マツダの代名詞「ロータリーエンジン」を積むシリーズ式プラグインハイブリッド車(PHEV)「MX-30ロータリーEV」(MX-30 Rotary-EV)は実際のところ、売れているのか。2023年9月に予約受注を開始してから何台くらい売れたのか。販売状況をマツダに聞いてきた。
MX-30ロータリーEVってどんなクルマ?
「MX-30ロータリーEV」はロータリーエンジンを発電機として使うPHEVだ。もともと「MX-30」にはマイルドハイブリッド車(MHEV)と電気自動車(バッテリーEV=BEV)があり、今回は3つ目のパワートレインとしてPHEVが加わった。
シリーズ式PHEVのMX-30ロータリーEVはロータリーエンジン、高出力モーター/ジェネレーター、容量17.8kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載している。走り(タイヤの駆動)を担うのはモーターのみで、ロータリーエンジンは駆動に直接的には関与せず、発電に専念する。バッテリーをフル充電しておけば、基本的にはガソリンを使わずに電気だけで107kmを走行可能。バッテリーの電力が減ってくればロータリーエンジンが発電を始めるので、長距離ドライブも問題なくこなせる。ガソリンタンクの容量は50L。燃費(ハイブリッド燃料消費率)は15.4km/L。
MX-30ロータリーEVのグレードと価格
MX-30ロータリーEVには「Rotary-EV」「Industrial Classic」「Modern Confidence」「Natural Monotone」「Edition R」の5つのグレードがある。
「Rotary-EV」は423.5万円のエントリーグレード。「Industrial Classic/Modern Confidence/Natural Monotone」の3機種は478.5万円の上級グレードとなる。「Edition R」は491.7万円の特別仕様車で、ヘッドレストに専用のマークが入っていたりする豪華版だ。
グレード間で異なるのは主に装備面で、ボディサイズや動力性能などは変わらない。
MX-30ロータリーEVの販売台数
MX-30ロータリーEVの予約受注開始は2023年9月14日。発売は同11月16日だった。マツダによると、11月19日の時点で販売台数は約800台だ。グレード別の内訳は以下の通り。
Rotary-EV | 8% |
Industrial Classic | 19% |
Modern Confidence | 19% |
Natural Monotone | 20% |
Edition R | 34% |
では、800台という受注台数をどう考えればいいのか。
MX-30のここ最近(PHEVが追加となる前)の販売状況はというと、MHEVとBEVの合計で月間150台ほどだった。ここに新たに加わったPHEVが、予約開始から2カ月ちょっとで800台の受注を獲得したということだから、MX-30の新機種としては悪くないスタートなのではないだろうか。全3タイプのMX-30(MHEV、BEV、PHEV)の合計で、今後は月間200台ちょっとを売っていきたいというのがマツダの考えらしい。
MX-30ロータリーEVをどう捉えればいいのか
MX-30ロータリーEVは、「遠出もできるけど基本は電気自動車」と考えて乗れば、とてもいいクルマだと思う。フル充電で107kmも走れば、ほとんどの日常的な移動はこなせてしまうという人がほとんどなのではないだろうか。バッテリー満タンの状態で試乗してみたが、走行モード「ノーマル」で走っていると、一般道だろうが高速道路に乗ろうが、基本的にエンジンが稼働することはなかった。ずっと静かに振動もなく走る様子はBEVそのもの。テスラのように過激な加速はしないが、普通に走る分には何も不足がない。十分すぎるほどの性能だ。
でも遠出をするとなると(つまり、基本的にはシリーズ式ハイブリッドで走るという状況になると)、ほかのPHEVやシリーズ式ハイブリッド車に比べると良好とはいえない燃費性能が気になってくるかもしれない。自宅か職場か、どこか日常的にクルマをとめておけるところに充電環境があるのかどうかも、このクルマのユーザーに向いているかどうかを考える上での重要な要素となる。正直、日常的に充電しないで乗るのには、あまり向いていない気がする。
MX-30ロータリーEVを「ほぼBEV」と見るか、「PHEVの新種」と見るか、「充電もできるけど基本はシリーズ式ハイブリッド車」と見るかで、評価は大きく変わってきそうだ。マツダは「BEVを検討している人に乗ってほしい」とか「BEVとしての使い方に軸足を置いたクルマ」だといったメッセージを発信している。