中古でも新築でも、価格高騰が続く東京首都圏の住宅市場。といっても実は探せばまだまだ価格が抑え目なところもある…ということを、以前の私の記事(「マンション購入『穴場エリア』4選 - 住宅のプロだからこそわかる"穴場"を特別に紹介!<都内・東京近郊編>」)でご紹介させていただきましたが、気になるのは「自分の年収だったら東京に住めるのか? 住めるのであればどこに住めるのか?」ということですよね。
そこで今回は、年収ごとに買える中古マンションの価格帯とそのエリアをご紹介したいと思います。意外にも「え、あのエリアのマンションが買えるの?」という驚きもあるかもしれません。ぜひご自身の年収帯・予算帯に合わせて見てみてください。
■年収ごとの「買っていい」物件価格の考え方
早速、年収ごとに「買っていい」価格帯とその価格帯で中古マンションが購入できるエリア(住所)を見ていきましょう。
2023年11月調査時点で売り出されている中古マンションに対して、住所ごとの平均価格を算出し、年収ごとの「買っていい物件価格」に合致するエリアを割り出しています。
物件については、下記諸条件に沿って抽出しています。
<想定世帯>
DINKs(夫婦のみ)~ファミリー(お子様お一人)<広さ>
40平米台・50平米台・60平米台<築年数>
築年数の制約は設けていない。ただし、築年数が古くなるほど価格が安くなる傾向があるため、表内の各項目では購入できるマンションの築年数が古い住所から順に並べている
なお、年収ごとの「買っていい物件価格」は、今回は簡易的に【年収×7.5倍】として計算しています。これは、国土交通省の「首都圏の住宅価格の年収倍率の推移」を参考に、東京近郊における一般的な購入物件金額として算出したものです。
一般的に、住宅購入時には現金一括払いではなく住宅ローンを利用する方が多いでしょう。そのため、実際に物件購入予算を決める場合は、ご自分の年収から「いくら借りられるか」(借入金額)を算出し、月々のローン返済額をシミュレーションしながら決定します。フルローンでいくのか、自己資金として頭金をどれだけ入れるのかにも予算は変わってきますので、ここでの「買っていい」価格帯はあくまでも大まかな目安の価格とお考えください。各金融機関や住宅ローン比較サイトが、住宅ローンシミュレーターを提供しているので、より正確な金額が知りたい方は、ぜひそちらをお使いになってみてください。
それでは、世帯年収500万円から順に詳しく見ていきます。
■【世帯年収500万円】築古であれば50平米台でも新宿区が購入可能
世帯年収500万円の場合、物件価格は3650~3750万円。面積が大きくなるに連れて、都心部から郊外へと広がっているのがわかります。
また、実は同じ平米数レンジの中でも、エリアによって購入できる物件の「築年数」に違いがあります。40平米台であれば、江東区高橋(森下駅)・世田谷区代田(世田谷代田駅)・新宿区愛住町(四谷三丁目駅)は築40~50年という築古マンションになります。稲城市矢野口(矢野口駅)であれば築10年以下の築浅マンションが購入可能です。50平米台の中だと、足立区六月(西新井駅)だけが、築10-20年。あとは築古マンションであり、江東区白河(清澄白河駅)・大田区下丸子(下丸子駅)・板橋区氷川町(板橋区役所前駅)は築40-50年のマンション。新宿区市谷台町(曙橋駅)に至っては築50-60年となるので、ここは建物の修繕状態や管理状況など、よく見極めたいところです。
60平米台となると、都心部からやや距離のある郊外の駅名が並びます。また、傾向として最寄り駅からやや距離があることが多くなります。駅から離れた立地に緑地や住宅街が形成されており、ファミリー層からの手堅い支持が見込める場合もありますので、一概に「駅近であるほど高額」とも言えません。街の構成や徒歩分数も含めて、周辺相場を見ながら検討しましょう。
■【世帯年収600万円】隣接アドレスでも最寄り駅が変わるだけで価格帯が変化
世帯年収600万円の場合、40平米であれば築50-60年にはなりますが、名門公立小学校として知られる文京区立誠之小学校の通学区である物件が購入可能。そして築10-20年のさほど古くない築年数レンジで、なんと上野駅の徒歩圏内に住むこともできます。地方出張などが多い方、フットワークが何より大事な方であれば駅の力から考えて今後も手堅い立地ですので、購入を検討してみても良いかもしれません。ちなみに、品川区の大井(大井町駅)はこの価格帯で買うには築40-50年の築古物件になりますが、隣接する品川区二葉アドレスになると、最寄り駅が西大井駅になり、同価格帯で築10年以下の築浅物件が手に入るようになります。最寄り駅によって価格が大きく変わることを知っておけば、こうして地図を見ながら少し検討範囲を広げてみたりすると、思わぬお買い得物件が見えてくる場合もあります。
■【世帯年収700万円】40~50平米であれば神楽坂周辺に住める
世帯年収700万円では、40平米でも50平米でも新宿区、特に神楽坂周辺が目立ちます。ただ、この周辺は売り出し物件自体が少ないため、希望する場合はしっかりウォッチして条件に合致する物件は買い逃さないように動きたいところです。
60平米台になると、選択肢が一気に広がります。上から築年数レンジが古いものから並べていますが、都営新宿線の駅である一之江駅、中央線快速電車も停車する阿佐ケ谷駅のどちらも築10年以内の物件が購入可能です。
■【世帯年収800万円】千代田区、港区アドレスが射程距離に
