第72期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)は一次予選が進行中。11月20日(月)には堀口一史座八段―伊藤匠七段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、横歩取りの急戦を55手の短手数で制した伊藤七段が次回戦進出を決めました。

横歩取り青野流

本予選は20名前後からなるトーナメントを勝ち抜いた計6名が二次予選に進出するもの。勝ち上がりのために両対局者には本局を含め4勝が必要です。振り駒が行われた本局は先手となった伊藤七段の注文で横歩取りの戦型に進行しました。

青野流と呼ばれる攻撃陣を構築した伊藤七段は飛車の位置を整え臨戦態勢。後手が7筋の歩を突いたのをチャンスと見て軽快に右桂を跳ね出しました。素直に応じると飛車角桂の攻め駒が殺到して技が決まるため、堀口八段は辛抱の受けが続きます。

悲観に乗じて伊藤七段勝利

勢いよく飛車を切り飛ばした伊藤七段は代償に敵玉そばに馬を作って好調の攻め。玉型差と駒の働きで優位に立った先手が優勢であるのは疑う余地がありませんが、その後に後手玉を寄せきる決め手がなかったのは伊藤七段のわずかな誤算でした。

伊藤七段はなおも攻め続けますが、中継アプリに備え付けられた将棋ソフトが示す評価値は互角。自陣に利いた竜の働きが物を言って後手玉は粘りが利く形です。実戦はこの直後、形勢を悲観した堀口八段が投了を告げて伊藤七段の勝利が決まりました(11時49分終局)。

局後、堀口八段は伊藤七段に指されたタダのところに金を差し出す竜取りを見落としており、それによって自身の直前の着手が悪手になったと判断したことを明かしました。勝った伊藤七段は次局で阿部光瑠七段と対戦します。

  • 伊藤七段は公式戦の連敗を2でストップ(未放映のテレビ対局を除く)(写真は第52期新人王戦三番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

    伊藤七段は公式戦の連敗を2でストップ(未放映のテレビ対局を除く)(写真は第52期新人王戦三番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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