、群馬県の「群馬南部モグラ会」、千葉県の「JAちばみどり海上産直部」、愛媛県の「無茶々園」の生産者たちが参加。それぞれがビデオメッセージなども交えながら産地の特徴を簡潔にプレゼンした。
小松菜を生産している群馬南部モグラ会の飯野さんは、「地球の健康のために農業をするのが私たちの理念」と紹介。父の代からオーガニックな小松菜づくりを28年にわたって続け、有機JASだけでなく、グローバルギャップ(ヨーロッパを中心に世界110カ国以上で実践されている世界基準の農業認証)も取得し、毎年更新し続けているという。
「グローバルギャップを取得しようと思ったのは、『安全な生産工程の管理』という意味もあります。私たちの農園には20〜40代の若い生産者やベトナムから来た技能実習生も多く、いろんな仲間とチームワークでやっているので、(作物の安全だけでなく)労働者の安全にもしっかり取り組まなければなりません。農業経験がない方でも受け入れられるよう、日頃から人材教育にも力を入れています」
また、飯野さんは有機農法にこだわる理由について、「日々の食事で健康なものをいただくことも大事ですが、そのためには土地自体が健康である必要があります」と指摘。気候や虫の影響で大損害を受けることもあるが、自身はとことんオーガニックにこだわると話し、「小松菜の魅力、有機農業の魅力は産地にきていただければ理解していただきやすいと思います。観光農園ではありませんが、収穫イベントや小松菜の料理イベントなども積極的に行っていきたいので、ぜひ機会があれば農園にきてください」と訴えた。
ブロッコリーやサニーレタスをつくっているJAちばみどり海上産直部の浪川さんは、「一言にブロッコリーといっても、実は90品種もあるんです。うちでは『おはよう』や『こんばんは』といった品種のブロッコリーをつくっているのですが、いろんな品種も覚えていただくだけでも面白いと思います」と魅力を紹介。
最近は物価高の影響もあって、肥料や原材料が値上がりしているという状況を説明しつつ、「値が上がっているからといって、農家は野菜の値段まではぽんっと上げることはできません。だからこそ、たくさん野菜を注文してくれれば農家も潤うので、どうかよろしくお願いします!」と明るく訴えかけた。
生産者による産地紹介のあとは、生産者と組合員がグループに分かれて交流会を実施。各生産者が自らつくった米や野菜をオススメのレシピで調理して振る舞い、グループごとに農作物に関する知識や食に関する悩みを共有し合った。
交流会は参加者らにとって、大いに実りのあるものになったようだ。
足立区から参加した組合員の中村さんは、「これまで女性の生産者にお会いしたことがなかったし、できるだけ生産者の思いを知ったうえで野菜を買いたいという思いもあったので、今日は参加しました」と明かす。
さらに、「大変な苦労をして出荷していることがわかったし、生産者さんの思いがダイレクトに伝わってきてよかったです。もっと消費したいな、子供に安心な野菜を食べさせてあげたいなと改めて思いました。同じ価値観を持つ組合員のみなさんに出会えたのも嬉しかったです」と感想を口にした。
群馬南部モグラ会の飯野さんは、「組合員のみなさんの食卓に関する話もお聞きできて、自分たちの野菜がこんなふうに活用されているんだということがわかってうれしかったです」と語り、「私たちがつくっている有機の小松菜は、ぜひそのままの味を楽しんでほしいので、化学調味料を使っていない白だしや醤油で味わっていただけるとうれしく思います」と語った。
愛媛県から参加した生産者家族、高校生の宇都宮さんは、「女性生産者からの意見を聞く機会があまりなかったので、衝撃的で、新鮮でした」と話し、「私が話してきた男性生産者は、どうしても経済の話を中心にしがちでした。でも、女性生産者のみなさんは、消費者のことを第一に考えている印象が強かったです」と振り返った。
また、「今日お話した女性の皆さんとは共感できることも多くて、本当に勉強になりました。愛媛も過疎化が進んでいて大変ですが、こうして高校生も頑張ろうとしているということを同世代に伝えることが大事だと感じました」と話した。