伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は予選が進行中。11月21日(火)には第2ブロックの広瀬章人九段-佐藤和俊七段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、雁木対早繰り銀の熱戦を92手で制した佐藤七段が予選突破まであと1勝としました。

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広瀬九段は九段昇段後初めてとなる対局。振り駒が行われた本局は後手・佐藤七段の雁木に先手・広瀬九段が早繰り銀で対抗する急戦形に進みました。3筋に飛車を回って右辺の制圧を狙う広瀬九段に対して佐藤七段は角交換からさばきを目指します。

後手が盤上中央に角を据えた局面が本局最初の分岐点でした。感想戦ではここですぐに角を合わせるのが急所で、そう進めば広瀬九段が攻勢をキープできるとの結論に。細かいながら、実戦のタイミングでは佐藤七段のほうから先手陣に馬を作る手が厳しく残ります。

2つの勝負所切り抜け佐藤七段勝利

3筋に馬を作った後手の佐藤七段はこれを起点に盤上右辺を制圧。先手の飛車を押さえ込んでしまえば怖いところがありません。形勢容易ならずと見た広瀬九段は今度は左辺からの敵陣攻略を目指しますが、ここに最後の勝負所が残されていました。

軽く歩を成り捨ててと金づくりを目指した広瀬九段ですが、局後この手を後悔することに。ここは重く銀を打ち込んで後手に手番を与えないのが急務で、筋悪でも飛車を手にしておけば逆転の余地があったとされました。

一手の余裕を得た佐藤七段はこれを生かして自玉の安全を確保しつつ、満を持して反撃に乗り出します。終局時刻は18時57分、最後は形勢の開きを認めた広瀬九段が投了。勝った佐藤七段は次戦で枠抜けを懸けて石井健太郎六段と対戦します。

  • 佐藤七段は2022年に雁木の研究書を上梓している(『新型雁木試論 バランスとカウンターの新体系』マイナビ出版)

    佐藤七段は2022年に雁木の研究書を上梓している(『新型雁木試論 バランスとカウンターの新体系』マイナビ出版)。

水留 啓(将棋情報局)

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