ヤマハミュージックジャパンは、独スタインバーグの開発による業務用デジタル・オーディオ・ワークステーション(以下DAW)「Nuendo 13(ヌエンド13)」のダウンロード販売を開始した。価格はオープン、Steinberg Online Shopでの価格は141,900円。パッケージ版も順次発売を予定している。

  • 「Nuendo 13(ヌエンド13)」

今回のバージョンアップでは、ダイレクトオフラインプロセシングで吹き替え音声を最適化する「TonalMatch」や、AIを活用した「VoiceSeparator」などの新プラグインを搭載。MPEG-H Audio ワークフローの統合やADR機能の向上なども実現している。また、さまざまなユーザーインターフェースを改善し、全体のパフォーマンスも向上している。主な新機能は以下の通り。

  • ダイレクトオフラインプロセシングの新プラグイン「TonalMatch」
    ダイレクトオフラインプロセシング(DOP)のプラグイン「TonalMatch」を追加。任意のオーディオファイルの音色の特徴を解析し、他のクリップに適用することで、周波数プロファイル(EQ)とアンビエントノイズフロアを一致させる。EQや、その他のプラグインを用いていた従来よりも、すばやく正確に、吹き替え音声を元の録音に馴染ませられる。
  • TonalMatch

  • AIを活用した新プラグイン「VoiceSeparator」
    AIを活用した新VSTプラグイン「VoiceSeparator」を追加。複雑な背景音や他の声から話し言葉を検出し、分離。背景音や環境音から不要な声の音を削減または除去できる。インサートエフェクトやDOPとして使用可能で、必要な音を迅速に分離し、不要な音を除去する。
  • VoiceSeparator

  • ADR Script Reader
    「ADR Script Reader」は、ADR(台詞の別途録音:アフレコ、アテレコ)の際に、同一LANネットワークのタブレットやラップトップ上のWebブラウザに吹き替え台本を表示することで、台本を印刷して渡す手間を解消する。演者と制作側で台本を共有することや、現場での変更の即時反映も可能。台詞は「Nuendo 13」のマーカーデータに追記編集できるので、ドキュメントデータを同期させる必要もない。また、「Dialogue Context View」を有効にすると、選択範囲前後の台詞も表示し、台詞とシーンとの関連を見やすくできる。
  • ADR Script Reader

  • 「MPEG-H Audio」のサポート
    オブジェクトベースのオーサリング&ミキシング形式「MPEG-H Audio」を統合したワークフローを搭載。ADM オーサリングウィンドウにはこの新しいフォーマットに対応したオプションが追加され、トラックやグループを MPEG-H Audioコンポーネントのオブジェクトまたはベッドとして割り当て可能になっている。新しい「Renderer for MPEG-H」プラグインでは、ミックスのバージョンである「プリセット」を作成するためのメタデータを設定できる。RendererからはプロジェクトをMPEG-H ADMまたはMPEG-H Masterファイルに書き出すことが可能。
  • MPEG-H Audioを統合したワークフロー

  • 新プラグイン「VocalChain」
    搭載された各種モジュールを使って、ボーカルを総合的にコントロールできるプラグイン。左側のモジュールの上から下に信号は処理され、各モジュールはクリーン、キャラクターのセクション内で、任意の順番に変更できる。
  • VocalChain

  • 新プラグイン「Black Valve」「EQ-P1A」「EQ-M5」「Vox Comp」「Vocoder」
    新プラグインとして「Black Valve」「EQ-P1A」「EQ-M5」「Vox Comp」「Vocoder」を追加。「Vocoder」を除くこれらのプラグインは、「VocalChain」にもモジュールとして搭載されてている。
  • Black Valve、EQ-P1A、EQ-M5、Vox Comp、Vocoderを新搭載

  • その他の新機能による編集ワークフローの向上
    下記のパフォーマンスが改善している。
    ●VoiceSeparator
    ●無音部分の検出機能のアップデート
    ●空白部分のバウンス
    ●TTAL 1.1 対応
    ●Renderer for Dolby Atmosの強化
    ●サンプラートラック強化
    ●Headphones Matchの機種追加
    ●MixConsoleのリニューアル
    ●再生開始位置
    ●ビデオのオーディオ差し替え
    ●トラック読み込みの改良
    ●H264デコードに対応
    ●DOP での処理前後の比較試聴
    ●ハイブリッド CPU対応
    ●MIDI 2.0対応
    ●MIDIエフェクトの強化
    ●シンプルなCC入力
    ●New Sample Packs

Steinberg Online Shopで販売が始まっている製品は以下の通り。パッケージ版も順次発売する予定とのことだ(括弧内はSteinberg Online Shopでの価格)。

  • Nuendo 13 フルバージョン(141,900円)
  • Nuendo 13 クロスグレード from Cubase Pro 12/13(63,800円)
  • Nuendo 13 クロスグレード from Cubase 4〜7.5/Cubase Pro 7〜11(71,500円)
  • Nuendo 13 クロスグレード from Nuendo Live 1/2/3(106,700円)
  • Nuendo 13 クロスグレード from Competitive Crossgrade(114,400円)
  • Nuendo 13 教員向けアカデミック版(78,100円)
  • Nuendo 13 学生向けアカデミック版(63,800円)

クロスグレード from Competitive Crossgrade版は、競合他社のDAWユーザーを対象としたディスカウントで証明書の提示が必要。アカデミック版は、学生および学校教員、教育機関向けの優待販売版で、購入の際には、学生証、教員証等のコピーが必要となる。また、アップデート版、アップグレード版の提供も合わせて行う(詳細はスタインバーグサイトにて確認できる)。

動作環境は以下の通り。

  • Mac:macOS Ventura/Monterey、Intel Core i5(late 2015以降)またはApple Silicon、8GB以上のメモリ、75GB以上のディスク空き容量、1,440×900ピクセル以上のディスプレイ
  • Windows: 64bit Windows 10 Version 22H2以上、64bit Windows 11 Version 22H2以上、Intel Core i5(4th Generation)/AMD Ryzen、8GB以上のメモリ、75GB以上のディスク空き容量、1,440×900ピクセル以上のディスプレイ、Windows 10に対応したグラフィックカード

その他、OS対応オーディオデバイス(ASIO対応デバイス推奨)、インストール、ライセンスアクティベーション、ユーザー登録などにインターネット接続環境が必須となっている。なお、32ビットプラグインはサポート対象外、また、VST 2プラグインについては、Apple SiliconベースのMac上ではRosetta 2モードでのみ動作する。