近年、国内外で人気を博している「シティポップ」。本記事では、シティポップの名曲20選を紹介します。70年~80年代リリースの、シティポップ代表曲といえるものから隠れた名曲まで紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。
シティポップ名曲10選【70年代編】
まずは、1970年代のシティポップ名曲10選を紹介します。
「真夜中のドア~stay with me」松原みき
松原みきの「真夜中のドア~stay with me」は1979年11月にリリースされた曲ですが、2020年にインドネシアの女性YouTuberがカバーしたことがきっかけでリバイバルヒット。アジアを中心に人気を博し、Spotifyグローバルバイラルチャートで2位にランクインするほど話題となりました。
そんな「真夜中のドア~stay with me」は、70年代の洋楽をベースにしたおしゃれなメロディや英詞のサビなど“シティポップの王道”といえる要素が詰まっています。世界的なシティポップブームのきっかけとなった名曲です。
「DOWN TOWN」シュガー・ベイブ
シュガー・ベイブは山下達郎や大貫妙子らが所属し、1972年から1976年まで活動した伝説のバンド。そんなシュガー・ベイブが歌う「DOWN TOWN」は、土曜日の夜は暗い気持ちを忘れてダウンタウン(繁華街)に繰り出そう! と呼びかける歌詞が印象的な名曲です。
シュガー・ベイブはアルバムを1枚発表して短い活動期間を終えましたが、シティポップの原点を作ったと言っても過言ではありません。
「ピンク・シャドウ」ブレッド&バター
「ピンク・シャドウ」は、黄昏時を思わせるボサノヴァ風のメロディに、「愛してるよ 君だけを」と何度も繰り返す情熱的な歌詞が印象的な名曲です。1974年にリリースされ、2022年には復刻版のレコードが発売されました。
ブレッド&バターは1969年にデビューし、休止期間を経て50年以上活動し続けている、岩沢幸矢と岩沢二弓による兄弟デュオ。「ピンク・シャドウ」以外にもシティポップを歌い、アグネス・チャンや森山良子など多くの有名アーティストに楽曲提供もしています。
「都会」大貫妙子
大貫妙子の「都会」も、シティポップを語るうえで外せない名曲です。「都会」は、1977年リリースのアルバム「SUNSHOWER」に収録されました。タイトル通り華やかな都会を思わせるメロディですが、歌詞では都会の虚しさを表現しています。
「SUNSHOWER」は大貫妙子のソロ初期のアルバムで、「都会」を含め収録曲は知る人ぞ知る隠れた名曲でした。しかし近年のシティポップブームで注目を浴び、2019年から全世界で音源が配信開始されるほど人気を集めています。
「中央フリーウェイ」荒井由実
「中央フリーウェイ」は、ユーミンこと松任谷由実が「荒井由実」名義で1976年に発表したアルバム「14番目の月」の収録曲。歌詞には本人が生まれ育った街、東京・多摩地域にある中央自動車道をドライブする様子が描かれています。
思わず口ずさみたくなる軽快なメロディが心地よく、リリースから40年以上経った今もなお愛される名曲です。ドライブの定番曲としてはもちろん、カラオケでもよく歌われています。
「風になれるなら」伊藤銀次
「風になれるなら」は1977年発売の伊藤銀次のアルバム「Deadly Drive」の収録曲。タイトル通り、「もしも風になれるなら君がいる場所に飛んでいきたい」という思いを歌った名曲です。
自身も多くシティポップを手がけた大貫妙子がコーラスに加わり、伊藤銀次の軽やかな歌声とベースに響くピアノの音色を彩っています。アルバム「Deadly Drive」は2023年8月にアナログ盤でも発売されました。
「流星都市」小坂忠
「流星都市」は、ソウルシンガーと呼ばれ愛された小坂忠が1975年にリリースしたアルバム「ほうろう」の収録曲。ベースとキーボードによる心地良いメロディにのせて、「君にくびったけ」と一途な恋心を歌った名曲です。
アルバム「ほうろう」は、細野晴臣や松任谷正隆、松本隆など日本を代表する大物アーティストたちが制作に参加。1970年代のシティポップを支えた小坂忠の代表作として知られています。
