『THE MATCH 2022』での那須川天心(TEAM TEPPEN/当時)戦以来、約1年半ぶりに武尊(team VASILEUS)が日本のリングに上がる。来年1月28日、東京・有明アリーナ『ONE165』でロッタン・ジットムアンノン(タイ)と闘うことが11月30日に記者会見で発表された。
ロッタンはONEムエタイ世界フライ級王者であり、2018年に那須川天心と対戦し延長判定で敗れるも互角の闘いを繰り広げた強豪。武尊は、いかなる想いを抱き王者ロッタンに挑むのか?
■魅力的な三角関係?
「K-1から来た武尊です。『ONE』でのデビュー戦が決まり、しかも日本で試合ができることを凄く嬉しく思います。対戦相手のロッタン選手はずっと闘いたかった選手で、世界トップ。ロッタン選手は気持ちで闘うスタイルで僕と同じ。世界最高の殴り合いを楽しみにしてください。必ず勝ちます!」
記者会見の冒頭で、武尊は決意を込めた口調でそう話した。
約1年半前の2022年6月、東京ドーム『THE MATCH 2022』で那須川天心に完敗を喫し涙を流した武尊は、いま復活ロードを歩んでいる。
今回のロッタンとの対峙は再起2戦目─。
今年6月24日、フランス・パリで武尊は復帰戦を行った。ここでベイリー・サグデン(英国)に左ハイキックを炸裂させ5ラウンド2分59秒KO勝利し「ISKA K-1ルール 世界ライト級王座」を獲得している。
そして迎える『ONE』での初戦がムエタイ王者との対決となった。
試合形式は3分×5ラウンド、ヒジ攻撃、首相撲からのヒザ蹴り等は認められないキックボクシングルール。タイトルマッチではないが、多大な注目が集まるスーパーファイトだ。
会見に同席した『ONE』のチャトリ・シットヨートンCEOは言った。
「この試合は、那須川天心vs.ロッタン、那須川天心vs.武尊に続く壮大なストーリー。そして新たな物語の始まりでもある。那須川天心vs.ロッタンは(那須川が延長判定で勝利したが)、さまざまな見方があり私はロッタンの勝ちだったと思っている。そして天心は武尊に勝利した。よって魅力的な三角関係も生じ、今回の闘いがさらに意義深いものとなっている」
つまり、この試合でロッタンが勝てば3者の間で「最強」が証明でき、また武尊が勝利すれば3者ともに1勝1敗の互角になる、との意だ。
5年前の那須川vs.ロッタンは確かに甲乙つけ難い激闘で実質ドローファイト。だがジャッジは那須川を支持した。それを「ロッタンが勝っていた」とするのは無理があるが、この試合の内容次第で新たな物語が紡がれると私も思う。
■悔しさにけじめをつけたい
チャトリCEOの発言を受けて武尊は、こう話した。
「格闘技において三段論法…誰に勝ったから誰より強いというのは存在しないと思っています。ロッタン選手にどれだけ良い勝ち方をしようが、天心選手に勝ったことにはならない。でも僕の中でロッタン選手にKOで勝つことで、あの日の悔しさにけじめをつけたい。自分に対するけじめとして必ずKOします」
ルールの違い、契約体重、そして闘う舞台の設定。
実力が拮抗した者同士の闘いでは、これらに勝敗を左右されることが多々ある。
たとえば那須川vs.ロッタンが、キックボクシングルールではなくムエタイルールで行われ、開催場所がタイのルンピニースタジアム、あるいはラジャダムナンスタジアムだったら結果はどうなっていたのか。『THE MATCH 2022』那須川vs.武尊の契約体重が58キロではなく59キロで、試合3時間前の再計量がなかったならどうだったのか。
結果は逆になっていたかもしれない。
ただ、観る者の記憶には勝敗のみが強く残り、どちらに有利なレギュレーションだったかは忘れられがちだ。この点を踏まえ、那須川、武尊、ロッタン3選手の実力はほぼ互角だと私は見ている。
その意味でも今回、武尊は正念場を迎えている。ムエタイではなくキックボクシングルール、ホームである舞台設定…有利な状況の下で負けるわけにはいかないのだ。
武尊が勝利すれば、ONEフライ級キックボクシング王者スーパーレック・キアトモー9(タイ)への挑戦、もしくはムエタイルールでロッタンの王座に挑む道が拓ける。
しかし敗れたなら、その後は下位ランカーとのマッチメイクを余儀なくされよう。
武尊は、新章の扉を開くことができるのか?
苛烈なる闘いを凝視したい。
▼武尊、ロッタンとついに対峙!チャトリCEOが割って入るほどのにらみ合いに「世界最高の殴り合いができる」と気合十分『ONE Championship』記者会見
文/近藤隆夫