一家に1台、欠かせない家電のひとつが冷蔵庫。近年はコロナ禍の影響もあって、買い置き、買いだめ、テイクアウトのニーズが高くなり、家庭の冷蔵庫は以前にも増して大容量が求められるようになりました。2台目の小型冷蔵庫(冷凍庫)も注目されていますよね。
メインにする大容量の冷蔵庫は置き場所さえ確保できればとても便利なのですが、一般的に大容量の冷蔵庫は奥行きが長く、例えば食器棚と並べると前方に飛び出しがち。実用上は問題ないとはいえ、美しくありません。気になる人もいるでしょう。そんな中でスリムタイプ冷蔵庫の人気が高まっています。そこで、スリム冷蔵庫として気になっていたアクアの「AQR-TXA50N」(以下、TXA50N)をお借りして、実際に試してみました。
500Lサイズで奥行きは667mmとスリム
まずTXA50Nの基本仕様から。庫内総容量は501Lで、冷蔵室が259L(食品収納スペースの目安は195L・以下同)、野菜室が102L(55L)、冷凍室は上段が52L(27L)で下段が88L(49L)となっています。500Lクラスの冷蔵庫としては冷凍室がやや大きめ、冷蔵室と野菜室は平均サイズといった印象です。実勢価格は220,000円前後です。
本体サイズは幅700×奥行き667×高さ1,850mmです。なお、冷蔵庫の横幅は600mm、650mm、685mm、700mmと規格が決まっており、古いマンションなどでは600mmや650mmまでしか入らない場合もあります。
TXA50Nの横幅は700mmと大きい部類なので、設置スペースの事前確認が必要です。高さ1,850mmも500Lクラスでは大きめ。つまり、TXA50Nは高さと幅をやや大きくすることで、奥行きを短くした冷蔵庫といえるでしょう。
続いて機能面です。食材の鮮度を保つさまざまな機能を搭載している点が特徴的。冷蔵室内のチルドルームには「W間接冷却チルド」機能、野菜室には「うるおいエリア/ツインLED」、そして冷凍室には「おいシールド冷凍」機能といった具合です。各機能については順に紹介しますが、こうした機能の組み合わせによって、比較的長い日数、食材の鮮度保持を可能としています。
天井と背面のLEDで明るい冷蔵室
今回、実際に試用した期間は3カ月ちょっと。まず冷蔵室では、天井と背面に配置した「ツインパネル照明」のおかげで冷蔵室内がとても明るいため、食材が見やすく便利でした。特に、冷蔵室の最上段は何を入れたか分からなくなりがちですが(筆者だけ?)、TXA50Nは明るい照明で庫内の様子が分かりやすくて好印象。冷蔵室手前の窓から野菜室上段の様子が見えるのも面白い機能です。
冷蔵室の棚は4段で位置は固定ですが、上から3枚目の棚板は半分に分割して2段にできます。背の高いボトルや調味料などを立てかけたい場合に役立ちます。ただし奥行きはあまりないので、鍋などをそのまま入れるのは厳しいでしょう(大きさにもよりますが)。
冷蔵室の下段にはチルドルームを配置。通常のチルドと微凍モードを選べます。ルーム内では直接食材に冷気を当てるのではなく、上下のアルミパネル(トレイ)に冷気を当てての輻射(ふくしゃ)冷却によって食材を冷やし、食材を乾燥しにくくしています。
今回は微凍モードで使いましたが、食材の表面がわずかに凍結しながらも、レンジ解凍なしで切ったり形を整えたりでき、すぐに調理を始められました。
野菜を潤い保存できる野菜室と、大容量の冷凍庫
冷蔵室の下にある野菜室の内部は、3つの空間に分かれています。上段には背の低い小さな野菜や食材を保管。ここには鮮度を保持するためのツインLEDが設置されており、トマトなどの色味を長く保てます。LEDには植物の光合成を促進する働きがあり、これにより野菜や果物が劣化する原因となるエチレンガスの発生をおさえます。