「恋は流星」吉田美奈子
吉田美奈子の「恋は流星」は1977年にリリースされました。美しい街の景色、そして愛する人への思いをピアノとサックスのメロディにのせ描いています。1970年代のシティポップらしい名曲です。
吉田美奈子は1969年、当時高校生のときに細野晴臣や松本隆といったアーティスト達と交流したことがきっかけで楽曲制作を開始。デビュー以降は山下達郎をはじめ数多くのアーティストに楽曲提供をしており、シティポップを語る上で欠かせない人物といえます。
「THE TOKYO TASTE」Rajie
Rajieは、1973年に女性4人組グループ「ポニーテール」としてデビューし、脱退後の1977年にソロデビューしました。「THE TOKYO TASTE」は、1977年リリースの3枚目のアルバムに収録された一曲です。
この曲は、YMOのメンバーである高橋幸宏が作詞・作曲を手がけた、南佳孝とRajieのデュエットソング。Rajieの透明感のある歌声と南佳孝の甘い歌声が絶妙にマッチし、美しいハーモニーを奏でています。英詞を中心に日本語を織り交ぜた歌詞もおしゃれで、シティポップの源流とも称される名曲です。
「私自身」いしだあゆみ&ティン・パン・アレイ・ファミリー
「私自身」は、いしだあゆみが細野晴臣・鈴木茂らティン・パン・アレイ・ファミリーと共作したアルバム「アワー・コネクション」の収録曲。アルバム制作にはそのほかにも矢野顕子、山下達郎、吉田美奈子などシティポップを代表するアーティストが携わっています。
いしだあゆみの語りで始まるイントロが非常に印象的な「私自身」。明るい曲調に反して歌詞は、東京湾が見える部屋で一人寂しく過ごしながら物思いにふける様子が描かれています。どこか気だるげな風景が思い浮かぶ、1977年の名曲です。
シティポップ名曲10選【80年代編】
続いて1980年代のシティポップ名曲10選を紹介します。
「 君は天然色」大瀧詠一
「君は天然色」は大瀧詠一が1981年にリリースしたシングル曲。夏を思わせる爽やかな曲調が印象的な、1980年代のシティポップを代表する名曲です。40年以上経った現在もテレビCMに起用されることがあるほど人気なので、音楽に詳しくない方でも一度は聴いたことがあるのではないでしょうか。
「君は天然色」の作詞を手がけているのは作詞家・松本隆。楽しい曲調とは裏腹に、大瀧詠一に作詞を依頼された直後に亡くなった妹への切ない想いが歌詞に込められています。制作の背景を知った上で改めて聴くと、また違った印象を受けるかもしれません。
「プラスティック・ラブ」竹内まりや
竹内まりやが歌う「プラスティック・ラブ」は1984年リリースのアルバム収録曲ながら、シティポップの名曲として世界的に知られており、国内外の数多くのアーティストにカバーされています。
この曲のポイントは「恋なんてただのゲーム」と言い切る、ちょっとドライな女性の心情を描いた歌詞。恋の駆け引きを冷めた目で見ながらも、過去の恋人を思い出して切なくなる女性の様子に、感情移入する人も少なくありません。2021年にはフルサイズのMVがYouTube上で公開され、2023年11月現在で3000万回以上の再生を記録するなど時代を超えて愛されています。
「RIDE ON TIME」山下達郎
「RIDE ON TIME」はシティポップを代表するアーティストである山下達郎の代表曲の一つで、1982年リリースのアルバムタイトル曲です。同アルバムは2023年6月にリマスター盤が発売され、オリコン週間チャートで42年8ヶ月ぶりにトップ10入りしました。
「RIDE ON TIME」といえば、木村拓哉が主演を務めた2003年放送のTBSドラマ「GOOD LUCK!! 」の主題歌としても有名。航空会社を舞台にしたドラマによく合う、さわやかで力強い雰囲気が魅力的な名曲です。
「フライディ・チャイナタウン」泰葉
落語界の名門・海老名家に生まれた泰葉の歌手デビュー曲が、1981年リリースの「フライディ・チャイナタウン」です。近年のシティポップブームで人気に火が付き、TikTokに若者がカバー動画を多数あげるなど、大きな反響を呼びました。
