マーティン・スコセッシの最新作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』が、間もなくApple TV+で配信開始となります。米国のジャーナリスト デヴィッド・グランによるノンフィクション『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』を原作に、ロバート・デ・ニーロとレオナルド・ディカプリオが共演し、上映時間も206分におよぶ大作です。

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
1920年代の米国オクラホマ州。先住民族のオセージ族は、居留地に発掘された石油の鉱業権を持ち大きな利益を得ていた。第一次世界大戦から帰還したアーネスト・バークハート(レオナルド・ディカプリオ)は、叔父で牧場主のウィリアム・ヘイル(ロバート・デ・ニーロ)を頼って移り住み、仕事を得る。やがてアーネストはオセージ族の女性 モリー・カイル(リリー・グラッドストーン)と恋に落ち、叔父の勧めもあって結婚する。しかし、2人の周囲に不審死が連続して起き始める。混乱の中、街にやって来たFBI捜査官 トム・ホワイト(ジェシー・プレモンス)らによる捜査が開始されるが……。

<出演者>
役名/俳優名
アーネスト・バークハート:レオナルド・ディカプリオ
モリー・カイル:リリー・グラッドストーン
ウィリアム・ヘイル:ロバート・デ・ニーロ
トム・ホワイト:ジェシー・プレモンス

<スタッフ>
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:エリック・ロス/マーティン・スコセッシ

愛は本物、罪も本物、その果てに……

マーティン・スコセッシといえば『タクシードライバー』から『ウルフ・オブ・ウォールストリート』、最近ではNetflixの『アイリッシュマン』まで、数々の作品で映画好きを魅了してきた名手。彼の映像が描き出すのは、事件性を語るストーリーと同時に、それを引き起こしていく人々の奥底にある精神性という、多層構造の物語です。金と欲望、無邪気な正当化、ナイーブな正義感、純真さが招く罪、その他もろもろ……。その点で、本作を織りなす層の重なりは相当分厚いものになっています。

ポイントは視点の置き方にあると言えるでしょう。当初、同作の脚本は事件捜査にあたるFBI捜査官の視点で描くものだったといいます。しかしスコセッシは、主演のレオナルド・ディカプリオから物語の核心はどこかと問われ、オセージ族の人々やアーネスト・バークハートの子孫らと意見を交わす中で、オセージ族の“内側”の視点から描くものに書き直したのだと、複数のメディアが伝えています。

ディカプリオ演じるアーネストのたどる道は、運命というよりアーネスト本人の人間性に依るものであり、やはりその人物像の描き方そのものが本作の一番の味わいどころと言えるでしょう。それはモリーや叔父のヘイルの人物像も同様で、彼らの存在感によって3時間超の上映が“視聴”ではなく、ほとんど“体験”のように感じられるのです。

賞レースに向けたAppleの本気度を見ておこう

同作はもともと米パラマウント・ピクチャーズの出資で制作が進められていたものの、製作費が大幅に膨らんだことでパラマウント側が懸念を示し、新たな出資者の打診に応じたのがAppleだったといいます。大物スターが続々登場する最近のApple TV+作品の中でも特にビッグタイトルであり、賞レースへの意気込みがかかった作品と考えられます。

白人至上主義が引き起こした過去の事件をマイノリティの女性を軸に描き、オセージの言葉や文化に敬意を尽くして制作されたという背景からも、近年マイノリティに対する配慮への問題で突き上げの厳しい米ショウビズ界的には無視できない位置にあるでしょう。

配給は引き続きパラマウントが行うため、上映条件も問題なく満たすことができます。しかし、配信が前提だからこそ劇場の嫌がる超長尺作品が許された側面もあると考えられ、映画の上映/配信のあり方としても新しさがあります。

ちなみに制作費は2億ドル(約300億円)だそうなので、ざっくり1分あたり1.45億円と考えると、Apple TV+の月額900円はこの作品を見るためだけに払ってもタダみたいなものです。作品そのもののクオリティはもちろん、賞獲りを目指すAppleの本気度を観察する意味でも、見ておく価値のある一本と言えるでしょう。

配信開始は「近日中」となっています。Apple TV+アプリの「次に観る」に追加しておくと、配信開始時に通知が届きます。

  • Apple TV+ アプリで作品の詳細ページを開き、「“次に観る”に追加」をタップします。iPhone版、iPad版でも同様です

この作品を視聴するには

  • 配信サービス:Apple TV+
  • 視聴方法:iPhone、iPad、Macなどの「Apple TV」アプリ、スマートテレビ、Amazon Fire TV、Chromecast with Google TV、PlayStation、Xbox、PCブラウザ(https://tv.apple.com/jp)
  • 料金:月額900円(ファミリー共有可能)または「Apple One」(月額1,200円/1,980円)で利用可能

Apple TV+とは?


Appleが提供する、完全オリジナル作品だけのサブスクリプション型映像配信サービス。ドラマ、長編作品、ドキュメンタリー、アニメなど、毎月新作が提供されている。アカデミー賞、ゴールデングローブ賞などの映像作品賞ノミネート・受賞作も多数。

(画像提供:Apple TV+)