現在放送中の連続テレビ小説『ブギウギ』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)で、梅丸楽劇団(UGD)の制作部長・辛島一平役を演じている安井順平。辛島部長は、草なぎ剛演じる作曲家・羽鳥善一、新納慎也演じる演出家・松永大星らに振り回されるという役どころだ。安井にインタビューし、草なぎと新納との共演について話を聞いた。
連続テレビ小説(朝ドラ)第109作となる『ブギウギ』は、ヒロイン・花田鈴子(趣里)が下町の小さな銭湯の看板娘から“ブギの女王”と呼ばれる大スターになる波乱万丈の物語。「東京ブギウギ」や「買物ブギー」など数々の名曲や多数の映画に出演した戦後の大スター・笠置シヅ子(かさぎ・しづこ)さんをモデルにしている。
■羽鳥先生役は「ものすごく草なぎさんに合った役だなと」
――草なぎさんとの共演はいかがでしたか?
今まで共演がなかったのでとても楽しみにしていました。ほぼ同世代なのですが、演じていて楽しかったです。
――実際にお会いしてどんな印象でしたか?
僕は同じ役者として見る前に、「草なぎ剛だ!」「SMAPだ!」と思っていたので、最初にご挨拶するときに「草なぎさん初めまして、辛島役の安井です」と言おうと思ったんですけど、気が動転していたのか「初めまして、草なぎ役の安井です」と言ってしまいました(笑)。それが出会いでしたが、不思議な方ですね。マイペースだけど、せっかちなところもあるのかな。よく助監督さんに撮影するシーンについてその場その場で確認していて、噂で聞いたのですが、自分のところ以外台本を読まないらしいです。
――以前インタビューさせていただいたときに、ご自身の出演シーン以外は読まないとおっしゃっていました。
面白いですよね。でも、僕も少し近いやり方かもしれません。決め込んでいくと、相手が全然違う出方をした時に戸惑ってしまうので、そのやり方はダメだなと。その場の空気や相手の出方を見て、それを受けて自分のキャラクターを作っていこうと考えているので、近しいです。前日に確認し、あとはその場で監督の演出によって臨機応変にできるように。さらさらした水のような状態でいたいというのがあって、草なぎさんはそれの究極かなと思いました。
――そのほうが現場で何があっても対応できるんですね。
そうだと思います。僕もどちらかというとそっちのタイプです。もともとお笑い芸人をやっていて、コントでアドリブを放り込むのは日常茶飯事だったので、言葉を紡ぐというのはいかようにもできるんです。ただ、『ブギウギ』の世界でってなると、その時代では使われていない言葉もあるし、方言など、制約やルールが複雑になってくるとアドリブを言うのはなかなか難しいです。その世界観の中でのアドリブであれば、というのは気をつけています。
――草なぎさんの演技はいかがでしたか?
基本フラットですね。緊張というのがあまりないのかなという気がします。僕は、いくら慣れ親しんだ方と1カ月2カ月やり続けていたとしても緊張するんです。ミスして相手に迷惑かけられないという気持ちが芽生えるので。でも、草なぎさんはそれがないように感じます。きっと長いことこの業界にいてスターをやられてきて、数々のプレッシャーがあったと思うので、よほどのことがない限りプレッシャーとして感じないボディ、精神になっているのかなと。それ僕も手に入れたいなと思いました(笑)
――いつか手に入れられそうですか?
手に入らないと思います。セリフが出てこないことが絶対ないという脳みそを得られたら僕もお芝居で1ミリも緊張しないです。でもその能力は手に入らないと思うので。
――草なぎさんの強心臓ぶりすごいですね。
強心臓ですよね。本人に直接聞いたわけではないので、「いや、緊張していますよ」とおっしゃるかもしれないですけど。
――演技そのものに関して凄みも感じましたか?
凄みを感じるかどうかは役柄によると思うので、今回の羽鳥先生役には凄みは感じないです。ただ、ものすごく草なぎさんに合った役だなと思います。例えば、「あ、いいや、今日はやめよう」と急に言ったり、にこにこしながら「はい、もう1回」「やり直し」と辛辣なことを言うサイコっぷり。草なぎさんは辛辣なことは言わないですが、とても自由で急に突拍子もないことを言うので、すごく合っていて、リアリティのある羽鳥先生になっている気がします。だから草なぎさんをキャスティングしたってすごいなと。羽鳥先生に一番振り回されるのは鈴子ですけど、僕も「先生もういいんじゃないですか?」という感じで振り回され、その感じはとても楽しかったです。
■松永大星役の新納慎也に「『新納さんとやれてよかったです』と直接伝えた」
――松永役の新納さんとの共演はいかがでしたか?
新納さんも強烈です。関西の方なのでものすごく冗舌でユーモアがあって、あの顔からは想像つかないような感じでよくしゃべるんです。絡むシーンはすごく多いですが、お互いにこうしましょうああしましょうと言わずに1カ月過ごせたという感じでした。ただ、「僕の役、大丈夫なんですかね? 頭おかしいですよね(笑)」と不安を漏らしていたので、「新納さんがやるから、ズレているなということを天然でやっている感じが面白いので、自信を持ってバカやってください」と言いました。
――新納さんの演技を受けての芝居も楽しかったですか?
楽しかったですし、新納さんには「新納さんとやれてよかったです」と直接伝えました。共演してよかったと思う方たちばかりで、本当に素敵な現場でした。
1974年3月4日生まれ、東京都出身。1995年お笑いコンビ「アクシャン」としてデビュー。2007年より俳優として活動し2014年に第21回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。劇団イキウメ所属。舞台のみならず、映画、ドラマと多方面で活躍している。
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