異国情緒あふれるメロディがユニークで、歌詞にはネオンが輝く夜の中華街を歩く様子が描かれています。なお、曲名のフライディはFriday(金曜日)ではなくFly-dayで、「飛び立つ日」といった意味の造語です。
「君は1000%」1986オメガトライブ
1986オメガトライブの名曲「君は1000%」は、1986年にリリースされた彼らのデビュー曲です。元は杉山清貴&オメガトライブというグループでしたが、杉山清貴の脱退後にカルロス・トシキが加わり、1986オメガトライブとなりました。
「君は1000%」が描くのは、夏の海辺での恋。爽やかなメロディと相まって青春時代の甘酸っぱさを思い起こさせるような一曲です。カルロス・トシキは1986オメガトライブの解散後、ブラジルに帰国し実業家になりましたが、現在も度々来日し「君は1000%」をはじめとする名曲を披露しています。
「夏のクラクション」稲垣潤一
稲垣潤一といえば「クリスマスキャロルの頃には」が有名ですが、シティポップでも1983年に「夏のクラクション」という名曲を生み出しています。作曲・筒美京平、作詞・売野雅勇というゴールデンコンビが手がけた名曲です。
ゆったりとしたスローテンポのメロディにのせて描かれているのは、別れた彼女への未練。また戻ってきてほしいと願うせつない気持ちを歌っています。夏の夕暮れに海辺を眺めながら聴くのにぴったりな曲調です。
「スローなブギにしてくれ(I want you)」南佳孝
南佳孝の「スローなブギにしてくれ(I want you)」は、同名小説が原作の映画の主題歌として1981年にリリースされました。物語は、突然出会った若い男女が共に暮らすようになる様子が描かれ、映画の主演は浅野温子が務めています。
タイトル通り曲はスローなテンポで、どことなくムーディーな雰囲気。そこに「おまえが欲しい」と愛をストレートに表現した歌詞をのせ、南佳孝が情熱的に歌い上げています。中森明菜や斉藤和義、CHEMISTRYなど数多くの有名アーティストもカバーする名曲です。
「悲しみがとまらない」杏里
杏里の「悲しみがとまらない」は、1983年11月にリリースされました。プロデュースを務めたのは角松敏生。彼が、作詞を康珍化、作曲を林哲司に依頼して生まれた一曲です。
印象的なピアノのイントロで始まるこの曲は、明るくアップテンポな曲調ですが、歌詞は失恋がテーマ。友達に彼氏を奪われた女性の切ない気持ちを描いています。現在も失恋ソングとして人気が高く、カラオケでもよく歌われる名曲です。
「一本の音楽」村田和人
「一本の音楽」は80年代に活躍したシンガーソングライター・村田和人が1983年にリリースした曲。マクセルのテレビCMソングに起用されたことでヒットしました。シティポップらしい清涼感あふれる曲調に村田和人の伸びやかな歌声が響く、耳心地の良い名曲です。
同曲が収録されたアルバムは、山下達郎がプロデュースを担当。「一本の音楽」も作詞は安藤芳彦、作曲は村田和人本人が務めていますが、編曲は山下達郎が担当し、コーラスとしても参加しています。
「Dang Dang 気になる」中村由真
アニメ「美味しんぼ」の主題歌である「Dang Dang 気になる」は、時代が平成へと変わった1989年にリリースされたシティポップ。数多くのシティポップを手がけた林哲司が作曲し、1987年放送のドラマ「スケバン刑事III」に主人公・風間三姉妹の次女役で出演したことで知られる中村由真が歌いました。
ヒロインのもどかしい恋心を表現した歌詞と中村由真のキュートなボイスが印象的な名曲です。また、「ワープロ」という懐かしのフレーズが登場し、聴いているだけでエモい気持ちになれる一曲でもあります。
シティポップの名曲を聴いてお気に入りを見つけよう
1970年代・1980年代のシティポップから名曲20選を紹介しました。
現在も活躍するアーティストの楽曲がある一方で、シティポップブームによって“発掘”された隠れた名曲も多くあったのではないでしょうか。
シティポップは世界的ブームに伴い、音楽配信サービスや動画サイトで多くの曲を視聴できます。今回紹介した曲以外にもさまざまな曲があるので、ぜひお気に入りの名曲を探してみてください。