世帯年収800万円になると、物件価格が6000万円前後となり、千代田区や港区など、いわゆる「都心3区」アドレスがランクインしてきます。40平米台では、秋葉原駅も徒歩圏内の岩本町、ショッピングエリアとしても人気の高い代官山駅が射程距離に。代官山駅(恵比寿西)はさすがに築40-50年ですが、岩本町であれば築10-20年の範囲で購入できます。住み替え前提で単身やDINKsで購入するには打ってつけです。
この価格帯も、60平米台の選択肢が豊富。自由が丘駅や尾山台駅など、落ち着いたブランド住宅街も築年数を経た物件であれば購入できます。また、アドレス違いで新御徒町駅が2つノミネートされていますが、台東区三筋の方は築30-40年、台東区小島の方は築10-20年。この価格差は前者のアドレスが、今「東京のブルックリン」とも呼ばれて人気の高い蔵前駅により近いことが影響していそうです。
また、50平米でも60平米でもランクインしている日野市(豊田駅)は、都心部から距離はありますが、1950年~60年代に「多摩平団地」として宅地開拓された歴史ある住宅街。今も駅周辺に緑や子育て施設が充実しているなどファミリーを中心に一定の人気を維持しているエリアです。
■【世帯年収900万円】アクセス利便性抜群のエリアの選択肢が豊富
世帯年収800万円となり、物件価格が6000万円後半になるとこの面積レンジではエリアの選択肢がグッと減ってきます。調査時点では、都内において40平米の該当物件はなし。50平米台は徒歩圏内で2駅以上・5路線以上が利用できるようなアドレスがずらり。アクセス利便性として申し分ない駅を生活圏にできるのは、フットワーク軽く仕事をしたいシングルや共働きDINKsにとっては大きなアドバンテージであり、将来家族が増えた際に住み替えを考える際にも安心です。需要がはっきり出た結果といえます。
一方、60平米はグッと減ります。日本橋や秋葉原にも隣接する浅草橋駅は賑やかな繁華街で飲食店も多く、外食が多い世帯にぴったりです。対する大江戸線の新江古田駅はそれとは対照的。中野区ですが練馬駅に程近く、緑豊かな中野区立江古田の森公園もすぐ近くにあるなど、ゆったりした住宅地を好む人におすすめです。
■【世帯年収1000万円】番町、麹町と不動のブランドネームが購入可能に
今回取り上げる年収価格帯では最高レンジとなる世帯年収1000万円では、物件価格は7000万円台半ばに。40平米台に入る千代田区六番町は、元武家屋敷だった敷地であり、いわゆる「千代田区番町エリア」の一つ。40平米台でようやく、しかも築40-50年でようやくこの年収層で手に入るようになるのはさすがの不動のブランド立地というところでしょう。同じく名を連ねる渋谷区神南は渋谷駅と原宿駅が徒歩圏内、千代田区神田須田町は岩本町駅だけでなく秋葉原駅、淡路町駅、小川町駅、神田駅までもが徒歩圏内に入る縦横無尽に動ける立地です。なお、神田須田町であれば築10年以内の物件が購入できます。
50平米台になると、西小山駅、牛込神楽坂駅、池尻大橋駅と、やや住宅街として人気が高くネームバリューもあるエリアが並んでいます。また、この3つは、どれも築20年以内の比較的若めの物件となっています。
そして60平米台に入ってくる千代田区麹町。ここは皇居に接しているという立地は言わずもがな、なんといっても、いわゆる名門公立小学校の通学区であることで知られるアドレス。麹町1~4丁目であれば麹町小学校、麹町5~6丁目であれば番町小学校と、どちらにしても名門とされる小学校への入学が約束されています。我が子をぜひに、という教育熱心な親御さんからの熱視線を集める場所です。物件数も僅少なので、資産性も申し分ないでしょう。
■物件価格の予算決めで気を付けるべきことは?
いかがでしたでしょうか。面積が60平米台までの範囲だったため、主にシングル~DINKs、小さなお子さんがお一人のファミリー層を対象としたマンションが中心となり、都心アクセスにアドバンテージを持つ立地のラインナップとなりました。70平米以上に面積を広げると、湾岸エリアのタワーマンション群をはじめ、より教育環境や暮らしやすさで支持を集めるエリアが入ってきます。ただ、最近は需要の高まりとともに価格が上がっていることもあり、必要となる世帯年収も合わせて上がってくるでしょう。
ここまで見てきた内容でおわかりの通り、大きくは平米数・築年数・エリア(最寄り駅)の掛け算で物件価格は決まっています。また、今回は住所ごとの平均価格で算出しているため、実際にはその住所内での最寄り駅までの徒歩分数でも価格は変わってきます。
物件探しの条件をどこから考えるべきかわからない、という人は、まずは物件価格を最も大きく左右する「エリア(最寄り駅)」から考えてみるのが良いでしょう。将来的な資産価値に直結する部分でもあるからです。その上で、自分や家族として必要な面積を考えた時に、エリアを変えたり、同じ沿線で都心部から離れた場所に対象範囲を広げてみたり・・譲れない条件と、妥協できる条件を調整しながら、自分・家族にとって最適な条件を絞り込んでいきましょう。
ただし物件を探す上で気をつけたいのは、「予算」の部分。仮に自己資金を入れて【年収×7.5倍】の価格の住宅を購入するとしても、住宅ローンの借入額は年収の7倍までを上限目安にし、それ以下に抑えるようにしましょう。くれぐれも「借りられる金額」の上限いっぱいまで借りて、あとあと返済計画に余裕がなくなるような価格のマンションを買ってしまうことのないように・・。資金計画に不安がある時は、住宅購入に特化したファイナンシャルプランナーやFPの資格を持つ不動産営業担当者に相談することをおすすめします。