「進入」「侵入」「浸入」はどれも「しんにゅう」と読む同音異義語であり、「入」という字が共通していることもあって混同しがちな言葉です。
本記事では「進入」「侵入」「浸入」について、それぞれの詳しい意味や使い方と例文、使い分け方を紹介。対義語や、漢字の意味も解説します。
進入/侵入/浸入の違いとは
「進入」「侵入」「浸入」はどれも「入ること」を意味します。しかし、何がどのように入るかが違います。
「進入」は進行して入る、「侵入」は不法に、無理やり入り込む、そして「浸入」は水が入り込むといった意味があります。
以下で、それぞれのより詳しい意味を見ていきましょう。
「進入」の意味
「進入」とは、人や乗り物などが、ある場所へ進行して入ることを意味します。
例えば、人がある場所へ入るときや、車がサービスエリアに入るとき、電車がホームに入るとき、出発する飛行機が滑走路に入るときなどに「進入」を用います。
不法なものが無理やり入るのではなく、その場にあっておかしくないものが入るときに用いる言葉が「進入」です。
「進」という漢字は、前へ出る、のぼる、良くなる、といった意味を持ちます。
なお道路で「車両進入禁止」などの標識を見掛けることも多いでしょう。この場合、「進入」自体には不法、無理やり入る、といった意味はありません。あくまでも対象とされている場所、車両に対してのみ、「進行して入ること」を「禁止」しているという意味の言葉です。
「侵入」の意味
「侵入」とは、無理やり入る、許可されていないのに入るといったことを意味します。
例えば、泥棒が留守の家に勝手に入るときや、強盗が銀行へ押し入るとき、病原菌が体に入るとき、武力を用いて外国へ入り込むときなどに「侵入」を用います。
「進入」と同じように進んで入るだけでなく、その場にあってはならないものが、不法に、あるいは暴力や武力などを伴って強引に入るときに用いる言葉が「侵入」です。
「侵入」に使われている漢字の「侵」の訓読みは「おか(す)」などです。「侵攻」や「侵食」、「侵害」などに使われていることからもわかるように、他人の領分に入り込む、他者の権利を害する、といった意味があります。
「浸入」の意味
「浸入」とは、水などが建物や土地に入り込んで来ること、染み込むことを意味します。
例えば、あふれた川の水が敷地内に入るときや、豪雨によって雨漏りがするとき、海難事故で船に海水が入り込むときなどに「浸入」を用います。
「進入」や「侵入」では主に、人や乗り物などが対象に入ります。一方、雨水や河川の水、海水など「水」が入るときに用いる言葉が「浸入」です。
「浸入」に使われている漢字である「浸」の訓読みは、「ひた(す)」「ひた(る)」「つ(かる)」「し(みる)」などです。
「浸水」や「浸潤」、「水浸し」などに使われていることからもわかるように、水が染み込む、水にひたるといった意味があります。
進入/侵入/浸入の使い分けのポイント
「進入」「侵入」「浸入」は、入るものは何か、どのように入るかで使い分けます。
「進」の文字が入っている「進入」は、人や乗り物などが進んで入るときに用います。
それに対して「侵」の文字が入っている「侵入」は、不法に、許可なく強引に、暴力や武力を伴って入り込むときに用いる言葉です。
また水を表す「氵(さんずい)」が入っている「浸」の文字を使った「浸入」は、雨水や河川の水、海水などが入り込むときに用います。
このように、何がどのように入るかで使い分けることがポイントです。
進入/侵入/浸入の使い方と例文
ここでは「進入」「侵入」「浸入」のそれぞれの単語について、具体的な例文を紹介します。使い方のイメージをより膨らませましょう。
「進入」の使い方と例文
「進入」は、ある場所へ人や乗り物などが進んで行き、入るときに用います。
- 新製品発表会の会場準備で、来場者が会場へ入る進入経路を確認する
- 記念列車がホームに進入してその姿が見えたとき、人々からは歓声が上がった
- 大学構内は関係者の車両以外は進入禁止のため、近隣の有料駐車場をご利用ください
「侵入」の使い方と例文
「侵入」は、許可されていない場所に勝手に、または暴力や武力を伴って入るときなどに用います。入ってはいけない所に入る場合に使われるため、「悪いこと」という印象の言葉です。
人だけではなく虫や微生物のようなものにも使います。
- 文化祭には外部の人が出入りするため、校内に不審者が侵入する可能性を否定できない
- 社内システムに対する外部からの侵入を防止するため、セキュリティーを強化する
- 国境付近に、某国の工作員が侵入したとの知らせが入った
- ウイルスは口や鼻だけではなく、目からも侵入する可能性があるとのことだ
「浸入」の使い方と例文
「浸入」は、雨水や河川の水、海水などが入るときに用います。
- 雨水がテントに浸入してしまった
- 校舎が古いため、台風のときはサッシから浸入する雨水で床が水浸しになる
- 台風であふれた川の水が、川沿いの店舗に浸入したそうだ
進入/侵入/浸入の対義語
「進入」「侵入」「浸入」の意味をより理解するためにも、反対の意味を表す言葉も併せて覚えておきましょう。
「進入」の対義語
「進入」の対義語には、以下のようなものが考えられます。
- 退出
「退出(たいしゅつ)」とは、今までいた場所から引き下がって出ること、帰ることを意味します。特に公的な場や、貴人の前から出ることを指します。
「彼はうつむきながら、法廷から退出した」などの形で使用します。
- 出る
単純に「出る」も、「進入」と反対の意味を持つと言えるでしょう。「出る」にはさまざまな意味がありますが、特にあるところから外へ行く、そこを離れて他のところへ行く、といった意味があります。
「買い物を終え、駐車場を出た」「ようやく道幅の狭い道路から出て、広い道路になった」などのように使用します。
「侵入」の対義語
「侵入」の対義語には、以下のようなものが考えられます。
- 撤退
「撤退(てったい)」とは、軍隊などが拠点や陣地を引き払い、そこから退くこと、撤収することを意味します。
「○○軍は、□□国から撤退することを発表した」のような形で使用します。
- たたき出す
「侵入」が乱暴に入ってくるという意味なので、乱暴に追い出すという意味の「たたき出す」も対義語と言えるでしょう。
「彼らがあまりにもうるさかったので、店の外にたたき出した」のような形で使用します。
「浸入」の対義語
水が入り込むことを表す言葉「浸入」には、明確な対義語は無いと言えるでしょう。
一見、対義語のように思える言葉に「浸出(しんしゅつ)」があります。しかしこの「浸出」の意味は、物を液体に浸けたとき、物質内の成分が液体内に溶け出ることです。
「この葉を溶剤に浸けて、成分を浸出させる」のような形で使用します。水が入り込むことの反対、つまり水が出ていくことを意味する言葉ではありません。
進入/侵入/浸入の違いを理解して正しく使おう
どれも「しんにゅう」と読み、意味も似ている「進入」「侵入」「浸入」は、多くの人が使い分けに悩みがちな言葉です。
これからは、進んで入るだけの「進入」と不法に入り込む「侵入」、そして水が入り込む「浸入」の違いを理解して、正しく使えるようにしましょう。