その下がメインの野菜室となるうるおいエリア。ここもチルドルームと同じく輻射冷却で間接的に野菜を冷やし、野菜が乾燥しにくい仕組みです。
手前には背の高い野菜を立てかけて収納できるスペースを用意。ここには1Lサイズの醤油やみりんなども入れておけます。残念ながら高さの関係で2Lペットボトルは入りませんでした。
野菜の鮮度保持機能については比較検証していませんが、小松菜などは買ってきてから1週間ほど経過してもまだ元気でした。
TXA50Nを使っていて、個人的に最も気に入ったのは冷凍室。上段の冷凍室は、2分の1を巨大なワイドアイストレイが占めます。冷蔵室内の巨大な給水タンクから、たっぷりの氷が作れるというわけ。夏場には冷たいドリンクを飲むほか、かき氷を作る機会も多かったので、大量に作れる氷が大活躍でした。
このワイドアイストレイは着脱でき、自動製氷を止めると、より多くの食品を冷凍保存できるようになります。アイストレイの横にはフリージングトレイがあり、フリージングトレイの上に食材を置くことでクイック冷凍ができます。
一方、下段の冷凍室は上下2段のバスケットという構造。かなりの食材を冷凍しておけます。
冷凍室には、室内の温度変化を防いで肉や魚からドリップが出にくくする抑制機能を搭載しています。合わせて、食材から霜を発生しにくくする「おいシールド冷凍」機能も。今回、刺身用サーモンを1カ月ほど冷凍庫に入れてみましたが、ほとんど霜が付きませんでした。
左右ドアに多くの調味料をしまえる
日常で便利に感じたのは、左右ドアの高い収納力です。左右のどちらにも2Lのペットボトルが2本ずつ入り、さらに右のドアポケットには一升瓶も収まります。ドアポケットの1段目と2段目はポケットの位置を調整できるため、調味料の数やサイズに合わせて我が家仕様にすると、使い勝手がよくなります。
TXA50Nを使い始めて数日は効率的に食材や調味料を収納できなかったのですが、左右ドアポケットを活用するようにしたところ、一気に改善しました。また、左右ドアの3段目ポケットが2重構造になっていることも、使いやすいポイントの1つです。
脱臭機能や、LED色を利用した通知機能も
このほか、TXA50Nには冷蔵室内の浮遊菌やニオイのもとを分解除去する「マイクロオゾン除菌」機能を用意。冷蔵室内を清潔に保ちます。
もうひとつ面白いのは、冷蔵室ドアの表側に設けたLEDステータスバーです。冷蔵庫のそばに行くと人を感知して光ります。通常はライトブルーに点灯するのですが、このときの色によって冷蔵庫のモードや状態が分かる仕組みです。
LED色で覚えておきたいのは、製氷給水タンクが空になっていることを示すイエローと、半ドアを示すオレンジ、そして故障を示すレッドの3つ。冷蔵庫のドアを開けることなく、状態が分かるのは思いのほか便利でした。
横幅700mmの冷蔵庫が入るなら選択肢に入れたいモデル
500Lクラスの冷蔵庫は奥行き約700mmの製品が多い点に対して、TXA50Nの奥行きは667mmと約3cm短くなっています。たかだか3cmですが、狭いキッチンスペースで冷蔵庫の出っ張りがなくなる(目立たなくなる)のはかなり大きいことです。
さらにもうひとつ、庫内も奥行きが短く、幅が広くなるため、保存している食材を取り出しやすい点にも注目。通常、冷蔵室の上段奥に入れた食材は取り出しにくいものですが、TXA50Nならそんな場所でも食材の出し入れにストレスを感じませんでした。
改めて、500Lクラスの冷蔵庫は幅650mmから選択できます。しかし、そういったモデルは基本的に奥行きが約700mmになります。使い勝手を重視するなら薄型(短い奥行き)です。
TXA50Nは横幅を700mmにする代わりに奥行きスリムを実現しています。日本の家屋やキッチン、TXA50Nに限らず設置スペースの問題はありますが、700mm幅が設置できるなら、TXA50Nの使い勝手は魅力的です。