地域の新たな産業としてのトマト工場、雇用の創出へ

寅福は栽培面積約3万平方メートルの、トマトを周年栽培する工場をむつ市に建設。2024年4月の稼働開始を予定しており、そこで雇用する約100人の従業員を募集するため、今回の説明会を開催した。同社によると、9月と10月に北海道でも説明会を行い、むつ市での参加者と合わせると約400人が同社での就労に興味を示しているという。

同社代表取締役社長の加藤夢人(かとう・ゆめと)さんは「予想以上の反応。むつ市ではアツギ関連の工場の閉鎖で、従業員約500人が解雇されるという雇用危機があったこともあり、新しい雇用の創出に期待が寄せられているのでは」と話す。さらに加藤さんによると子供を持つ女性からの反応も高かったとのことで、「個々の希望する時間帯での就労が可能な勤務体系も、地域に眠っていた人材を活用する方法の一つとなりうる」と、働きやすい職場づくりにも意欲を見せている。

「カーボンマイナス」でも地域貢献

説明会に登壇する寅福代表取締役社長の加藤夢人さん

説明会では加藤さんが、トマト工場で実現を目指す「カーボンマイナス」についても説明した。カーボンマイナスとは、CO2などの温室効果ガスを発生する以上に吸収することで、より環境に配慮した取り組みのことだ。

今回建設している植物工場は、環境制御を行ってトマトを栽培する「オランダ型フェンロ―ハウス」。採光性や換気効率が高いのが特徴で、温度・湿度・CO2量などをコントロールするなどして、トマトにとって最適な環境を作り出せる。しかし、暖房が必要となるため、むつ市の工場では、その燃料として市内の森林から出た間伐材由来の木質バイオマスチップを活用。さらにバイオマスチップを燃やした際に出るCO2は浄化してハウス内に放出し、光合成を促すのに使用する。こうした工夫を通して、CO2排出量の削減を図ろうとしている。

同社では、工場の利益の一部を市に寄付し、植樹の費用に充ててもらうことで地元の山の環境保護にもつなげるとしている。加藤さんは「むつ市からカーボンニュートラルの取り組みを発信するとともに、持続可能な地域循環型農業の実現を目指す。工場がむつ市にあって良かったと地域の方に思ってもらえるよう、むつ市ならではの新しい農業のカタチを作り、地域農業に貢献したい」とコメント。

農業が地域の中核産業として雇用を守る存在となるとともに、カーボンニュートラルという課題解決にもつながるこの事例、今後の地域の発展のヒントとして期待したい。